千の天使がバスケットボールする

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『ペーパー・チェイス』

2012-05-20 14:44:28 | Movie
東京大学を中心とした日本の名門大学10校が、秋入学の検討をはじめている。
大学にとっての最大の顧客である大学生の教育や経済的負担などを何の考慮もしないで、大学ランキングにこだわる東大学長の発想は低次元だと私には思えるのだ、こんな方には映画『ペーパー・チェイス』を是非とも一度観て頂きたいものだ。

ハーバード大学、中でもロースクールは世界の頂点だろう。
『ペーパー・チェイス』の舞台は、1970年代のハーバード大学院のロースクール。文句なく世界最高クラスの指定席。ミネソタからやってきた主人公のハート(ティモシー・ボトムズ)は、契約法の専門家である名物教授キングスフィールド(ジョン・ハウスマン)の講義をとる。早速、学生寮では講義のノートを交換する勉強会の仲間もできたのだが、厳格なキングスフィールドの講義はきまわて厳しかった。常に蝶ネクタイを締め感情を見せずに、学生に適格な質疑応答を求める偉大なるキングスフィールド。

彼らは、教授に自分の名前を覚えてもらおうと必死に勉強をしてくらいついていく。何故ならば、ロースクールでの成績は将来を左右するからだ。有名教授からの”A”という評価は法律家としての輝かしい未来というファーストクラスのチケット。ここに集う学生は、IQ180の天才、父も祖父も曽祖父も何代もハーバード大学卒業生だったという学生、驚異的な記憶力の持ち主といったきわめて優秀な者ばかり。当たり前か。しかし、ここではそれらはなんの意味もない。事前に渡された資料を読み込み、かかわりのありそうな判例や学説まで網羅して、そのうえで自分で理論をつくりあげる能力がないと通用しない。容赦のないキングスフィールドの質問に応えるためには、知力だけでなく、体力も精神力も必要だ。そして、自ら学ぶ力も。

少しずつ法律家予備軍として力をつけていくハートは、ガールフレンドは勉学の邪魔という仲間の忠告も受け容れず、キャンバスで偶然出会った美しく魅力的な女性スーザン(リンゼイ・ワグナー)に恋をするのだったが・・・。

映画では、何度も何度もハートの猛勉強をする姿を映し出す。何しろキングスフィールドの初めての講義を受講してやりこめられて、プレッシャーから寮のトイレで嘔吐してしまったハート。しかし、これこそ大学だ。レジャーランドだった日本の大学で羽を伸ばし放題で、酒と反比例して学力も知力も下降線をたどった私とは、次元が違う。必死に契約法を勉強するかたわら、ハートが意を決して恋人に婚約をせまるとスーザンは”契約”はしたくないと拒否をする。自由でいたい彼女は、契約で結ばれた結婚という形態を否定する。このスーザンが何者なのか、詳しく言えないが、かくれた映画の人気は彼女の魅力によるところも大きい。

ヴィデオ時代に一度だけ観て、強烈な印象を残したひたすら猛勉強の青春映画『ペーパー・チェイス』。どうしても、もう一度観たいと思っていたのだが、嬉しいことに最近DVD化されていたらしい。実に久しぶりに再鑑賞して気がついたのが、キングスフィールドの講義の魅力だ。厳しいけれど、こんな講義だったら猛勉強をしてでも挑みたいと思わせてくれる。40年も前の「ハーバード白熱教室」の白熱は、冷酷ながらも熱い。図書館に侵入するエピソード、友人と試験勉強のためにこもるホテル、そして名場面のラストシーン。DVDをめったに購入しない私が、レンタルにはなっていないことを知って手に入れた『ペーパー・チェイス』。もう一度、観たいと思わせてくれる知る人ぞ知る名作だ。

ひるがえって日本の大学。果たして、秋入学を実施しても優秀な留学生が集まるのだろうか。

原題:THE PAPER CHASE
監督:ジェームズ・ブリッジス
1973年アメリカ製作

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