20センチの巨人(2)

2020-04-30 07:39:08 | 童話
『そうだね、本の中は引力が小さいので、わしの所まで落ちてこないんだよ。』
『ふ~ん。引力ってな~に?』
『みんなが居る地球が引っ張っている力だよ。』
『その力は僕よりも強いの?』
『そうだよ。君よりもずっとずっと強いんだよ。』
『ふ~ん、巨人さんよりも強いの。』
『ああ、わしよりもずっと強いよ。』

『お月様にも引力は有るの?』
『ああ、お月様にも引力は有るよ。だけれど、お月様の引力は地球よりも小さいんだよ。』
『じぁ、地球とお月様が力比べをすると地球のほうが勝つよね。』
『そうだね、地球のほうが勝つね。』
『巨人さんとお月様では、どちらが勝つの?』
『お月様のほうが勝つよね。』
『巨人さんは弱いんだね。』
『そんな事ないよ、わしは生き物の中では一番強いんだよ。』
『ふぅ~ん。』
『巨人さんが僕の所に来ることができた時に、僕と力比べをしようよ。』
『ああ、いいよ。』

20センチの巨人(1)

2020-04-29 07:20:26 | 童話
『おはようございます。』
『ああ、おはよう。』
僕は毎日絵本の中の巨人とお話しをします。
だけれど、巨人は絵本の中から出ることができませんし、僕も絵本の中に入ることもできません。
だから、巨人とジャンケンをすると巨人の手がグーチョキパーと動きますが巨人と手をつなぐことはできません。

ある日、友達とゲームをしている時に、ひろげていた巨人の本の上にサイコロが転がって行きました。僕がサイコロを取ろうとした時にサイコロが本の中に入ってしまいました。
その時、本の中の巨人が
『お~い、サイコロが入ってきたよ。ほれっ。』
と言ってサイコロを本の中から投げ返してくれました。
『ありがとうございます。』
僕は巨人にお礼を言いましたが、なぜサイコロが本の中に入ることができたのか、なぜ巨人がサイコロを投げ返してくれることができたのか分かりません。

サイコロの代わりに消しゴムを本の上に置きましたが、消しゴムは本の中には入って行きませんでした。
『本の中の巨人さん、消しゴムを取ってみてよ。』
『そんな高い所にある消しゴムには手が届かないよ。』
『さっきはサイコロを投げ返してくれたでしょ。』
『サイコロはわしの手に落ちてきたから投げ返せたんだよ。』
『ふ~ん、そうなんだ。それでは、今度はど~お?』

僕は消しゴムを本の上にポトンと落としてみました。
『ああ、消しゴムが届いたよ。ほれっ。』
と言って消しゴムを投げ返してくれました。
『置くのではなく、ポンと落とすといいんだね。』

石ネズミ(6)

2020-04-28 10:09:43 | 童話
一時間くらいたった頃にみんな起きてきて、高い木に登って、みんなで集めた石や木が並べられている所をながめました
『わあ、僕達がお餅をついている絵になっているよ。』
『すごいね、みんなで力を合せると、こんな大きな絵が作れるんだ。』
『みんなでがんばったからね。』
『だけれど、どうしてこんな大きな絵が必要なの?』
『もうすぐ満月になって、月でウサギがお餅をつく時に、僕達も一緒にお餅をつこうと思うんだ。』
『わあ、すごいね、やろうよ。』
『やろうよ。』
『うん、やろうよ。』

そして、満月の夜に全部のネズミが集まって、蒸したもち米を臼に入れて、月のウサギがお餅をつき始めるのを待っていました。
その時、月からペッタンコと音が聞こえてきました。ネズミも大きな石の上にシーソーのように置かれて大きな木を杵にして、お餅をペッタンとつきました。
ウサギがペッタン。
ネズミがペッタン。
ウサギがペッタン。
ネズミがペッタン。
ウサギがペッタン。
ネズミがペッタン。
『わあ、楽しいなあ。』
『すごいなあ。』
『みんなで力を合せるとできるんだね。』
『そうだね、みんなで力を合せるとできるんだね。』

こうして、月のウサギとネズミは、朝になって月が見えなくなるまで一緒に餅つきをしていました。

おしまい

石ネズミ(5)

