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著者は、オーボエ奏者としてオケマンとなって21年。中村紘子さんも演奏後の観客からの拍手をあびると、病みつきになるとおっしゃていた。演奏家にとって、終演後のビールや恋人との逢瀬に劣らず気になるのが、拍手だとか。ぱちぱち・・・。
ところが、最近、その「拍手」事情に緊急事態が発生中!
私もずっと気になっていたのだが、演奏後の余韻を一瞬にして破壊する拍手である。音楽の感動に圧倒されているさなか、いきなり渋谷駅の雑踏の中で「え~、傘をおもちのお客様は~、車内にお忘れものをされないように~」というアナウンスで雑多な現実に戻されるかのような”タイミング”での拍手。えっっ?!こんなタイミングで拍手できるの、みんなちゃんと聴いていたのかっ。
あの温厚なromaniさまですら、あるオペラの演奏会で起こった演奏中の拍手、しかも俗に言うフライング拍手がおさまった後、まだ音の余韻が残っているのに鳴り出した拍手が、「感動的なトリスタンを見事にぶち壊してくれた」とお怒りになられていたっけ。ご同情申し上げまする。。。
「猛省を促したい」
そんなromaniさまのセツジツなお声が、NHK放送交響楽団にも届いたのでしょうか。広報部長のようなもぎぎさんが、フライング拍手、フライングばぼー、「ええと、これはもう、立派な犯罪である」と断言してご登場されたのが、本書の「拍手のルール」。
拍手を音量、音程、密度から分析し、作品別の見取図、拍手の常識、海外事情など、もぎぎ氏の実にりっぱな研究成果が披露されている。といっても、なにかと敷居が高いと敬遠されがちなクラシック音楽業界からのお小言ではない。マニアックな落語ファンとして磨かれた著者の名人の域に達するくらいの話術に、儀礼的でもいい、「でも曲の最後の音が消える前に拍手するのはやめてくださいね」という演奏者と聴衆が協調して音楽を楽しむ作法が伝授されている。あんまんで言えば、中身のあんこが拍手のルールであるが、話題は豊富、指揮者式手記、名曲の個人情報など、もぎぎ亭の落語は続く。
私の名曲個人情報の拍手と言えば、忘れられないのが故朝比奈隆氏がふる大阪フィルの「ブルックナー」である。
演奏終了後、拍手が続く、続く。当時、90歳をこえた老巨匠が、再び呼び戻される。オケ、ビール呑みたいし、、、帰る。熱心なファンが、舞台下までつめかけて、拍手鳴り止まず。延々と続く拍手。。。もぎぎ氏は、指揮者としてこのような老巨匠への拍手は冥利につきると言いつつ、「これでお別れかも・・・」との思いがおじいさんを離さないとせつなく説明されている。やっぱり、ビールは生よりも「黒」の私ではあるが、どんなに完成された名演奏よりも一期一会の生演奏こそ音楽の本質だと思っている。この演奏会も、一生の思い出になった。
最後に、calafさまにお伝えしたいのが、もぎぎ氏の次の言葉であろうか。
「自分の子供や恋人の演奏は、あらゆる名演の感動をしのぐ。感動とは、そういうものなのである」
■アーカイブ
・「くわっしく名曲ガイド」茂木大輔著
>自分の子供や恋人の演奏は、あらゆる名演の感動をしのぐ。感動とは、そういうものなのである
これには爆笑と微苦笑とない交ぜになりました。ブログ文中romaniさんが登場されておりましたが、私は?と思っていたところでした。
私は娘と恋人の両方の演奏を経験しておりますで、まさしく私にぴったりです。
正直なところ、(私の場合も)そう思われても仕方ないところですが、弾き手が誰であれ、自分の耳を優先してしまうもう一人の私がいるのです。大変辛いことですが、これは認めなければなりません。
でも、茂木さんは素敵な言葉を綴ってますね。
度々旅行で更新が滞ることがあっても、私の人生にお休みは今のところないのです。
ところで、
>私は娘と恋人の両方の演奏を経験しておりますで、まさしく私にぴったりです。
そんなcalafさまも、もぎぎさんに負けないくらい素敵だと私は思うのですが。
他にも心に響く個人的なもぎぎさんのエピソードもあり、私は気にいっています。