広島には河川が多く、カッパ伝説が伝わっている。
広島駅前を流れる川の名を猿猴川(えんこうがわ)といい、そこに猿猴橋という橋がかかっているのだが、何を隠そう、この「猿猴」とは、河童(カッパ)のコトなのである。
(カテゴリー/食玩など:「大百怪」参照http://blog.goo.ne.jp/kinto1or8/e/a30253944d2884ea692c147bb4445e6e)
この猿猴伝説は、中国・四国・北九州地方と、西日本に幅広く伝わっているそうだ。
全国には500年以上、水神猿猴祭りが続いてるトコロもあるそうで、この猿猴川の河童「猿猴」は、縄文時代(!)から伝わるこの地の水神と考えられているとか・・。
縄文時代から・・とは驚きだが、これは、猿猴川沿いの猿猴像が設置してあるトコロにある、「河童猿猴伝説の地」という立て看板に書かれていた情報。
以前、このブログで紹介した時にはなかったものだ。
(カテゴリー/広島のオススメ!:「猿猴橋」参照http://blog.goo.ne.jp/kinto1or8/e/0e54016f7efcf00850e32d463d8d6d23)
ちなみに文化人類学者・民俗学者の小松和彦によると、この河童の起源とされるものは、大きく3つあるという。
(カテゴリー/歴史・民俗:「河童起源譚」参照http://blog.goo.ne.jp/kinto1or8/e/5ab3b821a83e719c6d64fc9e9fabbfeb)
要約すると、
河童=人形説(人形起源譚)
祇園の御子説
渡来妖怪説
・・の3つで、は特に九州を中心に伝えられているそうだ。
この立て看板によると、この猿猴は「インド発の猿神がルーツ」とする研究者もいるとのコトで、先の分類でいけば、にあたるだろう。 インド発祥の猿神といえば、おそらく、インド神話に出てくるハヌマーンのコト。 「猿猴」という名からストレートに連想すれば、まあ、納得・・。
実際、「体形は1メートル位で、猿に近い姿」をしており、「髪の毛や体毛は、茶色でもじゃもじゃしている」とあり、その特徴は、まさしく”猿”そのもので、河童のそれとは思えない。
一方で、河童は猿を苦手とする・・という伝承もある。
水木しげるの「日本妖怪大全」の「川猿」という妖怪の項には、こうある。
「~猿と河童は昔から仲が悪い。
九州のほうでは、よく猿まわしが川を渡るとき、猿と河童がけんかになることがあり、まぬけな猿は、尻子玉を河童に取られたりするらしいが、ふつうの猿はたいてい河童を捕まえてくるといわれる。
また一説には、河童は十二刻しか水にもぐっておれないが、猿は二十四刻もぐることができるといわれ、河童より猿が強いとされる。」
・・猿って、水に潜れるんだ・・?
秋田県など、地方によっては猿を河童の守り神とするトコロもあるそう。
そんな”犬猿の仲”の河童と猿だが、猿猴伝説においては、その名前や外見の特徴からも、両者が合体したようなイメージである。
先述の「川猿」の項に、「河童は猿から空想したのだろうといわれている。」・・とあり、この河童=猿(orその他の動物)説もいれれば、河童の起源は4つの説になるだろうか・・?
昔の人が、鬱蒼とした暗闇の中、水から出てきたカワウソや猿を見たら、確かに何やら水に棲む怪しげな妖怪・・と思うかもしれない・・。
まあ、夜でも街灯で明るい現代の市街地の川沿いでは、そうした伝承もなかなか生まれないよなぁ・・。
そもそも今、カワウソや猿を市内で見かけるコトが、まずない・・。
そう考えると、妖怪にもメルヘンというか、ファンタジーというか、ほのぼのとした牧歌的な詩情を感じるのである。
まあ、また広島に伝わる妖怪たちも、おいおい紹介していきたい。
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