千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

「ウィーン愛憎」-ヨーロッパ精神との格闘

2005-05-16 23:17:42 | Book
ウィーン大学の日本語が達者なヤパロギー(日本語学科)の学生G君が、あるとき戦う留学生中島氏にこう得意げにのたまったそうだ。
「ヨーロッパで見かける日本女性には3種類の馬鹿がいる」
①ヨーロッパ人に前でコチコチになる馬鹿
②ヨーロッパ人の前で媚びふりまく馬鹿
③そしてヨーロッパの高級品を買いあさる馬鹿

以前、ウィーンの国立歌劇場でバレエ「眠れる森の美女」を鑑賞した。素晴らしかった。兎に角、踊り、音楽、衣装、舞台装置すべてが美しかった。私たちは舞台左よりのボックス席の最前列、映画などで中堅どころの貴族がオペラグラスで幕の間から舞台と観客を見下ろす位置といえば、判りやすいだろうか。後には、いかにもウィーンッ子と思えるワンピースと蝶ネクタイのものなれた20代後半の顔立ちが整った育ちのよさそうなカップルが座っていた。
ところが、舞台が始まる頃に腰に妙な違和感を感じ確かめると、椅子の深紅のビロードの背もたれと座席の間の空間に、カップルの女性が脚を組み、なんと靴をのせていたのである。その靴先が私のシルクのスカート越しにお尻にあたって違和感を感じていたのだった。争いごとが嫌いで、自分が我慢すればよいと考え勝ちの私だから、この国の人は日本人ほど行儀はよくないのだと我慢しようかと考えた。が、しかし、もし私がオーストリア人だったら、或いはアメリカ人だったら、白人だったら、彼女はこのような失礼なふるまいはしないであろうという考えにいたり、振り返って相手の目をまっすぐ見てにらんだ。するときまり悪そうに、すぐさま彼女は脚をそろえて、以後このような態度は慎んだ。
このときの経験で、私は上記の馬鹿には該当していないと言いたい。類型的に日本女性を決め付けないで欲しい。

前置きが長くなってしまったが、ほんの数日のウィーン滞在時感じたのは、男性の女性に対するうやまいのおかげで、堂々とふるまえる自分を感じる。けれども、女性はスーパーの店員ですらも、日本人に対して冷たい少々視線をおくることがある。

東京大学教養学部卒業、法学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了した著者、中島義道氏が1983年ウィーン大学哲学科に”私費留学”したときの、かの地での涙ぐましく、時に同情を禁じえない卒業までの奮闘記である。副題にもあるとおり、彼を待っていたのは音楽の都の調べでも華麗なワルツでもなく”高慢”にして”偏見”に満ちたヨーロッパという精神だった。自分の過ちは決して認めず、相手を徹底的に非難する、或いは高飛車に頑固に自分の権利を主張する、そこには堂々たる体格どおりのヨーロッパ人の”堂々たる”滑稽すら感じる様々なパフォーマンスが紹介されている。
しかも驚くなかれ、階級意識の比較的少ないのどかな日本人でも、ウィーンの日本社会では上から大使館員の家族、政府国連関連職員の家族、大企業の家族と細かく序列が残酷なまでに決まっている。最後は無目的に滞在している輩。このヒエラルキーは国家の保護を期待できる順であり、尚且つ経済力が対応している。そこでは、私費音楽留学生など、大手商社マンの奥様たちの軽蔑の対象にもなりうるというドライな階級社会なのだ。(当時)生活費が90万円で高級住宅地の白亜の近代的な住居に住み、テニスやお料理教室に車ででかける奥様たちにとって、労働者が住む狭く不便なアパートでぎりぎりの生活で修行しているいまだ無名の音楽留学生などは、ここでは承認されない。日本では人を経済力=社会的地位で判定することをしない態度も、異国で緊張をしいられ、時には迷惑を被ることもあるため、そのような差別感が生まれると、ウィーンでは東大卒だが身分と収入ゆえに冷遇される中島氏は分析する。

横柄で融通のきかない大学職員にもんくをいい、同僚の自己中心的なイギリス人英語教師に厳しく意見し、家主と喧嘩し、誠に中島氏は喧嘩上等と格闘とした戦史ともいえよう。
最近も喧嘩をしているようだが。↓

語らない美学は人を損なう

しかし、それでもやっぱり愛が深いから憎しみも大きい。愛すればこその男の怒りなのだ。
ウィンナーワルツを踊るには、戦闘体制を整えてからどうぞ。

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2 コメント

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TBさせてもらいました (ぐっち)
2005-05-18 18:40:53
どうもです。一度植草先生の件でTB頂いておりまして、なんとかTBさせて頂こうと考えていましたが、なにせ高尚な話題が多くございまして、今回強引にTBさせて頂きました。すみません。強引にもうしあげるとウィーンあたりになるともう別世界と申し上げるしかないでしょうね(笑)でも今年のウィーンフィルは買い占めますぜ!!
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禊をおえ、植草さんの活躍を期待したい (樹衣子)
2005-05-18 19:35:12
思いがけないところから、変化球をいただいたようで楽しいです。

ぐっちさんは、金融のプロという立場からアマチュアの戯言には興味を示されないと思っておりました。

本当はGacktとエロスの領域で、偏屈なブログにしたかったのですが、なんだか路線が”清純派”に転向しつつあり不本意です。

長者番付の件ですが、さしつかえのない範囲でコメントをさせてください。

ウィーンフィルに行かれるのですかっ!でも、買い占めるという表現が・・・
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