瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

2011年、クリスマスには歌を歌おう♪その6

2011年12月26日 21時43分44秒 | クリスマス
はぁい♪ミス・メリーよ♪
12/25を過ぎてもクリスマスは終らない!
本当のクリスマスは12/25~十二夜続くものよ!
だから今夜もメリー、貴方に言うわ――メリー・クリスマス!!
貴方が見る今夜の夢も安らかでありますように!

さて今夜紹介するのはクリスマス文学の王様と呼んでも過言じゃないでしょうね。
イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの「クリスマス・キャロル」よ!

「先ず第一に、マアレイは死んだ。
 それについては少しも疑いがない。
 彼の埋葬の登録簿には、僧侶も、書記も、葬儀屋も、また喪主も署名した。
 スクルージがそれに署名した。
 そして、スクルージの名は、取引所においては、彼の署名しようとするいかなる物に対しても十分有効であった。
 老マアレイは戸の鋲のように死に果てていた。」

物語の主人公は「スクルージ」と言う金持ちな商売人の老人。
彼にはマアレイと言う、共同の商売人にして、唯一の友人が居たんだけど、7年前に亡くなってしまった。
この件についてディケンズも念を押してるけど充分に確かな事よ。

「マアレイが死んでいたことには、毛頭疑いが無い。
 この事は明瞭に了解して置いて貰わなければならない。
 そうでないと、これから述べようとしている物語から何の不思議な事も出て来る訳に行かない。
 あの芝居の始まる前に、ハムレットの阿父さんは死んだのだという事を充分に呑み込んでいなければ、阿父さんが夜毎に、東風に乗じて、自分の城壁の上をふらふら彷徨い歩いたのは、誰か他の中年の紳士が文字通りにその弱い子息の心を脅かしてやる為に、日が暮れてから微風の吹く所へ――まあ例えばセント・パウル寺院の墓場へでも――闇雲に出掛けるよりも、別段変った事は1つも無い。」

スクルージは友人のマアレイが亡くなった後も、商会名から彼の名前を消さずに置いたし、看板名も変えずにいたの。
こんな風に紹介すると、スクルージは大層情の厚い人物に思えるでしょうね。
ところがどっこい彼は超を切り無く付けずにはいられないくらい、ケチで冷酷で極悪非道なおよそ主人公に相応しからぬ男!

「このスクルージは! 絞り取る、捩じ取る、掴む、引っ掻く、噛り付く、貪欲な我利々々爺であった!
 どんな鋼でもそれからしてとんと豊富な火を打ち出したことのない火燧石のように硬く、鋭くて、秘密を好む、人づき合いの嫌いな、牡蠣のように孤独な男であった。
 彼の心の中の冷気は彼の老いたる顔つきを凍らせ、その尖った鼻を痺れさせ、その頬を皺くちゃにして、歩きつきをぎごちなくした。
 また目を血走らせ、薄い唇をどす蒼くした。
 その上彼の耳触りの悪いしわがれ声にも冷酷に現れていた。
 凍った白霜は頭の上にも、眉毛にも、また針金の様な顎にも降り積っていた。
 彼は始終自分の低い温度を身に附けて持ち廻っていた。
 土用中にも彼の事務所を冷くした、聖降誕祭にも一度といえどもそれを打ち解けさせなかった。
 外部の暑さも寒さもスクルージには殆ど何の影響も与えなかった。
 いかな暖気も彼を暖める事は出来ず、いかな寒空も彼を冷えさせる事は出来なかった。
 どんなに吹く風も彼よりは厳しいものはなく、降る雪も彼ほどその目的に対して一心不乱なものはなく、どんなに土砂降りの雨も彼ほど懇願を受け容れないものは無かった。
 険悪な天候もどの点で彼を凌駕すべきかを知らなかった。」

容赦の無い描写で迫力を感じるわ。
彼の事務所には書記が1人働いていたけど、彼を暖める為の石炭は一片しか無く、とろ火程度だったもんだから、可哀想に彼は部屋の中なのに、襟巻きを外せなかったの。
そしてスクルージは独り身だったけど、彼の亡くなった妹の息子――つまりは彼にとっての甥ね――その甥は母親に似て朗らかな気持ちの良い男で、毎年クリスマス・パーティーに誘うのだけど、彼は「クリスマスなんて馬鹿々々しい!!」と毎年追っ払っていたのよ。
独り身で使うあても無いくせに、せっせと金を貯めるばかり、彼の辞書に「慈愛」の言葉は載ってなかった。
寄付を求めに訪れた人達にも、「怠け者を救う義理は無い」と、呪いの言葉を吐く勢い。

