千の天使がバスケットボールする

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オバマ氏は民主主義の勝利なのか

2008-06-14 11:40:30 | Nonsense
読売新聞の書評者としてもすっかりおなじみの顔になったが、本業のアメリカ文化とコミュニティに関し、最近私が注目している気鋭の学者が渡辺靖さんである。
6月13日の読売新聞に、米大統領選の民主党候補者の指名レースのオバマ氏勝利に対して、文化人類学者としての視点から論じている記事が掲載されていた。

渡辺氏は、緒戦のアイオワ州から最終戦のサウスダコタ・モンタナ両州に至るまで、地図をとりだして調査で訪問したコミュニティの投票結果を追っていった。その結果、オバマ氏は黒人が多く住む居住地では圧倒的に強いものの、隣接する白人”労働者”やヒスパニック系移民が暮らす地区では苦戦していた。貧しい労働者たちによるクリントン政権時代からのヒラリー氏への支持と信頼は語られていたが、渡辺氏によると黒人と労働市場における競合関係、生活空間のおいては緊張関係が、オバマ氏の「希望」と「変革」が容易に届くことはなかった、という分析になる。しかも、オバマ氏が師と仰ぐ黒人牧師ジェレミア・ライト牧師による白人敵視発言が、警戒心を煽ったため、所属するトリニティー統合キリスト教会(シカゴ)の脱会宣言をした。
シカゴを政治活動の拠点としてきたオバマ氏が、貧困地区で受け入れられるためには、同師との関係が必要だったが、人種の壁を乗り越えてきた超克ではなく、私はむしろ”人種の融合・統合”としての象徴を印象づけられた彼が、今回の選挙戦では”黒人”であることを前面にださなかった戦略に、この国の「人種」問題の複雑さを実感させられた。おりしも「教会の演壇で白人を差別語で呼んだ」という妻のミッシェル夫人への中傷まで流布されては我慢も限界、「中傷と戦う」サイトを開設した。
素人の感想だが、米国は米国市民の半分を占める性の女性を大統領に迎える準備はできているが、まだ黒人大統領を受け入れる土壌ではないと考える。このような人種に関わる中傷は、ずっと続くだろう。
そして100年ほど前の伝説の黒人指導者W・E・B・デュボイスの「白人との”融和”は黒人にとっての”宥和”に過ぎない」という言葉が、いまだに黒人たちの血に生きているのだろうか。

さて、オバマ氏を紹介する言葉に必ずあるのが、”エリート”である。ケニア出身の父をもち、経済的にも恵まれなかったオバマ氏の経歴を考えると、決して”エリート”ではないにも関わらず、彼は優れた”エリート教育”を受けてきた。その教育がホワイト・ハウスの門を開くのかどうかは、いまだに予測つかないが、渡辺氏によると米国の民主主義の底力の証明である。資金力・知名度・組織力で万全の準備を整えて、誰もが勝利を予想したクリントン氏を破った要因としてあげられるのが、わずか5ドルの小口の寄付で選挙資金の9割で調達した驚異的な事実は、日本と米国の民主主義の歴史とあつさを感じさせられる。この現象を渡辺氏は、「既存の体制へのカウンター・ディスコース(対抗言説)を可能にする米社会のダイナミズムの証明こそ、オバマ旋風の本質的意義」と述べている。
そして、フロリダ・ミシガン両州の代議員の処遇をめぐって開催された民主党の党規委員会の審議・投票のテレビ中継で繰り広げられた厳しい議論に、密室政治ではない民主主義の勝利を渡辺氏は見た。
民主主義が、最良の、あるいは望ましい政治形態だとは決して私は考えない。
おりしも秋葉原の無差別殺傷事件にふれて、橋本五郎氏は、自分が福田康夫首相だったら、事件の強い憤りと原因の徹底糾明への断固たる意思を会見を述べると苦言を呈している。我が国の首相にたりないのは、橋本氏のようなほとばしる情熱なのか。視聴率をかせげる人気タレントを主人公にして、亡き政治家の父の看板と地盤を継いで総理大臣までのぼりつけるというストーリーを楽しめる国民の意識もあるのか。

オバマ氏は若者の絶大なる人気を誇り、初めて投票所に足を運んだ若者が記録的に多かった。ケネディ大統領の影響を受けて大統領にまでなったクリントン氏のように、オバマ氏に憧れて政治家を志す若者がでるだろう。
「そんな政治家を抱ける米国が羨ましい」
という渡辺氏の言葉で記事は結ばれていたが、クリントン派の私ではあるが、全く氏の感想に同調する。
”心底”羨ましい。

■アーカイブ
・「クリントン氏の敗北 女性支持者に残った落胆と高揚感」


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2 コメント

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日本人はオバマをわかっていない (アメリカ20年)
2008-06-14 13:15:55
残念ながら・・アメリカ人、特に白人は人種偏見があまりないのです。逆に有色人種ほど差別意識が強い。資本主義の極地ともいえるこの国では、日本人が思うほど、人種偏見はないのです。有色人種は、ジェラシー(嫉妬感)が強いというのがアメリカ人の一般的認識です。だからオバマを支持しているのは、白人層が多いのです。
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これからですね (樹衣子*店主)
2008-06-15 22:30:24
>アメリカ20年さまへ

ご訪問をありがとうございます。

>アメリカ人、特に白人は人種偏見があまりないのです

貴殿のご指摘にすぐに頷けるほど、私は素直ではないのです・・・残念ながら。

>日本人はオバマをわかっていない

今のところ、オバマ氏が大統領になる可能性は50%ぐらいだと私は考えています。日本人として、今後は、民主党の大統領候補者として、オバマ氏を理解していきたいと思っております。
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