ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

香港ミュージカルコメディ60’

2012-06-20 03:07:22 | アジア

 ”寄塵之歌”by 寄塵

 一聴、うわあ昔の香港に、こんなにとぼけてイカした奴がいたのかよと思わずのけぞる。実在を信じるより、ワールドミュージック・ファンに一杯食わせてやろうと今日、マニアな誰かがでっち上げた音源であると言ってくれたほうが納得しやすいというものだ。
 かって香港で活躍したコメディアン兼シンガーが、60年代にリリースしたアルバムとのこと。そのダミ声と飄逸な歌いっぷりから、どうしたって我が国のエノケンなどを連想してしまうのだが。

 収められている音源も、おそらくは彼の出演映画の一場面からピックアップされたものなのだろう。歌の間に挟まるかまびすしい広東語のセリフと、デュエットのお相手の女性歌手の甲高く気取った歌いぶりなどから想像するのだが。
 ともかく彼の、その”洋楽志向”ぶりに感動すらしてしまう。このアルバムで広東語の歌詞を付けられて歌い上げられるのは、”日曜はダメよ”や”南太平洋”や”スピーディー・ゴンザレス”といった欧米のポピュラー音楽のカバーばかりなのだから。おっと、”バッテンボー”(この意味がわかる人は、年齢が知れるぞ)も入っていたな。

 その選曲の妙には、なんだかニヤリとせざるを得ないのだ。もちろん共感のあまり、ね。
 香港で封切られた欧米の映画から拾ったネタではあるのだろうが、香港の庶民相手に、コテコテのギャグ満載のミュージカルコメディなど撮っていたのだろうコメディアン寄塵の、外国の文化に寄せる憧れ、遠い目線など、思えば切ない限りなのだ。彼は何を愛し、どんな生涯を送ったのだろう。

 ところで寄塵、”スピーディ・ゴンザレス”における、ルンバのビートでC-Am-F-Gと進行する、まあロックンロールでは定番の、”ヤーヤヤヤヤヤヤヤヤー♪”ってコーラス、進行が理解できていないようで、小節を食いまくりなのが笑えるぞ。センスはあっても音楽の基礎教養はなかった人のようで、なんだかそれも愛せる気分だ。録音が他にもあるなら、聴いてみたいものだなあ。




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