「『監獄は無いのですかね』と、スクルージは訊ねた。
 『監獄は幾らも有りますよ』と、紳士は再びペンを下に置きながら云った。
 『そして共立救貧院は?』とスクルージは畳みかけて訊いた、『あれは今でもやっていますか。』
 『やって居ります、今でも』と、紳士は返答した、『やっていないと申上げられると好う御座いますがね。』
 『おお!私はまた貴方が最初に云われた言葉から見て、何かそう云う物の有益な運転を阻害するような事が起こったのではないかと心配しましたよ』と、スクルージは云った、『それを伺ってすっかり安心しました。』
 『多くの人がそこへ行こうと思っても行かれません。また多くの人はそんな所へ行く位ならいっそ死んだ方がましだと思って居りましょう。』
 『いっそ死んだ方がよけりゃ』と、スクルージは云った、「そうした方が可い、そして、過剰の人口を減らす方が可う御座んすよ。それに――失礼ですが――そう云う事実は知りませんね。』
 『でも、御存知の筈ですが』と、紳士は云った。
 『いや、そりゃ私の知った事じゃない』と、スクルージは答えた、『人間は自分の仕事さえ好く心得てりゃ、それで沢山のものです。他人の仕事に干渉するには及ばない。私なぞは自分の仕事で年中暇無しですよ。左様なら、お二人さん!』」

自分の他の貧乏人が死のうが飢えようが知ったこっちゃない。
非情なごうつく爺の元に死んだ筈の友人マアレイが尋ねて来た。
それはクリスマス・イブの晩の事、マアレイは生前慈善を働かず私利私欲に走った罰に、重い鎖で身を何重も巻いた姿で現れたの。
マアレイの幽霊はスクルージに、死後自分と同じ罪を背負いたくなければ、3人のクリスマスの精霊(幽霊)の訪問を受けよと告げたわ。
聖クリスマスから3日3晩、スクルージは己の過去と現在と未来のクリスマスを、精霊の導きにより覗き見る事になった。

自分の家に帰る事ができず、孤独だった幼い頃のクリスマス…
働き盛りの青年になった頃、クリスマスを精一杯祝ってた主人宅での、楽しかったクリスマス…
愛よりお金を選んだ結果、恋人が離れて行ったクリスマス…
振り向けば直ぐそこに幸福が在ったのに、自らの心に鍵を閉め頑なで居た事に、スクルージは遅かりながら気付いたの。

現在のクリスマスでは、書記のボブやスクルージの甥が、家族や友人達と楽しくクリスマスを祝ってる情景を覗いたわ。
書記のボブの末っ子は足が悪くて杖をついていた、それでも末っ子のティムは神様に感謝の祈りを捧げる優しい子だった。
そんなティムを家族の皆は心から愛してる事が解り、スクルージは現在の精霊に尋ねたわ。

「『精霊殿!』と、スクルージは今迄に覚えの無い興味を感じながら云った。
 『ちびのティムは生きて行かれるでしょうか。』
 『私にはあの貧しい炉辺に空いた席と、主の無い撞木杖が大切に保存されてあるのが見えるよ。これ等の幻影が未来の手で一変されないで、このまま残っているものとすれば、あの子は死ぬだろうね。』
 『いえ、いいえ』と、スクルージは云った、『おお、いえ、親切な精霊殿よ、あの子は助かると云って下さい。』
 『ああ云う幻影が未来の手で変えられないで、そのまま残っているとすれば、俺の種族の者達はこれから先誰も』と、精霊は答えた、『あの子をここに見出さないだろうよ。で、それがどうしたと云うのだい?あの児が死にそうなら、いっそ死んだ方がいい。そして、過剰な人口を減らした方が好い。』
 スクルージは精霊が自分の言葉を引用したのを聞いて、頭を垂れた。
 そして、後悔と悲嘆の情に圧倒された。
 『人間よ』と、精霊は云った、『お前の心が石なら仕方ないが、少しでも人間らしい心を持っているなら、過剰とは何か、またどこにその過剰が有るかを自分で見極めない内は、あんな好くない口癖は慎んだが可いぞ。どんな人間が生くべきで、どんな人間が死ぬべきか、それをお前が決定しようと云うのかい。天の眼から見れば、この貧しい男の伜の様な子供が何百万人在っても、それよりもまだお前の方が一層下らない、一層生きる値打ちの無い者かも知れないのだぞ!」

現在のクリスマスでスクルージは、自分以外の誰も彼もが、己の生活に合った祝い方で、過している事を知った。
独りよがりな自分は持っていない、「絆」をそこに見て羨んだの。
彼にはお金しか無かった。

最後に、3人目のクリスマスの精霊が、彼に未来のクリスマスを見せた。
けれどスクルージはそこに居なかった。
書記のボブの愛する末っ子、ティムも亡くなってしまっていた。
そしてスクルージは――身包み一切剥がされて、無残に打っ棄られた己を見たの。
生前「絆」を持とうとしなかった彼の死を、悼む者は誰1人居なかったのね…。


