ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

【映画】バットマン ビギンズ:ダークナイト ライジングへと繋がる誕生秘話

2012年08月18日 | 映画♪
クリストファー・ノーラン版バットマンシリーズ最新作「ダークナイト ライジング」を観て、事前に「バットマン ビギンズ」を見直しておくべきだったと反省。この「ビギンズ」からの流れを受けての完結編であり、事前に見直しておくことで、より深く「ダークナイト ライジング」を理解することができたのだろう。そういった意味で、ダークナイトライジングへと繋がるポイントを整理しておきたい。

【予告編】
Batman Begins - Official Trailer


【あらすじ】

ゴッサム・シティの大富豪の御曹司として、幸せな少年時代をおくっていたブルース・ウェインの人生は、目の前で両親が殺されて以来、一変した。悲劇の発端を招いてしまった罪悪感、抑えがたい犯人への復讐心、父から受け継いだ善行への使命。さまざまな葛藤を抱え、ブルースは世界を放浪する旅に出る。ヒマラヤの奥地で“影の同盟”を名乗るデュカードという人物に出会ったブルースは、彼に師事して心身を鍛錬。数年ぶりにゴッサムに戻ると、自らのすべてを賭け、悪と闘うことを決意する。闇の番人、バットマン誕生の瞬間だった...。(「goo?映画」より)

【レビュー】

ハリウッドが「忍者」や日本の「武道」を扱うとどうしてもこそばゆくなってしまうのだけれど、そこはあえて問わないことに。

この物語では、両親を貧しい犯罪者に殺された少年・ブルース・ウェインがいかにしてバットマンとなり、ゴッサム・シティを守ることになるのかまでが描かれている。その後のクリストファー・ノーラン版バットマンと同様、シリアスなトーンを基調とするが、「ダークナイト」「ダークナイト ライジング」で魅せるような横長のスクリーンを活かした迫力ある映像にまではたどり着いていない。

「ダークナイト ライジング」の後に改めて「バットマン ビギンズ」を見直すと、それらが一連の作品であることがよくわかる。「ダークナイト ライジング」の物語全体を見たときも、「ビギンズ」で登場した「影の軍団」の復讐劇といったところがベースとなっているし、「ビギンズ」では克服しきれていなかったウェインのコンプレックスや弱さを克服するための物語、「ダークナイト」で傷ついたウェインの再生の物語と読むことも可能だ。

ウェインは少年の日に目の前で両親を殺されている。「もし自分が帰ろうと言わなければ…」そういった思いを抱え込んでいる。まだ少年だったウェインにとって父親は偉大な存在だ。古井戸に落ち、飛び回るこうもりたちにおののき、恐怖に震えた時、顔色変えずに助け出してくれたのは父だった。また父は腐敗に満ちたゴッサム・シティを再生させようと私財を投げ打って活動する慈善家でもあった。数多くの尊敬を集めていた。

そんな父を失ったウェインは「憎しみ」「殺意」を覚える。そんなウェインに幼馴染のレイチェルは「法の執行と復讐は違う」と諭す。法の執行は秩序の維持のためだが、復讐は個人的な満足だと。その一方で、両親を殺害された犯人はマフィアのドン・ファルコーニによって口封じのために殺されてしまう。力がある者が支配する世界。そこには「正義」は存在しない。

自らの無力を知りウェインは惑い、こそ泥のような真似事をし、捕まり、やがてラーズ・アル・グール率いる「影の同盟」の下で修行を行い、強靭な精神と高い戦闘力を手に入れる。アル・グールは言う、お前の父は(家族を守るためとはいえ)犯罪者に屈した弱者なのだと。

自らを井戸から救い出してくれた父。家族のために犯罪の前に立ちはだかった父。ゴッサム・シティ浄化のために尽力する父。崇高な精神と行動力を持った父。その一方で父は死にファルコーニは現世を謳歌し、アル・グールは弱者だと呼ぶ。こうした様は1つのコンプレックスとして、あるいは「力」への過剰な依存心としてウェインに影をおとす。

「ビギンズ」ではこうしたコンプレックスは、ゴッサム・シティを守るという「信念/精神力」と「力」への信仰、「人を殺めない」という高潔さによって克服されたかのようにも見える。しかしこのことは後々バットマンの弱点として顕在化することになる。「ダークナイト」ではジョーカーをひき殺せないことで、更なる悲劇を生み出していくし、「ダークナイト ライジング」では「力」への過剰な依存のために「意思」の力をおろそかになっていたためにベインに敗れることになる。

「ダークナイト ライズ」を理解するうえで、ウェインの父親に対するコンプレックス/父と子の関係と合わせて押さえておかねばならないポイントとして、アル・グール率いる「影の軍団」の目的がある。

この影の軍団は長い人類の栄枯盛衰の歴史において、退廃した街・堕落した都市を破壊し新しい段階に歴史を進めるという役割を担ってきた。人や都市・国家はいずれも堕落する存在であり、それらは立ち直るものではなく、破壊し次の担い手に任せるべきなのだと。こうした価値観から、アル・グールはゴッサム・シティを破壊すべき存在だとみなす。ウェインの父やそれに続く人々がどれだけゴッサム・シティを改善しようとしたとしても手遅れなのだと。

「ビギンズ」では、この価値観を巡ってアル・グールとウェインが対立し、袂を分かつことになるのだけれど、この価値観は「ダークナイト ライズ」でも再び登場することになる。もっとも「ダークナイト ライズ」の場合、こうした価値観に加え、金持ちが弱者を搾取し続けるという「経済格差」「再分配」の問題、アナーキズム的な「自由」の問題、それに何よりもバットマンに対する「復讐心」という問題が背景にあるため、もう1つベインらの狙いが絞りきれないのだけれど。

いずれにしろ、この「バットマン ビギンズ」によって新しい名作「バットマン」シリーズが誕生したことは間違いないし、「ダークナイト ライジング」を見る前には是非、1度、見直してから行くべきだろう。

【レビュー】
総合:★★★☆☆
バットモービルがかっこよすぎ!:★★★★★
内的な葛藤はもう少し描かれてもよかったのかも:★★☆☆☆

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