一人想うこと :  想うままに… 気ままに… 日々徒然に…

『もう一人の自分』という小説を“けん あうる”のペンネームで出版しました。ぜひ読んでみてください。

地球温暖化防止策・・・?

2005-11-27 17:26:01 | 日記・エッセイ・コラム
 今日のご主人様はお休みのようだ。
何もする事がないのか、昼前にやっと起きてきた。
 僕がストーブの前でゴロゴロしていると、ベランダの窓を開け、ほやほやぶどうを摘んで食べている。
甘くて美味しそうだ。
そのうち裏庭に出て行った。
僕も暇なのでついて行った。
 庭に出ると風がないせいか、昔なつかしい匂いがしてきた。
そう、屋根の煙突から出る煙の匂いだ。
ご近所でもいまだに石炭や練炭、それに薪を焚いている家がある。
向かいの古民家に住むHさんと、その隣に住むSさんだ。
 ご主人様は、「なつかしいなあ」と思い、玄関先に周った。
あらためて向かいの家を見ると、両家の庭は同じようにすごかった。
木の枝が伸び放題に伸びている。
特にSさん宅は圧巻だ。そのうち家が見えなくなってしまうんではないかと思うほどだ。
そこに町内会の人が広報誌を持ってやって来た。
「お疲れ様です」と言うと、町内会の人はSさん宅に向かった。
すると、門の前で立ち止まり、中を覗き込んでいる。
そして一度首をかしげると、そのまま通り過ぎてしまった。
「あれっ?」と思ったが、ご主人様には何となく理由がわかっていた。
そこへSさんが家から出てきた。
「こんにちは」とご主人様は声をかけた。
「Sさん、そろそろ枝を切った方がいいんじゃないですか?」
と言うと、Sさんは不思議そうな顔をして言った。
「どこの家も皆道路に枝は出ているよ」
「いやいや道路に出ている枝ではなく、門から玄関までの木の枝ですよ。
あれじゃあ腰をかがめないと通れないよ。
それにさっきも町内会の人が来たけど、覗いただけでそのまま通り過ぎちゃった」
ご主人様がそう言うと、Sさんは何となくわかったようだ。
「空家だと思ったのかなあ」
そう言うと、Sさんなりの持論が出てきた。
「でもね、Yさん、あれはあれで通る時に雨が当たらなくて、なかなかいいんですよ。
それにですね、京都議定書の主旨にのっとり、二酸化炭素を減らし、地球温暖化防止のために・・・・」
としばらく延々と続き、最後に、
「ですから、隣のHさんとも相談しまして、せめて二人でできることと言えば緑を増やすこと。
そのためには庭の草木を切らず、伸び放題に伸ばしましょう。
と言うことになったのですよ」
最後まで聞いていたご主人様は納得した。
納得したと言っても、別に地球温暖化防止策に納得したわけではない。
SさんとHさん。この二人の性格にあらためて納得したのである。
「早い話が草刈や枝払いが面倒くさいだけだろう」
そう思ってブッと笑ってしまった。
 この通りには二人のユニークさは必要だ。
少なくともご主人様はそう思っている。
なんだかほんわかと潤滑油の役目をしているのだ。
 ご主人様は思っていた。
二人の地球温暖化防止策。
陰ながら応援してます・・・?