原作者チャールズ・ディケンズは、作家になる前は新聞記者だったそうよ。
そのせいか氏の書く小説は風刺と皮肉に富んでるわ。
彼がこの作品で訴えたかった事は、慈愛の素晴しさと孤独の末路じゃないかしら?
ロンドンでは12/16になると、教会で『クリスマス・キャロル』が演じられるそうよ。
ディケンズ自身も存命中は自作の朗読を行ってたとか。
彼はクリスマスという日を「善い時、即ち、優しい気持ちになり、人を許し、慈善を行う楽しい時。長い1年の間で、私の知る限り、唯一、男も女も皆閉じた心を自由に開く時期」と表現するくらい愛してたの。
クリスマスを素材に幾つも文を書いたけど、中でも1番評判を呼んだのは、やはり「クリスマス・キャロル」だった。

ちなみに今日12/26はイギリスでボクシング・デーと呼ばれ、貧しい人達の為に寄付を集めて回る習慣が有るんですって。

メリーが挙げる印象的な点は、スクルージが全くの悪人に描写されてないのと、未来(運命)は変えられるんだって事。
これから読もうという人に、こっそり教えちゃうけど、ハッピーエンドだから安心して!
それじゃあ第6曲目のクリスマスソングを歌って今夜はお別れ――賛美歌98番「天にはさかえ」!
フェリックス・メンデルスゾーンが作曲、作詞は18世紀イギリスの宗教家、チャールズ・ウェズレーだと言われてるわ。
賛美歌の中でもクリスマスになると町で頻繁にかかるから、御存知な人は多いでしょうね。

また明日、楽しく一緒に歌いましょう♪




          【天にはさかえ ― Hark! the Herald Angels Sing ―】



(日本語バージョン)

天には栄え♪ 御神にあれや♪
地(つち)には安き♪ 人にあれやと♪
御使い達のぉ♪ 讃うる歌を♪
聞きて諸人♪ 共に喜び♪
今ぞ生まれし♪ 君を讃えよ♪

定め給いし♪ 救いの時に♪
神のみくらを♪ 離れて降り♪
御霊によりて♪ 処女(おとめ)に宿り♪
世人の中に♪ 住むべき為に♪
今ぞ生まれし♪ 君を讃えよ♪

朝日の如く♪ 輝き昇り♪
御光をもて♪ 暗きを照らし♪
土より出でし♪ 人を生かしめ♪
尽きぬ命を♪ 与うる為に♪
今ぞ生まれし♪ 君を讃えよ♪


英語バージョン

Hark! the herald angels sing♪
Glory to the newborn King♪
Peace on earth, and mercy mild♪
God and sinners reconciled♪
Joyful, all ye nations, rise♪
Join the triumph of the skies♪
With th' angelic host proclaim♪
Christ is born in Bethlehem♪
Hark! the herald angels sing♪
Glory to the newborn King♪

Hail! the heav'n-born Prince of peace♪
Hail! the Son of Righteousness♪
Light and life to all he brings♪
Ris'n with healing in his wings♪
Mild he lays his glory by♪
Born that man no more may die♪
Born to raise the sone of earth♪
Born to give them second birth♪
Hark! the herald angels sing♪
Glory to the newborn King♪


(↓から、びょり記)
…ようつべで良い日本語版が見付からんかった。
クリスマスを題材にした物語の中で、私はこの作品が最も好きだなぁ。
幽霊が出現するおどろどろしさが先ず好み。(笑)
クリスマスに死霊は付き物(憑き物)、だけでなくディケンズは、元から怪談が好きだったらしい。
幾つか怪談も書いてるんすよ。
もし現代まで御存命でいらっしゃって、お話できる機会が有ったなら、きっと気が合っただろうなぁ。(笑)

写真はお台場ヴィーナスフォートの冬季イルミネーション。

    

    

    

冬季はさながら天から雪が降る様なイルミネーションを灯して好評。
女神広場で見上げれば尚神々しい。

    

人工の空が常時明けて暮れるのですよ。
スーパーカーが展示されてますが、これは今度側の東京ビッグサイトで、モーターショーを開催する宣伝の為だったもよう。

    

飲食テナントが軒並み高いのがね~、チーズケーキ美味しかったけど。
「チーズケーキファクトリー」で注文したのはキャラメルチーズケーキ。
水曜はレディースデーって事で、チョコアイスをサービスしてくれた♪

            

内装はローマの遺跡をイメージして造ったのだとか。
内装に負けず劣らず外観も凝って造って欲しかったぜ。

    

隣は観覧車で有名なパレットタウン
ここにも大きなクリスマスツリーが飾ってあった。

                   

                  お台場の冬のイルミネーションも綺麗、是非お越しやす♪


参考「クリスマス・キャロル(チャールズ・ディケンズ作 森田草平、訳 電子図書館:青空文庫)」

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