千の天使がバスケットボールする

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『Emma エマ』

2009-02-01 16:22:14 | Movie
英国の女流作家ジェーン・オースティン(1775~1817)の小説が英米でブームになっているそうだが、女の子の心をきゅんとさせた映画『プライドと偏見』とこの『エマ』を観て、それもおおいに肯ける。女の子好みの道具立てはばっちり、貴族の館に素敵なこれまた女子の永遠のベストセラー「若草物語」を彷彿させるクラシックな英国調ドレス、美しい田園地帯へのハイキングがあるかと思えば、舞踏会・・・そしてそこに現われるのがイケ面の英国紳士!平凡でのどかな田舎町でくりひろげられる読者には最初からわかっている男女の恋が、もつれてユーモラスにからまり最後はハッピー・エンド!これは、オールド・ハーレクインロマンスだ。

南イングランドの田舎に住む17歳のエマ・ウッドハウス(ケイト・ベッキンセール)は、あかるく美しく機知に富んだ魅力的な女の子。姉が嫁いだ後は、妻を亡くした父とのふたりぐらしなので、当分結婚する気持ちがないうえ、経済的に結婚の必要もない独身主義者。そんなエマは、恋愛経験がないにも関わらず生意気にも恋のキューピッド役を務めるのが大好き。今度のたくらみは友人ハリエット(サマンサ・モートン)のお相手探し。エマは最初のターゲットだった牧師のエルトンとなんとかハリエットを結びつけようと計画をねるのだったが、肝心のエルトンに馬車の中の密室でせまられてあわよくばファースト・キスを奪われそうになり大慌て!
頭の回転は速いが、世間的な身分や格式にこだわり、人の機微をいまひとつ読めない勘違いエマに厳しく意見できるのは、年上の従弟のナイトリー(マーク・ストロング)。彼は生まれて3ヶ月の時に抱いたわがままなお嬢様エマを、ある時は優しく諭し、時に厳しく忠告する誰からも尊敬され親しまれる紳士だった。

「灯台もと暗し」
英国にもこんな諺があるのか知らんが、これを言ってしまったら完全にネタバレ。しかし、オースティン作品の醍醐味は、相思相愛の男女がそうとはお互いに気がつかず、どきどきはらはらとお約束のハッピー・エンドまでたどり着くまでの迷走とどたばたぶりを一緒に楽しむことにある。こんな年の差カップルを更に混乱させるために登場するのが、彼女が後妻にまとめた元家庭教師の夫のウェストン氏の息子のお気楽で軟弱なフランクや、隣人の姪の美しくしっかりもののジェーンである。
ここで、エマも好きになってしまう優しく女の子のあしらいにたけてモテモテ男フランクの性格の弱さやお調子のよさを見抜くナイトリーや、叔母の家の経済的困窮を知りつつ自活できる道を探す毅然としたジェーンの凛々しさと、人物描写が魅力的で的確、会話もユーモアとウィットに富んでいるのが英国流。端正に手入れをされた庭に育ったエマは、しかしその景色そのままにいつまでも世間を知らない女の子ではない。

当初は、エマの高慢で自己中心的な性格を好きになれないのだが、彼女は単に幼く未熟なだけであることが鑑賞していくうちにわかってくると嫌いになれない。女性としてエマより数段うえに思えるジェーンを苦手に感じるエマの心理も可愛いと思えるようになる。『スノー・エンジェル』で不幸な女性を演じたケイト・ベッキンセールが別人のように若くて溌剌として可愛らしい。女性が意志をもち経済的に自立することが難しかったこの時代。彼女が真実の恋を見つけて、自らの意志にめざめて人間として成長していく物語でもある。こんなところもオースティン人気の理由がある。それぞれがお互いの恋の相手とふさわしい生涯の伴侶にめぐりあう、鑑賞後も春の到来を感じるような映画だ。

監督:ディアールムイド・ローレンス
1997年英国製作

■大好きな映画
『プライドと偏見』


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