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市場の話 其の三

2005-11-26 22:24:02 | 日記・エッセイ・コラム
 最近のご主人様は市場に行くと、「いつもの年と違うな」と思うことがある。
11月も終わりだと言うのに、いまだに北海道近海でブリやワラサが揚がっている。
真イカ(スルメイカ)も安定した価格で入荷している。
その反面、本来なら水揚げが多くなるはずのタラ、スケソウダラ、ハタハタ等の冬の魚が少ない。
タラ類が少ないから、当然真ダチ、助ダチ、真ダラ子、助子の入荷も極わずかで相場も高い。
どうやら海水温が平年より高く、今の時期に寄って来るはずの冬の魚がなかなか寄って来ないらしい。
噂によると、越前クラゲもまだいるようだ。
 いつもの年ならサケが終わると、タラ、ハタハタが入ってくる。
魚が好きなご主人様はサケの時期は生筋子をバラしてイクラにし、醤油漬にして食している。
絶品だ。
サケが終わると真ダラの卵と白子、つまり真ダラ子と真ダチだ。
真ダラ子は煮付けやタラ子合えも良いが、バラして醤油漬も良い。
真ダチは湯引きしてポン酢も良いが、ご主人様の好物は天ぷらだ。
それも天つゆではなく、揚げたてを塩コショウでいただく。
酒の肴に最高だ。
ハタハタは抱卵したメスは煮付け。オスは塩焼きが良い。
こうやってその時期の魚を楽しみにしてきた。
だが今年はどうもおかしい。
気のせいか市場内も活気がなく、仲買も元気がない。
 車で市内を走ると雪が全くない。
たしかに朝晩は冷え込むのだが日中はそこそこ暖かく、二週間程前に初雪が降ったきり、雪らしい雪は降っていない。
家に帰り、庭のサクランボを見ると、いまだに葉が付いていた。
それも紅葉もせずに。
今年はこのまま葉が落ちそうだ。
 ひょっとすると地球温暖化という問題が、身近なところにも迫って来てるんじゃないか。
ご主人様は、ふとそう思ってしまった。


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市場の話 其の二

2005-11-23 21:23:48 | 日記・エッセイ・コラム
 最近の札幌は雪こそそんなに降らないが、朝晩はめっきりと寒くなってきた。
このように季節の変わり目、特に朝の冷え込みがきつい時には市場内でも事故や体調を崩す人が多い。
 一ヶ月ほど前のことだった。
ご主人様がいつものようにセリを見ていると、後ろの通路が騒がしく黒山の人だかりができていた。
何事かと、人をかき分けると誰か倒れているようだ。
前の人の頭の横から、力の抜けた両足だけが垣間見えた。
「モートラにはねられたのか?」
横にいた買出し人が言った。
モートラとはモータートラックの略で、荷物を運搬する軽車輌のことである。
市場内ではモートラやフォークリフトによる事故が多い。
ご主人様も最初はそう思った。
だが、様子が違うようだ。
モートラとフォークリフトは人だかりの周りで止まっている。
ご主人様は背伸びをしてもう一度見てみた。
すると、仲買人の一人が携帯で電話をし、もう一人が必死に人工マッサージをしている。
どうやら心臓発作のようだ。
救急の指示に従ってマッサージをしているのだろう。
ご主人様は気がきでなかった。
でも、ご主人様にできることは何もない。
ひたすら救急車が来るのを待つしかなかった。
「まだ来ないか?」
そう思って出口の方に目をやると、セリ場では何事もなかったかのようにセリは続いていた。
威勢のいいセリ人の掛け声と共に、次々と魚がセリ落とされて行く。
ご主人様の目には、日常的な風景と非日常的な風景が重なり、不思議な映像となって映っていた。
「こういう状態でもセリは続くのか」
そう思った時、やっと救急車が来た。
 翌日、仲買人に訊くと、倒れたのは41歳のバイヤーという。
心臓が20分も止まっていたため、機械で肉体を生かしているが、一週間が限度だろうと言うことだ。
41歳というと働き盛り。家庭があれば可愛い子供達もいるだろうに。
人ごとながらご主人様は気になってしょうがなかった。
 一週間後、市場から戻って来たご主人様は、事務所で同僚からビックリするようなニュースを聞いた。
「あの心臓発作で倒れたバイヤー。生き返ったようですよ。
まだ脳に腫れがあるようですが意識もあり、後遺症もほとんどないと言うことらしいです」
「ほんとうか?」
ご主人様はビックリして立ち上がった。
「ええ、医者も奇跡だと言ってるそうです」
「よかった。本当に」
ご主人様は人ごとながら、安堵の気持ちでいっぱいだった。

