聖徳太子研究の最前線

聖徳太子・法隆寺などに関する学界の最新の説や関連情報、私見を紹介します

法家思想の役割を重視した「憲法十七条」論文: 「「憲法十七条」が想定している争乱」

2010年10月08日 | 論文・研究書紹介
 前回、法家思想を重視する宮地氏の「憲法十七条」論文を紹介しましたので、同様に法家思想の役割を強調した拙論をあげておきます。「聖徳太子研究の最前線」と名乗っておりながら、大昔の論文で申し訳ありませんが、

石井公成「「憲法十七条」が想定している争乱」
(『印度学仏教学研究』41巻1号、1992年12月)

です。当ブログのブックマーク、つまり、「作者の関連論文」コーナーのところにもリンクを貼っておきました。

 『印度学仏教学研究』(略称は、「印仏研」)は、仏教学に関する最大の学会である日本印度学仏教学会の機関誌ですので、これを見れば仏教学界のおおよその研究動向がわかります。

  CiNii では、PDF で読める「印仏研」の論文は、2002年以降の論文に限られていましたが、先だって Journal@rchive で、1952年の創刊号から2006年度の論文までが PDFとして公開されましたので、CiNiiで検索してこちらで読むことが可能となっています。便利な時代になりましたね。

 拙論は、「憲法十七条」についてあれこれ論じる前に、まず典拠を徹底して捜そう、そして『日本書紀』が「憲法十七条」を重視しているのは明らかである以上、「憲法十七条」と『日本書紀』の他の記述との関係を明らかにしよう、という方針で書いたものです。

 「無忤」の典拠、雑家に分類される『呂氏春秋』と類似する要素があること、仏教・儒教・『荘子』の思想などが混在しているものの、それらすべてが法家的な立場に結びつけられて用いられていること、類書(文献の用例を並べた中国流百科事典)の「聖」の項目を利用して書かれたらしいこと、「憲法十七条」が想定している「聖」なる臣は蘇我馬子らしいこと、などを論じています。

 18年も前の不備な試みですが、新たな視点をいろいろ提示し得たものと考えています。そのうち、『孝経』の影響以外の面についても、補足篇を書く予定です。
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