手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

『ズレ』という言葉の認識のズレ

2008-07-05 19:16:46 | 治療についてのひとりごと
触診で感じる背骨のズレについて前々回の記事に書きましたが、背骨が『ズレる』という言葉は、お医者さんがレントゲンの説明をするときにもよく使われます。





「4番目の腰の骨が、ちょっとズレていますねぇ」という具合に。





多くは関節の変形や、椎間板がうすくなったなどの年齢的な変化のために背骨の並びが悪くなった結果、画面上ではそのようにみえているという意味で使われています。


年齢的な変化があるからといって、元気にすごしている人はたくさんいますから、これがすぐ大問題になるというわけではありません。


お医者さんも『ズレ』という言葉を、説明のための方便、言葉のあやとして使っているはずで、決して大ごととして話されているわけではないでしょう。


ほとんどの患者さんは、お医者さんの意図したところを理解され、受け止められます





ところが、性格的に非常にデリケートな方のなかには『ズレ』という言葉を重く受け止め、ショックを受けてしまう方もいらっしゃいます





私が経験したケースでは、


「背骨がズレる」
  
「脊髄を圧迫して脊髄損傷を起こす」
  
「いずれ車イスか寝たきりの生活になる」


というところまで、考えていた方もいらっしゃいました。





おそらく『ズレ』をいう言葉を聞いて、それまで見聞きしてきた情報と合わさり、頭の中で想像が膨らんだ結果そうなったのだろうと思います。


まわりからみると「そんなオーバーな」と思うのですが、実際に症状が出ていて悩んでいるご本人にとっては現実的な問題となっています。





その結果、例えば腰椎4番がズレているといわれた人なら、「とにかく4番を何とかして欲しい!!」「4番をもとに戻してっ!!」という訴えが執拗になり、腰椎4番に気持ちが集中して他が見えなくなってしまいます。


実際には、その方の感じている腰痛を治すためには、骨盤や脚の筋肉の状態を良くする必要があったとしても、はじめからそうすることはかえって不信感を持たれてしまうかもしれません。


こうなると、治療するにも身体の状態とは別に根気が必要になり、時間をかけて少しずつ視野が広がっていくように働きかけないといけません。





医療者が発する言葉の意味と、それを受け止める患者さんの認識のズレ。


頻繁にあることではないのですが、このような状況に出会うと言葉の難しさを改めて感じてしまいます。

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