 さらに一週間たったある日。
ご主人様はいつものように事務所から市場の立体駐車場に歩いて向かっていた。
すると、パトカーが止まっている。
「事故でもあったのか?」
そう思ったが別に気にもせず、立体駐車場のトイレに寄ってから車で出かけていった。
 翌日、市場から戻ると同僚が、「昨日、立体駐車場のトイレで人が血を吐いて死んでいたそうですよ」と言った。
それを聞いたご主人様はあわてた。
「ちょ、ちょっとまってよ。おれ昨日あそこのトイレで○○してったぞ」
それを聞いた同僚が言った。
「時間的にいって、事故処理が終わった後じゃないですか」
「うわー、もうあそこのトイレは使いたくないな」
ご主人様が言うと、後輩が言った。
「あそこのトイレは夜怖いんですよね。こうもやなことが続くと御祓いしたほうがいいんじゃないすか?」
この時、ご主人様は何かいやーな予感がしていた。

 三日後、ご主人様は何か落ち着かない気分で市場から戻って来た。
事務所のドアを開けるなり同僚が青ざめた顔で言ってきた。
「センター長のKさんが倒れた」
「倒れた? 倒れたって、どういう症状だ」
「意識ははっきりしてるが口からよだれを垂らし、全身の力が抜けている」
聞いたご主人様にはすぐにわかった。
脳梗塞だ。
「それでどうした」
「ちょっと前に救急車で運ばれていった」
 センター長はご主人様の先輩で、入社したての頃はよく面倒を見てもらっていた。
ちょっと前の人事異動で長年いた外商から来たばかりだった。
極端に朝の早い出勤時間。慣れない仕事など環境の変化が大きなストレスとなっていたのは、ご主人様の目にも明らかだった。
 翌日、センター長の奥さんから連絡があり、検査の結果、やはり軽い脳梗塞だと言う。
意識もはっきりしているし、リハビリを続ければ早いうちに職場復帰できるとのことだった。
ご主人様は一安心した。
でも人ごとではない。自分も気をつけなければ。
けど、気をつけるって、どうすればいいんだ?
摂生するしかないか。
そう思って今日も朝早くから、奥様に見送られて元気に出かけていった。