2020-04-27 07:32:22 | 童話
そして、何日もかかって根っこをかじって動かせるようにしました。
『やっと出来上がったね。これから動かすよ。』
『こんな大きいのが動くかなあ?』
『だいじょうぶだよ、動くよ。』
『根っこの下に木の棒を差し込んで、みんなでヨイショッと押すと動くよ。』
こうして、全員でヨイショッ、ヨイショッと押しました。すると、根っこは少し動いたので
『あっ、動くよ。』
『そうだね、動いたね。』
『よしっ、みんなでドンドン押して行くよ。』
『ヨイショッ、ヨイショッ。』
『ヨイショッ、ヨイショッ。』
『やあっ、たくさん動いたね。あと半分くらいだから、ガンバレ、ガンバレ。』
こうして、たくさんのネズミが力を合せて、お餅をつく場所へ臼を動かして行きました。

『ふぅ~、動かせたね。』
『そうだね、動かせたね。みんなすごいよね。』
『みんなお疲れ様、今日もお弁当が二個あるよ。』
『えっ、二個食べていいの? うれしいなあ。』
『今日はすごく重たかったから、お弁当を2個食べられるのはうれしいねぇ。』
『そうだね、もうお腹がペコペコだよ。』
『いただきま~す。』
『おいしいね。』
『そうだね、おいしいね。』
『あれっ、もう一個目のお弁当を食べてしまったの?』
『うん、これから二個目を食べるんだよ。』
『僕も二個目のお弁当を食べているよ。』
『ああ、おいしかった。』
『お昼ごはんが終ったので、今日も少し休憩しようか。』
『そうだね、午後も忙しいから、少し休憩しようね。』
『お腹がいっぱいだから、少しお昼寝をするね。』
『僕もお昼寝をする。』
そしてまた、みんなでグーグー、グーグー。

石ネズミ(4)

2020-04-26 07:22:34 | 童話
次の日、また河原にネズミがたくさん集まってきました。
『おはよう。』
『おはよう。』
『おはよう。』
『おはよう。』
『おはよう。』
『おはよう。』
『やあ、今日はたくさん来たね。これだけ多いとがんばれるね。』
今日は、昨日より大きい石を集めるから4匹から5匹で持たないと動かせないよ。
『小さい石は後にして、大きい石を集めるよ。』
『みんなで力を合せて、いっちにっ、いっちにっ。』
『少しずつ動いて来たね。』
『もう少しだよ。いっちにっ、いっちにっ。もう良いよ、ここで。』
『もうお昼になったからお弁当を食べようか。今日は大きな石を運んだから、お弁当は二個食べていいよ。』
『わあっ、うれしいなあ。』
『そうだね、おいしいお弁当を2個も食べられるなんて、うれしいなあ。』
お弁当を二個食べて、お腹がいっぱいになったので、またみんなでグーグー、グーグー。

一時間くらいたった頃に、今度はみんなで大きな木を運ぶことになりました。
その時、一匹のネズミがみんなに話しかけているネズミに質問をしました。
『ねえ、僕達は今、何を作っているの?』
『あれっ、知らなかったの? 餅つきを作っているんだよ。』
『ふぅ~ん、だけれど、どうやって餅つきができるの?』
『この大きな石の上に、この大きな木を乗せて、コットンコットンと動かしてお餅をつくんだよ。』
『だけれど、コットンコットンとつくためのお米を入れる所が無いよ。』
『あっ、いけない。忘れていたよ。どうしようか?』
『あそこに有る木の切り株がちょうど良いと思うよ。』
『そうだね。』
『時間がないので、根っこをかじって動かせるようにするのと、切り株の所をかじって、お餅をつけるようにするのを一緒にやるよ。』
『うん、分かった。』

こうして、たくさんのネズミの、半分が根っこをかじり始め、あとの半分のネズミで切り株がおわんの形になるようにかじり始めました。
おわんになる所をカリカリカリ、根っこの所をコリコリコリ。
カリカリカリ、コリコリコリ。
カリカリカリ、コリコリコリ。
カリコリカリコリ、カリコリカリコリカリコリ。
そして、かじってまあ~るくなったおわんの内側を丸い石でトントントントン、トントントントンとたたいてツルツルにしていきました。