こぺる【自動/ラ五】

①ゆるゆるする。②なんとなくなんにもしない。
そしてオッサンへ…

●「アララトの聖母」

2005-01-31 | 映画
夜更かししてDVD。今日の映画は
監督・脚本アトム・エゴヤン
2002年公開のカナダ映画
「アララトの聖母」

アララトと言えばノアの箱舟!
そういう内容の映画かな、と思ってたんだけど、
この作品はアララト山の麓で行われた、もうひとつの
歴史的事実を描いている。
トルコ軍による、アルメニア人の大量虐殺だ。
無知な私が背景を書くのははばかられるが、
簡単に説明すると
・1915年~の数年間で、トルコ軍による大虐殺が行われ、80万人以上が
 殺された。(映画では100万人以上と言っていた)
・トルコは現在もこの虐殺を認めておらず、虐殺ではなく、
 強制移住だと主張している。

虐殺を生き残った実在の画家を描いた歴史映画(劇中劇)と、
それに携わった人間の人生とを巧みに交錯させながら
物語は進んでいく。

歴史映画(過去)と現在とがリンクし、また虐殺シーンの具体性と、
「描いた後、手だけを消された母子の絵」といった抽象性とがリンクする。
すごく不思議な映画だった。

すごく正直に言って、最初は
「この監督は何故こんな映画を撮ろうと思ったんだろう。
憎しみの連鎖を望んでいるのかな?」
と思ってた。
実際、映画の中でもカナダで生まれたアルメニア人の青年は、
劇中で映画が出来ていく過程で、トルコ人への殺意に近い感情を抱き始める。

でも、その考えは違ってた。

優れた映画を言葉で説明するのは、すごく難しい・・・
映画のシーンを再現するので精一杯。


映画の中でアルメニア人とトルコ人(二人とも虐殺を歴史としてしか知らない)
が交わす会話。

トルコ人俳優「僕はそのことを知らずに大人になった。
役のために"強制移住"のことを調べた。たくさんの人が死んだ。
第一次世界大戦だったからね。」

アルメニア人青年「トルコはアルメニアと戦争していなかった。
ドイツもユダヤ人と戦争していなかった。彼らは守られるべき市民だった。」

ト「"何か"が起きなかったとは言わない。僕も君もカナダ生まれだ。
過去のいやな出来事は忘れて仲良くやろう。」

ア「ヒトラーはユダヤ人虐殺を将校達に説明する際に言った。
"アルメニア人絶滅を誰が覚えてる"」

伝わるかなー?伝わらないだろうなー。やっぱり映画を見て!

いつもはネタバレを心配するんだけど、今回は敢えて映画の内容もいくつか記した。
それが決して、監督の意に背く行為とは思わないから。
そしてなにより、この映画が訴えていることは、歴史上の事実だと信じているから。

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