瀬戸際の暇人

今年も偶に更新します(汗)

高橋留美子の巧みな世界 ―その4―

2008年10月10日 22時18分21秒 | 漫画&アニメ
思い付かなかったんで、懐かしのタイトルを引っ張って来たり。

色々途中になってる記事は有りますが(汗)、本日10/10は尊敬する高橋留美子先生の誕生日という事で、毎年恒例(←そうなんですよ、ええ)ルーミック話をしようかと。


今は距離を置いてしまったとはいえ、かつては今『ワンピース』に嵌ってる以上に、嵌ってました。
同人サークルに入会したし、イベント有れば出掛けたし、単行本が出たら必ず買ってた。
キャラグッズも結構手に入れようとした覚えが…。
作品だけでなく作者御自身に興味を持ち、インタビュー記事を見付ければ熟読した。


「企むのは苦手な性質なんで(笑)、書く前に先を決めたりはしません」

「一口で説明出来ない話じゃ駄目なんです。エンターティンメントとは、解り易い事だと思うんですよ」


「解らない方が悪い」と読者に文句を言うんでなく、「解るように描かない方が悪い」って考え方なんだろうなと。
読者を馬鹿にしてないって事で。
有名な作家さんなのに、偉ぶった所が全く無い点が素晴しい。
自分にとっては「漫画家の鑑」の内の1人なので御座います。(その中には勿論尾田氏も入ってる)


女史ほど人間観察力の鋭い作家さんは、滅多に居らん気がするんですよ。
並んでるんじゃないかと個人的に考えてるのは、『よつばと!』や『あずまんが大王』の作者あずまきよひこ氏。
氏の作品も好きで、単行本は持ってないが、出れば必ず人から借りて読んでる。(←自分で買って読めよ)


話を女史に戻して――


観察力の鋭さを最も感じた作品は、ビッグコミックオリジナル1988年10号に掲載された『鉢の中』。
小学館発行『Pの悲劇―高橋留美子傑作集―』の内の1篇として収録されてます。
後に『高橋留美子劇場』として復刊されたんで、そっちの1巻を探した方が見付け易いかも。



――主人公である主婦は、或る日同じアパートの住人の葬式に出る。

死んだ住人は、近所で「親切なお婆ちゃん」と評判の高かった人物だった。

主人公も何かと世話になっていて、好感を持っていたから、その死を残念に思った。

その席で…彼女は或る噂を耳にする。


「死んだ利根川のお婆ちゃんね…鬼嫁に虐められてたらしいのよ。
 あそこの奥さん、近所で評判の悪妻だったらしいわ。
 『家事一切してくれないから、仕方なく自分が全部やってるのよ』って、亡くなる前にお婆ちゃん、散々嘆いていたわ。
 
 実は私…前に見ちゃったの!

 利根川のお婆ちゃんが、悲鳴上げて家から飛び出して来て、『許して!!許してぇぇ…!!』って!
 その後に奥さんが出て来て、引き摺って行こうとしたもんだから、私、さすがに注意しようと思って声掛けたの。
 そしたら物凄い形相で振り返ってさぁ…私、お婆ちゃん殺されちゃうんじゃないかって、恐ろしく思っちゃった!

 次の日スーパーで、包帯だらけのお婆ちゃんに会ってさ!
 お婆ちゃん…それでも奥さんは御飯作ってくれないから、自分がやるしかないわって…本当、可哀想だったわ~」


噂話を耳にしながら、奥さんの様子を伺う主人公。

先に旦那も亡くし未亡人であった彼女は、義理の母の葬式の席で、欠伸を噛殺していた。


数日後、主人公は利根川の奥さんから、鉢植えの世話を頼まれる。

断るのも体裁が悪いので、引き受ける彼女。

しかし預かった鉢の1つから、人骨の様な白い欠片が見付かる。


『これってまさか…お婆ちゃんの骨なんじゃ…!?』


近所で噂されるイメージから、彼女は利根川の奥さんに疑いを持つが、真実は逆だったのである――



嫁姑の確執話。

親切なお婆ちゃんが、その実「悪妻」の評判を撒いて、奥さんをいびっていたという。

読んでて人の心の闇に、つくづく震撼させられた。
化物が出なくても充分ホラーで恐いですよ。
『鉢の中』ってタイトルがまた意味深。
根っ子は隠れてて、外からは見えないんですよね。

読みながら、母が以前してくれた話を思い出したり。

ウチの母が仕事の繋がりから、或る猫好きの気さくなお婆ちゃんと親しくなって…その家の猫が或る日目の前で死んじゃったんですと。

それで悲しむかと思ってたら――さっさとゴミ箱に死体を放り込んだそうで。

ショックを受けた母は、以来そのお婆ちゃんを見る目が変ってしまったそうな。


まぁ倫理観は人それぞれ違いますが…確かにショックだわなと思った。(苦笑)
葬式出さないまでも、ゴミ箱は無いよな~~と。


人間は恐いです。
好きな人には親切でも、嫌いな人には意地悪したり。
誰にでも親切にしてる姿が本当とも言い切れない。

隠れた根っ子は何本にも枝分かれしていて複雑なのです。
そんな人の心理をパッと捉えて、『鉢の中』と言うタイトルを付けた、女史の感覚の鋭さに感心してしまう。


この話は女史の描く話の中では珍しく後味が悪い。
いやラストで主人公がかけた言葉と、奥さんの笑顔に救いが少しだけ持てますが…。
女史の中では『笑う標的』と言う短編と並んで、「救われない話」じゃないかと。

けど名作だと思う。
未読な方は是非1度は読んで欲しい。


最後になっちゃいましたが、高橋留美子先生、お誕生日おめでとう御座います!!

先生が居なければ、今の自分は有得ない。

人生を変えてくれた、罪な御方で御座います。(笑)


あ、記事中書いた紹介は、単行本見ずに書いたんで、台詞とか違ってる箇所が有るかもしれない。(汗)
その際は謹んでお詫び申し上げます。

てゆーか『鉢の中』を記事に取上げといて、絵は『らんま』って、かなり間抜けだよなぁ。(や、実は現在単行本持ってないのよ…)(←ファン失格)

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