私が都内で新聞配達(後で地方に飛ばされる)していたときには 雨合羽 を着ないようになった。
都内と言っても 豪邸 の並ぶ山の手ではない、玄関が一つの長屋式アパートの多い下町である。しかもバブル前の時期だ。当時の様子を説明し尽くすには無理が生じる。
そもそも家同士も近い下町なので 自転車等は使えないから 肩ヒモをかけて走る新聞少年 である。
なぜ雨合羽を脱いでずぶ濡れで配達したかを記録すると、雨降りなので当たり前だが 新聞が濡れる からである。どんなに細心の注意を払い、ビニール等でしっかり新聞をくるみ 濡れないように客先まで持って行っても 投函直前あるいは手渡し直前に 合羽を伝った雨が 新聞を濡らしてしまうのだ。 こんなに悔しい想いは無い。
その点ジャージのままだと 1)ポストに投函、ないし、お客に手渡しする前に 一方の手でそでを搾り、2)濡れないようポケットに突っ込んでいたもう一方の手で、ビニールの間から新聞を抜き出し配達する。そうすれば 新聞の濡れは 最小限に食い止められたのである。
合羽も着ずに雨の中を配達するのは若いときだからできたのであろうと思うが、台風のような土砂降りの中でも新聞は配達される。こんな時はどんなに頑張っても びしょぬれの新聞が配達されてしまうのだ。
<雨の日の新聞>
当時は、景気が良かったせいか 新聞には表面がツルツルの良質な紙が使われていた。だが大欠点は 一度濡れるとなかなか乾かないのである。
都内は新聞の配達が遅かった。私が配達を終えたのは毎朝7時半頃だ。お客も勤務先が近いからそれくらいでも文句が出ない。だが雨の日は濡れた新聞紙を乾かす時間がない。大抵の家では 雨の日の新聞は家に置いて仕事に出て行ったようである。
<新聞紙革命?!>
たしか 読売新聞が最初だったかと思うが、濡れても乾きやすい新聞紙を使い始めた。手触りをいま風に言えば、上質コピー用紙から堅く厚めのティッシュペーパー風に変わった。確かに配達も楽になった。濡れてしまっても段違いに乾きが早いのである。
その新しい紙質に移行するかとも思ったが、結局その日の天候に合わせ 使い分ける 方向に落ち着いたようだ。
(続)
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