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市場の話 其の一

2005-11-22 21:31:43 | 日記・エッセイ・コラム
 ご主人様は仕事柄、朝早くから市場に顔を出す。
市場といっても色々な小売店が入っている普通の市場ではない。
ご主人様が行くのは札幌市中央卸売市場。それも水産棟だ。
最近、新しく建て直され、衛生面含めかなり快適になったが、昔はひどいものだった。
特にトイレは劣悪。
一応水洗だったのだが汚れもひどく、臭いもまたすごい。
目が染みて開けられない時があったほどだ。
大をしたくてもトイレの数が少ないのでいつも満杯。
仕方なくご主人様は市場内のトイレを使わず、場外市場のトイレを使っていたほどだ。
それが建て直された水産棟では一変した。
市場内の衛生面が向上したのは当然だが、ご主人様が何より喜んだのはトイレが快適になったことだ。
洋式になったのは当然だが、数も前の倍以上に増え、中にはウオッシュレット付きの便座もある。
 卸売市場に来る人は当然の如く朝が早い。
早い人は朝三時には出社している。
そうすると人間の生理上朝6時から7時半位の間はトイレが込む。
それも大の方が。
しかし、以前のようなことはなくなった。
トイレの数が増えたので順番待ちをすることもなく、場外市場まで行って用を足す事もない。
それよりも何よりも、一番驚いたのが臭いが全くしない。
前の人が個室から出てきて、すぐに入っても残香というものが全くないのだ。
個室に入り、周りを見渡しても脱臭装置らしきものは見当たらない。
にもかかわらず、本当に臭いがしない。
これは快適だ。
 ご主人様は快適なトイレのため、ついつい長居をしてしまう時がある。
いや、これはご主人様だけではないようだ。
どの個室のドアも、閉まっている時間は確かに以前より長くなっているようだ。
「皆快適に用を足しているんだろう」と思った時だった。
以前にはなかった問題があることに気がついた。
携帯電話である。
 市場に来る人は皆携帯電話を持っている。
もっともこれがないと仕事にならない。
だが、これが用を足している時には結構厄介者なのだ。
新しい市場のトイレは防音もしっかりしているせいか、セリ人の掛け声やモータートラック、フォークリフトのエンジン音などは一切聞こえない。
静粛そのものだ。
そのため、隣の個室で電話をしていると、相手の話し声まで聞こえてしまう。
今日もご主人様が個室で用を足していると、隣の個室で携帯電話が鳴った。
「もしもし、○○さんですか?」
「はい、○○です」
「今日の平目、いくらした?」
「平目? ごめん、まだ見てないや」
「見てないって、もうセリ始まってるぞ。今どこにいるんだ?」
「どこって、ちょっと・・・」
その時、隣の個室で用を足していたご主人様は思いっきり水を流してしまった。
「ジャー!!」
この音が聞こえたのか相手の人は、しばしの沈黙の後言った。
「あっ・・・、ごめん。悪いけど、し終わったらすぐ相場見に行ってよ。こっちも急いでいるから」
そう言って電話が切れた。
ご主人様は、「悪いことをしたなあ」と思っていた。
携帯電話がなければ、本当に快適なトイレなのに。
 翌日、いつもと同じ時間にご主人様はトイレの個室で用を足していた。
市場内の喧騒から逃れ、ひと時の休息であった。
「やれやれ」と思ったその時、ご主人様の携帯が鳴った。
「はい、Yです」
「あ、Yさん? 忙しいとこごめん。紅鮭キロ○○○円だけど、どう?」
「キロ○○○以下だと使ってもいいよ」
「ん・・・。現物見て話そうよ。今どこにいるの?」
「今? ん・・・」
その時である。
ご主人様が口ごもっている間に、隣の個室から思いっきりよく水の流れる音がしてきた。


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2005-11-20 20:28:11 | 日記・エッセイ・コラム
kuruma-3
 ご主人様の車は、かれこれ15年にもなる結構なご老体だ。
しかし、ご主人様は一向に買い換える気はないようだ。
長年無茶な使い方にも耐えてきた。かなり愛着があるらしい。
でも、さすがに最近は故障が多くなってきた。
 ついこの前も、奥様が買い物に行こうとした時、エンジンルームの下から水が漏れているのに気がついた。
ご主人様を呼んでボンネットを開けると、クーラントが噴いた痕がある。
エンジンを回すとクーラントが「ザーザー」と漏れ出した。
「まずいな、これは」
 翌日、仕事の合間を見て、工場に車を持っていった。
工場といってもディーラーの整備工場ではない。
ご主人様の友人、H社長がやっている整備工場だ。
 車を持って行くと、すぐにいつものメカニックがやって来た。
「どうしました?」
「ラジエターがいかれたみたいだ。クーラントが噴出している」
ご主人様がそう言うと、メカニックはボンネットを開け、故障箇所を確認した。
そして、ご主人様に言った。
「2時間待ってもらえれば、すぐに直しますよ」
「エッ?」と思った。
素人のご主人様にも事の重体さはわかっていた。
ラジエター交換なら1~2日入院かな? と。
それが2時間でやると言う。
半信半疑ながらすぐにやってくれ、と頼んだ。
 待つこと2時間。
本当に2時間でラジエター交換をやってのけた。
持つべきものは信頼できる整備工場とメカニックだ。

