とね日記

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質点はなぜ重心と一致しないのか - 重心と質点の話

2009年01月26日 13時20分18秒 | 理科復活プロジェクト

物体の質点は一般に存在しない」という記事で球以外の形をした物体でには質点は存在しないことを説明し、「地球を半分に割ってみた」という記事で、無理に質点を想定すると半地球では万有引力の法則が成り立たないことを示した。

つまり球以外の物体では引力の方向と重心の方向が一致しないからそういうことが言えるわけなのだが、ではどうして一致しないのかということが今日のテーマだ。

まず、この図をご覧いただきたい。(上の掲載画像と同じ。)



座標原点に観測者がいるとする。そして同じ質量の2つの質点を赤丸で示している。2つの質点へ伸びた矢印はそれぞれ「質点の位置ベクトル」である。すると2つの質点の重心はそれらの中点となり、その位置ベクトルは青線であらわされる。これが観測者から見た「重心の方向」である。

次に観測者から見た「引力の方向」を図示してみる。万有引力の法則によれば引力は次の式で表されるように観測者からの距離の2乗に反比例して小さくなっていく。



したがって2つの質点の質量や位置関係が同じであっても観測者からの距離が違うので距離による引力への影響は逆2乗の割合で引力に影響を与える。図示するとこのようになる。



2つの質点へ伸びている引力ベクトルは重心の位置ベクトルのときと同じ角度なのだが、右の質点からの引力は左の質点からの引力に比べて著しく小さい。それら2つの引力のベクトルの合力が観測者が感じる引力なので、その方向は緑線であらわされる。

緑線と青線の方向が違うというのが質点が重心に一致しないことの原理を説明しているのだ。

もし観測点から2つの質点までの距離が同じであれば、2つのベクトルの位置関係は「相似」となり、緑線と青線の方向は一致する。

緑線と青線の方向が一致しないのは、引力が距離の2乗に反比例して減衰しているからである。つまり万有引力の法則そのものが質点と重心の方向の不一致をもたらしているわけだ。さらに「逆2乗法則の不思議」という記事で述べたように、引力の逆2乗法則は「この宇宙が3次元空間であること」と密接に結びついている。つまり質点と重心の不一致は私たちの住む空間が3次元であることに根源的な理由を求めることができるのだ。意味が深いと思う。

2つの質点が観測者から同じ距離になると2つの幾何学図形は「相似」となり、緑線と青線の方向は一致する。そして質点を2つずつ観測者から見て左右対称の位置で等距離の場所に次々に増やしていっても緑線と青線は一致し続ける。

一般に観測者の位置は自由に変えることができる。偶数個ずつ増やした質点の周りを360度回るだけでなく、3次元的にも観測者は移動することができる。このとき3次元的などの位置からも観測者から左右対称+等距離の条件で赤い質点を増やしていけば、赤い質点の集合は球体を形づくっていくことがおわかりになるであろう。つまり質点と重心がどの方向から観測しても一致するのは球体だけなのである。

ところでみなさんは「フックの法則」を覚えていらっしゃるだろうか?バネの変位(伸びた距離)に力が比例するという法則のことだ。

もし、引力が距離の逆2乗に比例した形ではなくフックの法則のように距離に比例していたとしたら万有引力の法則は



ではなく、次のようなものになっていたであろう。



この場合、重心をあらわすのに用いた上記の2つの位置ベクトルと引力をあらわすのに用いた2つの引力ベクトルの幾何学的関係は「相似」となり、緑線と青線は常に同じ方向を向くことがおわかりだろう。つまり質点と重心は常に一致する。

宇宙を支配する万有引力の法則がもしフックの法則型だったとすれば、どのような形の物体でも質点と重心は一致していたのである。遠くなるに従って引力が強くなるような法則に支配された宇宙が安定して存在できればの話であるが。。。

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この話は次の記事に続く。


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万有引力についてのこの一連の記事を最初から読みたい方は、「僕が物理や数学にハマりだしたきっかけ - 重心と質点の話」という記事からお読みください。
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