僕達の小さくて大きな森(14)

2020-06-30 08:38:03 | 童話
僕は急いで友達の家へ行った。
『今ね、小さくて大きな森の動物達がやって来ているので早くおいでよ。』
『えっ、あの動物達が来ているの?』
『そうなんだよ。』

僕は急いで庭の梅の木の所に来て根元にいる動物達に会ったが、小さくて大きな森に帰る準備をしていた。
『君達も帰る時はエンピツなの?』
『そうだよ、エンピツが無いと帰れないんだ。』
『僕達と同じだね。』
『うん、そうだね。』
『今度はいつ来てくれるの?』
『もう来られないよ。』
『残念だけれど仕方ないね。』
『じゃぁ帰るからね、バイバイ。』

キリンが『うわっ。』
ゾウが『うわっ。』
チンパンジーが『うわっ。』
カピバラが『うわっ。』
カブトムシが『うわっ。』
クワガタが『うわっ。』
そうして、動物達はみんな小さくて大きな森に帰って行った。

僕は今も梅の木を大事にしている、小さくて大きな森の動物達のために。

  おしまい

僕達の小さくて大きな森(13)

2020-06-29 09:00:15 | 童話
ある日、おじいちゃんに頼まれて庭の掃除をしていて、梅の木の根元の雑草を取っている時に、根元に何か動く物を見つけた。
『やぁ、人間君、元気?』
忘れていたあの小さくて大きな森の動物だった。ゾウもキリンもチンパンジーもいるし、小さく点のように見えるのはカブトムシとクワガタだった。

『やぁ、みんな元気だったんだね。』
『うん、みんな元気だよ。君が引越しをしなくても良くなるようにしてくれたからね。』
『だけれど、みんなどうしてここにいるの?』
『僕達は、小さくて大きな森の中でしか生きていられないけれど、人間の君達に会いに来たんだよ。もう帰らないといけないけれどね。』
『僕と友達は、どうして君達に会いに行けなくなったの?』
『僕達の小さくて大きな森はね、小さな子供だけが行ける所なんだよ。君達は大きくなって高校生になったから、小さくて大きな森には行けなくなってしまったんだよ。』
『そうなんだ。今、友達を呼んでくるから、ちょっと待っていて。』

僕達の小さくて大きな森(12)

2020-06-28 06:59:33 | 童話
そして、僕は友達の家に行って梅の枝を庭に植えたことを言った。
『良かったね、これで動物達が引越しをしなくてよくなるね。』
『そうだね。その事を動物達に教えてあげようよ。』
『そうしようか。』
僕達はエンピツを持って庭の梅の枝の所に来た。
『うわっ。』
『うわっ。』

僕達はお花畑を抜けて動物達がいる所にやって来た。
『お~い、動物君達、もう引越しをしなくてよくなったよ。梅の枝を庭に植えてきたからね。』
動物達が拍手をして僕達を喜んでくれた。
『うわっ。』
『うわっ。』
僕達は動物に伝えたので家に戻ってきた。

庭の梅の木が大きくなり、今はエンピツを近付けてもブルブルとなることも無くなった。  しかし、動物達はみんな元気だと思う。
できれば、もう一度ブルブルとなり、『うわっ。』となって動物達に会いに行きたい。

僕達は高校生になり、友達も僕と同じ高等学校に行っている。そして、挿し木した梅の木も大きく育ち、たくさんの実を付けるようになっていた。
僕達は勉強とクラブ活動で、あの小さくて大きな森の事は忘れてしまっていた。

僕達の小さくて大きな森(11)

2020-06-27 07:37:13 | 童話
僕達は花瓶を飾っているテーブルの前に戻って来ていた。
『ねぇ、お母さん。この梅の枝は、お花が枯れたらどうするの?』
『ゴミで捨てるわよ。』
『捨てないで植えておくと大きくなるの?』
『良く知っているのね。挿し木と言ってね、木を増やす時に挿し木をするのよ。』
『じゃぁ、僕達の梅の木にするから、挿し木にして頂戴。』
『ええ、いいわよ。』
『やったぁ、これで動物達が引越ししなくてよくなるね。』
『うん、そうだね。』

それから、お母さん達は梅の花が咲いているのを楽しんでいるが、僕達は花が咲き終わるのを楽しみにしている。
『温かくなって来て、梅のお花も散ってしまったわね。』
『お母さん、梅の枝を挿し木するから僕に頂戴。』
『約束していたから良いわよ。』
『大事にするね。』
僕は梅の枝を庭に植えて、元気になるんだよと声をかけた。

僕達の小さくて大きな森(10)

2020-06-26 07:24:04 | 童話
気が付くと二人はお花畑にいて、たくさんの種類の花が咲いている。
『きれいだね。』
『うん、きれいだね。』
僕達は、花を踏まないようにして、お花畑の中を歩いて行った。
そうすると、盆栽の時のように広場に出た。
『やぁ、また人間がやってきた。』
前に会った時と同じように、動物達が集まっていた。

『動物さん達、みんな元気?』
『ああ、元気だよ。』
『今日も何か相談しているの?』
『前の森は古い森だったので引越したけれど、今のお花畑はお花が枯れると引っ越さないといけないので、いつ引っ越さないといけないのか相談しているのだよ。』
『引っ越さなくても良い方法は有るの?』
『ああ、梅の花が終ったら捨てないでどこかへ植えると枯れないで大きく育つんだ。そうすると動物みんなが引越ししなくてよくなるんだよ。』
『ふぅ~ん。家に帰ったらお母さんにお願いしてみようよ。』
『うわっ。』
『うわっ。』