 ご主人様の車の大きな故障はこれだけではない。
去年の今頃もあった。
走っている途中に5分おきにエンジンが止まる。
再始動はできるのだが、また5分後にエンジンが止まる。
この時もすぐにH社長の整備工場に車を持っていった。
原因追求に時間がかかり1週間ほど入院した。
エンジンの噴射ポンプではないか。と薄々わかったところでH社長の茶目っ気がでてしまった。
「餅は餅屋だからディーラーに出してみよう」
それを聞いたご主人様は言った。
「ディーラーで直せるわけないよ」
しかし、H社長はニヤニヤしながら多少取引のある向かいのT系列のディラーに車を出してしまった。
 待つこと1週間。
帰って来た答えは、「エンジンテストの結果、どこも問題ありません」
とのことだった。
 ご主人様は車を引き取り、走り出した。
すると、5分後にエンジンは止まった。
すぐにH社長の工場に行き、ご主人様はまくし立てた。
「だから無理だって言ったろ。ディーラーで直せるわけないよ。もう!!」
H社長は頭を掻きながらニヤッと笑い、一言。
「Yさん、1週間時間くれ」
 それからまた1週間待った。
原因はやはり噴射ポンプで、交換すると完全に直った。
この時ほどご主人様のディーラー不信が募ったことはなかった。
でも、考えてみると、ディーラーというのは車を売るのが商売である。
古い車を修理し、長く乗っていられると商売上がったりだ。
そのためか暗に車を買い換えるように勧めてくる。
ご主人様の周りでも、年式の古い車の修理をディーラーに頼むと、高額の修理費を見積もられたり、修理不能と暗に言われた人たちがいる。
古く、愛着のある車を乗り続けるには、やはりH社長のような工場や優秀なメカニックの存在が不可欠だ。
彼らがいる限り、ご主人様の車はまだまだ走り続ける。


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聖マーガレット教会

2005-11-14 21:09:51 | 日記・エッセイ・コラム
 旭山動物園の帰り、娘に誘われるまま深川市音江町にある聖マーガレット教会に向かった。
教会に隣接しているレストランで食事をしたいということだ。
日がとっぷりと暮れている中、看板を頼りに車を走らせた。
しかし、最初の看板から1.5kmという表示だけで、その後は全くわからない。
真っ暗な農道をひたすら走り続けた。
時折ヘッドライトに照らされる道路脇の溜池が不気味に光っている。
どうやら結構昇っているらしいが、真っ暗闇のためどこを走っているのか方向感覚がまったくわからない。
「本当にこんな山奥に教会なんかあるのか?」
そう思ったときだった。
漆黒の森の中から、忽然とその教会は現れた。
クリスマスのイルミネーションに飾られ、厳かな雰囲気を醸し出している正統派英国スタイルの教会だった。
 四人はしばらく圧倒されそうな外観を眺めた後、レストランに入っていった。
案内板を見ると、数組の結婚式があったようだ。
席につくと窓には深川の夜景が綺麗に映っていた。
雰囲気もロケーションも抜群だった。
 食事をしながら、娘が彼氏に何か言っている。
「ここもいいよね」
小耳にはさんだご主人様は、「ん?」といぶしげな顔をしていた。
「こいつら何を考えているんだ?」
そう思った時、彼氏が訊いてきた。
「おじさんたちはどこで結婚式をしたんですか?」
奥様が答えた。
「本当はニセコの教会でしたかったんだけど、仕事関係の人たちを呼ばなければならなかったので、結局ホテルでしたのよ」
「フーン、そうなんですか」
彼氏は食べながらうなずいていた。
「こいつら何を言いたいんだ? いや、何を言ってほしいんだ?」
ご主人様がそう思った時、奥様が言った。
「あなた達は自分達がしたいところでおやりなさい」
この言葉を聞いた時、ご主人様はたいそうあせっていた。
「ちょ、ちょっとまてよ。だめとは言ってないが、まだ許してはいねーぞ。それに、おまえらまだ学生だろ」
しかし、ご主人様以外の三人は当たり前のように話していた。
 食事が終わり、会計をしていると、奥の部屋で新婚カップルが友人達と談笑していた。
花嫁は本当に綺麗で可愛かった。
「いつかはああなるのか」
ご主人様は心の中でつぶやいた。
 帰りの車の中、ご主人様は何年か先のことを考えていた。
そして、ちょっとだけの寂しさの中、ほんわかとした嬉しさを感じていた。


