とね日記

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質点は2種類ある! - 重心と質点の話

2008年12月28日 19時24分11秒 | 理科復活プロジェクト

ニュートンの質点の定理の証明」が得られたので、重心と質点についての記事はこれで終わりかというとそうではない。あと3回くらい続く。

僕にはこの話のゴールが見えてきた。今日の記事を読めば質点や重心についてのもやもやは解消され、後の2回の記事で具体的な計算結果と「重心と質点が違う理由」を紹介するので重心と質点について「なるほど!」とさらに理解は深まるはずだ。

前々回の「地球を8000万個に分割してみた」の最後では非対称な形をした物体で引力を計算するプログラムを作るとお約束したが、これは話の構成の都合上次回の記事で紹介する。非対称のときの問題は既に答が導けている。あとは記事を書くだけだ。説明のための図版をいくつか作るので、少々時間をいただきたい。

実はその後、質点という言葉が2通りの意味で使われていることに気がついたので今日はその話を紹介しよう。この2通りの質点の意味を私たちが混同しているから、重心と質点の誤解が起きていると僕は思ったのだ。


1つ目の質点

昨日証明を紹介したニュートンの質点定理は、球体の外にある質点を中心に向かって引き付ける万有引力のことを扱っている。僕はこれを「引力型質点」と呼ぶことにした。この場合質点は物体の周囲に及される引力の方向の中心点という意味だ。
物体の質点は一般に存在しない」の記事で結論したように一般の形をした物体では、引力の方向は1点には集結しないので「引力型質点」は存在しない。


2つ目の質点

そしてもうひとつの質点は僕が「力点型質点」と名付けたものである。力点とは「てこ」の法則に登場する、力点、支点、作用点のうち力を加えるポイントのことだ。高校物理の力学の後半の「剛体の回転運動」の単元で「物体はその重心を中心として回転しながら運動(放物運動や直進運動など)をする。そのとき重心をその運動の質点とみなしてよい。」と学習する。この場合はどんな形の物体でもよいわけで、重心=質点というのは僕の名付けた「引力型質点」ではない。

この力点型質点は「物体を回転させながら神様の見えない指先でつまんで物体全体を動かすことのできるような点」であるというのが僕が思いついた定義だ。

物体を「回転させないように」つまんで動かすことのできる点として定義しようとするとそれでは不十分であることに気づく。物体の表面をつまんで引っ張っても、内部をつまんで引っ張ってもうまく場所を選べば回転させずに動かすことが可能なので、この定義では力点型質点はひとつに決まらない。


これら2種類の質点をまとめると、次のようになる。

引力型質点:
1) 物体自身の質量に起因する万有引力の中心である。
2) 引き寄せる元の物体の引力についての話である。
3) 物体が球体のときだけ存在し重心と質点が一致する。
4) 物体が球体以外のときは存在しない。立方体や回転楕円体にも存在しない。
5) つまり「F=G mM/r^2 についての質点」だ。
6) ひとことで言えば「引力の中心」である。

力点型質点:
1) 物体を回転させながら物体外からの力で動かすことのできる物体の中心点である。
2) 動かす対象の物体についての話である。物体自身の質量から発生する引力はもちろん存在するが、その微小な引力の話とは関係ない。
3) 物体の重心と質点は常に一致している。なぜなら回転させないで物体を動かせるのは重心だけなので。
4) 物体がどんな形をしていても存在する。ブーメランのような形の物体ならば、物体外部に存在する。
5) つまり「F=maについての質点」だ。
6) ひとことで言えば「運動の中心」である。

物理の教科書では物体に力を加えて動かす問題で力点型質点のことを「中心点」と呼んだり「内部の点」とか、ただ「点」と呼んであいまいなままにしていることが多い。たいていそれは重心のことで、それを僕たちが引力型質点と誤認しているのだというのが僕の考え方である。別の言い方をすれば「質点」という言葉が、異なる力学的状況について混用されているのだ。

もちろん物体が完全に球体で質量密度が一定のときは「重心=引力型質点=力点型質点」となる。

これで重心と質点の話がなぜややこしかったのかわかったと思う。

次の記事では前々回の記事でお約束した「非対称な形をした地球の引力が万有引力の法則を満たしていないこと」を実際に計算してお見せする予定だ。「引力型質点」についての話題である。


注意:物理学に詳しい方はお気づきになっていると思いますが、このページの内容は後日別の記事として修正される予定です。この2種類の質点の話は考えを進めていく上での途中経過とお考えいただけますようお願いします。

この話は次の記事に続く。


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関連記事:

万有引力についてのこの一連の記事を最初から読みたい方は、「僕が物理や数学にハマりだしたきっかけ - 重心と質点の話」という記事からお読みください。

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