写真①:「サン・マルコ広場」で案内するイタリア人男性ガイドのマルコさん(右端)
=〝水の都〟ベネチア市で、2011年5月23日午前10時40分撮影
世界遺産の旅
〈イタリア・町歩き〉 12
:現地ガイドに学ぶ
パリで開かれている国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が現地時間の6月25日、日本が推薦した「平泉の文化遺産」(岩手県平泉町)について中尊寺など5か所を世界遺産(世界文化遺産)に登録することを決定。国内の世界文化遺産としては、2007年の「石見銀山遺跡とその文化的景観」(島根県)に次いで12件目で、自然遺産を含めると24日に決まった小笠原諸島(東京都)を含め16件になりました。
平泉町は私も観光旅行で訪れたことがあり、中尊寺をはじめとした「平泉の文化遺産」が浄土世界を示す遺産としての普遍的価値を評価、登録されて、良かったなと思いました
さて、世界遺産に登録されてから、観光客の受け入れ体制が大変でしょう。観光ガイドの陣容整備もその一つ。そこで、イタリアの世界遺産観光で、この目で拝見した現地のガイドさんの仕事ぶりをリポートします。
5月22日午前、イタリアで最初に観光したミラノ市では、市内に住む日本人女性ガイドの鈴木さんが、14世紀に築かれた城塞・「スフォルツェスコ城」前からツアーバスに乗車。移動中の車中でも、市内一の一流ホテルに泊まった日本の有名女性芸能人の名前を入れて紹介、オペラの殿堂・「スカラ座」前や、エレガントなアーケード「ガレリア」でのガイドも分りやすく、切れのいい口調でした。お勧めの買い物情報も提供、ベテランのガイドぶりで、感心しました。
22日午後、訪ねたベローナ市のガイドさんは、市内在住のイタリア人女性。英語での解説を旅行会社の日本人添乗員さんに通訳してもらっての観光で、物足りなさが残りました。
23日、〝水の都〟ベネチア市で「サン・マルコ広場」から案内してくれたイタリア人男性ガイドのマルコさん=写真①=は、流暢な日本語の使い手です。「サン・マルコ寺院」の解説の中に、漫画のちびマルコちゃんを織り込んで笑わせるなどツボを心得たガイドさんでした。
フィレンツエ市を観光した24日のガイドは、市内在住のベテラン・ガイドの鈴木さん=写真②=。ミラノ市で解説してもらった女性ガイドの鈴木さんと同姓で、知り合いという。「サン・ジョヴァンニ礼拝堂」の青銅製門扉・「天国の門」の詳しい解説や、混雑していた「ウッフィツイ美術館」では機転の利いた案内で、サンドロ・ボッティチェッリ作の『ヴィーナスの誕生』をはじめとした名画の数々を観賞でき、見所を手際よく説明していく行き届いたガイドぶりで、満足です。
写真②:「サン・ジョヴァンニ礼拝堂」の青銅製門扉・「天国の門」前でガイドする鈴木さん
=フィレンツエ市で、5月24日午前11時50分撮影
最も観光客が多かった25日のローマ市観光。イタリア人男性ガイドのアルフレッドさん=写真③=も、日本語が上手でした。「ヴァチカン美術館」の中庭に展示されているミケランジェロ作の巨大壁画『最後の審判』のガイドパネルについて、要領よく解説してくれました。
写真③:巨大壁画『最後の審判』のガイドパネル前でガイドするアルフレッドさん
=「ヴァチカン美術館」中庭で、5月25日午後2時55分撮影
26日に訪れたポンペイ市のガイドは、イタリア人女性のセレーナさん=写真④=。ナポリ大学で日本語を専攻、東京でも学んだというだけに巧みな日本語でした。身重の体でしたが、ポンペイ遺跡の石畳を元気に歩き、落ち着いたガイドぶりでした。
写真④:ポンペイ遺跡の入り口でガイドするセレーナさん
=ポンペイ市で、5月26日午前11時撮影
イタリアでは、世界遺産観光地を抱える各都市ごとにガイドの免許が出されており、日本の観光バスガイドのように東北各地を1人でガイドすることはできないという。イタリア観光でお世話になった現地のガイドさんたちは、首からガイドの身分証明証を入れたカードケースをぶら下げていました。また、混雑する人気の観光地ではマイクでの解説が聞きやすいように、レシーバーを観光客に使わせています。
私と「津屋崎千軒 海とまちなみの会」の仲間が、古風な趣のある〈津屋崎千軒〉をガイドする場合も、もっと小型で使いやすい携帯マイクやレシーバー導入なども検討したいなと思いました。世界遺産に暫定登録されている「宗像・沖ノ島と関連遺産群」の本登録が決定した場合は、「宗像大社」や「沖ノ島」のガイドは宗像市のガイドが担当し、宗像の君一族の首長墓とされる国史跡・「津屋崎古墳群」や「宮地嶽神社」の解説は福津市のガイドが受け持つなどの役割分担も一案ではないでしょうか。