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僕の将来

2005-11-13 21:10:16 | 日記・エッセイ・コラム
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 ご主人様と奥様は、娘と彼氏を連れて旭川の旭山動物園に行った。
ここは地方動物園ながら、動物本来の生態や行動を見せる事で一躍有名になった動物園だ。
開園の10:30前には着いたのだが、門の前にはすでに行列ができていた。
開園と同時に皆人気のあるところに走り出す。
ご主人様達は、まず白熊館に行った。
愛嬌たっぷりの白熊が思いっきりダイブして迎えてくれた。
聞いていた通り、動物の見せ方は最高だ。
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 ペンギン館では頭の上や横をペンギンが空中を飛ぶように泳いで行く。
アザラシ館では大きなチューブの中を上に行ったり、下に行ったり。
観客は皆釘付けになっていた。
でも思った。
ここの動物園では、見られているのは動物ではなく、人間達ではないのか?
動物達の目を見ていると、ふとそんな錯覚に陥った。
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 その後、猛獣館に行くとライオンの周りは人でいっぱいだったが、ご主人様は別の猛獣に会いに行った。
ご主人様が動物園に来たかったもう一つの理由は彼に会いたかったからだ。
その彼は人気の無い獣舎に一人たたずんでいた。
時折パラつく雪も気にせず、ジッと人の動きを見ている。
「おまえら、何がそんなに楽しいんだ?」
とでも言いたげな目をしている。
 獣舎の中をうろついたり、人間に媚を売る動物が多い中、黒豹は別だ。
いつもジッとたたずみ、こちらを見ている。
「こんなところに閉じ込められてもオレはオレだ。おまえらとは関係ない」
そんな威厳めいたものさえも感じられる。
 ご主人様は黒豹が大好きだ。
時々、僕を見て、
「大きくなったら黒豹のようになれ」
と言う事があるが、そんなのは土台無理な話。
僕は僕であり、どうやっても猫だ。
絶対に黒豹なんかにはなれっこない。
僕は・・・
黒猫だ。


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2005-11-11 21:58:12 | 日記・エッセイ・コラム
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 奥様は朝からせっせとご主人様の靴を磨いている。
でも、よく見ると今朝ご主人様が履いて行った靴と全く同じデザインの靴だ。
「どういうことだ?」と思ってそばによると、奥様は靴の底を見せてくれた。
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「ハハーン、冬靴だあ~」
そう、奥様はいつ雪が積もってもいいように、冬靴を磨いていたのだ。
 僕は下駄箱の中を覗いて見た。
すると他にも同じデザインの靴がある。
全てリーガルのウイングチップだ。
奥様に訊くと、夏用と冬用それぞれ2足づつ、計4足あるそうだ。
ご主人様は学生の時からこの年になるまで、リーガルのウイングチップしか履いたことがないそうだ。
でも、ガチガチのトラッドというほどでもないらしい。
どうやら理由は別にあるようだ。
靴屋に行って、「あれでもない、これでもない」と言って、選んだり履いたりするのが面倒くさいらしい。
リーガルのウイングチップなら、何十年も昔からデザインとサイズは全くと言っていいほど変わっていない。
だから別にご主人様が行かなくても、奥様が代わりに買って来れる。
これが一番の理由らしい。
 ご主人様は衣服や靴には本当に無頓着だ。
放っておくと、とんでもない格好をしている時がある。
奥様が帰ってきて、あわてて着替えを出している。
そんなこともしばしばだ。
なぜ奥様が着替えを出すかって?
恥ずかしい話だが、いまだにご主人様は自分の下着や靴下が箪笥のどこにあるのかさえわかっていない。
 そんなご主人様の靴を磨いている奥様の背中から、「本当に世話がやけるんだから」という声が聞こえたような気がした。


