梅様の教室

独り言

旅行記⑤

2014-01-16 13:27:01 | Weblog

   焼酎工場を出ると、日本で一番古いという無人駅へと向かいます。しかし私は駅舎そのものよりも、その手前にある墓地の方に惹かれるものがあったので、バスを降りるや否や他の皆さんとは反対の方向へと歩きます。じめじめごちゃごちゃという形容がぴったりの葛飾区あたりの墓地と違って、清潔・整理整頓という言葉がぴったりするこのコンパクトな墓地は、お寺の境内にあるのではなく、あくまで墓地単独で存在しています。かつ、この地域の墓地には例外なく屋根がついているのです。

   墓参は日常的な行事で、命日や正月に限定されてはいないとのことですが、多くの墓に立派な花が飾られているのが目を引きました。写真のお墓では、お婆さんがとてもゆっくりとした動作で、今は無きおじいさんのお墓?に静かに詣でる姿が見られました。墓石に水をかけ、お参りを済ませるとお婆さんはシニア・カー(電動の一人用車椅子)に乗り、静かに、ゆっくりと去って行きました。時間の流れがとてもゆったりとしているように感じられた数分間でした。

   後で聞いたことなのですが、この一帯の墓地がすべて屋根付きであるのは、活火山である桜島が噴火する度に大量の火山灰が降り積もるので、火山灰から墓地を守るためなのです。何気なく見過ごしていた路面を見やると、前回の噴火の名残である火山灰が道端にしっかりと残っています。後でバスガイドさんが実物を見せてくれたのですが、降灰があって数日すると、自動的にすべての家のポストに「克灰袋」と印刷された黄色いビニール袋が配達されるのだそうです。それくらい当地では桜島の噴火が日常的な出来事として受け止められているわけです。

   「嘉例川駅」というのが登録無形文化財の駅舎になります。全くの無人駅で、ささやかな駅前広場も超ローカルな駅らしく舗装もされていません。あたりには人家もまばらで、校内にある古い大木ばかりが目を引きます。風情があるといえばあるので、マニアの間では垂涎の駅なのかもしれませんが、私たちがいる間には他に観光客の姿はありませんでした。