千の天使がバスケットボールする

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「くわしっく名曲ガイド」茂木大輔著

2008-06-04 22:55:27 | Book
日曜日、夜9時開演するNHK教育テレビの「N響アワー」で拝見する酒席、、、ではなく首席オーボエ奏者の茂木大輔さん。
最近、それともずっと前からだろうか、ちょび髭をはやされているようだが、本職のオーボエだけでなく、益々ペンの筆さばきも冴え、指揮棒なんかも振っちゃっているらしい。少々メタボ気味になりつつある体型も指揮者の貫禄あり。失礼!
本書の表紙にあるもぎぎさん(←茂木さんのニックネーム)が燕尾服で片手におもちのグッズは指揮棒であるが、この指揮棒は実はモギギからの初心者向けのクラシック音楽にクワシックになるための道案内の指揮棒なのである。

さて、もぎぎさんが振る指揮のもと、本書のページをめくると、TPO別オススメの名曲(季節別、恋愛状況別・・・)、血液型・星座別運命の作曲家あり、更にお好きな楽器をピンポイント鑑賞する名曲ガイド等、実に安易な編集方針のもと、モギギの解説と指南が続く。
私の大好きな、これを聴かなくちゃ夏はないというメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の有名な結婚行進曲は、もぎぎさんによると”序曲の幻想性、スケルツォで活躍するフルートの涼やかさなど、「音楽の岩波文庫」、高級納涼音楽であります”となっている。この比喩などは心底うまいと感嘆してしまったのだが、もぎぎさんの軽やかなタクトさばきは抜群で、またその語り口の軽妙さとユーモラスさは落語を聞いているような感覚で何度も笑ってしまった。(だから、本書は人前で開くべからず。)ちなみに魚座でB型の私の運命の作曲家は、音楽史の旅人、グリークで「ピアノ協奏曲イ短調」がふさわしいそうだ。

すでに10冊を超える著書のいずれも好評であり、私も楽しく読んでいたのだが、本書の抱腹絶倒ぶりは、一部クラシック愛好家からは”ふざけるなーっ”という罵声が飛ぶかもしれないギリギリの境界線まで遊んでいる。だから、おもしろいのだが。オーケストラ楽器事典の項目では、小太鼓を”叩いただけでその場が軍隊”、シロフォンなどの楽器は時おり恐ろしく難しいパートを弾いていることがあり「打楽器奏者、楽譜読めるんだ・・・」と新鮮な感動を与えているという記述もある。

しかし、本書を単純な初心者向けの読み捨てガイドブックと侮るなかれ。
前述したオーケストラ楽器事典などは、オーケストラの団員として楽器の特性、各楽器別のポジションからくる感性、オーケストラがどういうものか、ソロを受け持つこともあるオーボエ奏者として長年N響という日本を代表するオーケストラの中で第一線で活躍されてきた著者だからこそ、たどりついた真理もある。また、ハイドン交響曲よりすぐりガイドでは、少々軽く扱われる傾向のあるこの作曲家の交響曲のすべてが前衛的で実験的、新鮮で輝きに満ちた彫刻のようと表現しているように、著者の音楽への慈愛と洞察に心があらわれるようである。
それにしてもオーボエ奏者、指揮者の肩書きにそろそろ「作家」を加えてもおかしくないできばえの本ばかりである。
なんたってもぎぎの振る演奏会に足を運んでみたい、と思わせてくれるできばえなのだから。


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