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初雪

2005-11-09 21:38:50 | 日記・エッセイ・コラム
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 今日、例年より二週間程遅れて、札幌に初雪が降った。
昨日まで、11月と言うのにポカポカ陽気が続いていたが、一転して今朝は零度近くまで冷え込んでいた。
ご主人様が会社に行く時、僕も散歩に行こうとしたが、玄関を開けるなりその気は失せてしまった。
奥様にも、「今日はやめなさい」と言われ、仕方なく僕は家の中で一日中ゴロゴロとしていた。
時折、窓から外を見ていると、パラパラと雪が降ってくる。
積もるほどの量ではない。
道路上の雪はすぐ解けていく。
でも、道行く人々は皆寒そうだ。
厚手のコートをはおり、帽子をかぶって手袋をはめている。
hatuyuki2-3
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 夕方、ご主人様が帰ってくる頃、家の周りを見渡した。
すると周りの木々は、ほんわかと雪の綿帽子をかぶっていた。
さくらんぼも、白樺も、ぶどうの木も。
hatuyuki4-3
そして、ほとんど葉の落ちた楓の木にも。
 でも、この雪はすぐに消えるだろう。
そして、ほんの少しだけまた暖かくなる。
そして、また冷え込み雪が降る。
これを繰り返して根雪となり、もうすぐ本格的な冬の到来だ。


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冬支度

2005-11-06 20:10:34 | 日記・エッセイ・コラム
 今日のご主人様は休みにもかかわらず、朝から大忙しだ。
一気に冬支度をするらしい。
 まずは車のタイヤ交換。
夏タイヤから冬用のスタッドレスに交換した。
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それが終わると表のヒバの冬囲い。
一服した後、裏庭の草木の冬囲いと、カヌーをブルーシートで包んだ。
庭のど真ん中に生い茂っていた山吹を縄で縛ると、やけに庭が広く感じた。
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 木の葉がパラパラと落ちてくる。
ご主人様は玄関先の落葉を掃きだした。
掃いても掃いてもきりがない。
たまる一方だ。
 ご主人様に触発されたのか、向かいのHさんも出てきて落ち葉を掃きだした。
めずらしい。
本当にめずらしい。
めったにないことだ。
僕は唖然として見ていた。
そこへ外出していた奥様が帰って来た。
掃き掃除をしているHさんを見るなり、
「Hさんやめてよ。
Hさんがそんなことしてると嵐が来るわよ!!」
 ご主人様もブッと笑っていた。
すると、Hさんは何を思ったか掃き貯めた落葉をいきなり自分ちの庭に投げ捨てたのだ。
ご主人様と奥様は一時唖然としていたが、この辺の行為がなんともHさんらしい。
ゴミ袋に入れるぐらいなら、自分ちの庭に捨てた方が良いと考えたのだろう。
いずれ腐って腐葉土になるのだから。
fuyujitaku3-3
 ご主人様と奥様がHさんの行為を見て笑っている間に、僕はまた裏庭に行った。
ほとんどの花は咲き終わっていたが、まだ元気に咲き誇っているものもあった。
そして、先代の黒猫、ジジのお墓に植わっている菊も元気に咲いていた。
fuyujitaku4-3
fuyujitaku5-3
 僕は咲き終わったバラの木にそっと鼻を近づけた。
まだほんのりと甘い匂いがした。
でも、聞こえる。
ヒタヒタと・・・
遠くから・・・
冬の足音が。


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