許さないと思った。
郷の両指先からふわりと朱色の煙が立ち昇る。
へらへらと笑いながら洸輝を囲んでいた男達は、急激に自分達の
周辺が熱くなっていくのに気づいた。本能的に危機を感じた男達
の間に戦慄が走る。なんだってんだよ。歪んだ鉄パイプを持った男が
洸輝の背中に振り下ろしながら逃げようとしたが洸輝に当たる前に
それは男の手から落ちた。悲鳴。男の腕から噴出した炎はそのまま
袖口を伝って背中にまわり、あっという間に男の全身を包んだ。
他の男達は目を見開き、慌てて鉄パイプの男の炎を消そうとする。
炎は消えるどころか意志を持つ生き物のように別の男の袖口から
足元から伝い燃え広がった。
瞬く間に男達は黒い塊となり、ぶすぶすと煙をあげる。
「・・・洸輝!」
それらを跨ぐように郷は洸輝の元へと駆け寄る。
打ちすえられた跡が幾重にも残る背中。ゆっくりと仰向けにし、
出来るだけ負担をかけないように静かに洸輝を抱きしめる。
「・・・・・・郷?」
「うん、そう」
遅れてゴメンな。郷は泣きそうな顔になっていた。
鼻の奥がつんとして言葉が出ない。
こんなときにこそ、いつも洸輝が言ってくれるような安心できる
気の利いた言葉の一つでもかけなければと思うのに。
「・・・焦げ臭い。お前・・・力使った?」
郷の胸に抱きしめられたまま、洸輝は首だけを動かしてうつろな目
で郷を上目遣いで見上げる。頬に道路で擦ったらしい赤い線のような傷がある。
洸輝に禁じられていたのに。人に対してその力を使うこと。
「・・・ゴメンな約束守れんで。でも洸輝が・・・」
郷よりも幾分か細い指先が郷の肩越しに向けられ何かを指し示す。
「・・・まだ後ろに・・・・・・一人残ってる・・・」
振り向いた郷の目に焦げた死体から黒い液体が流れ吐瀉物の腐臭を
撒き散らしながら人型となりゆっくりと立ち上がるのが映った。
郷の両指先からふわりと朱色の煙が立ち昇る。
へらへらと笑いながら洸輝を囲んでいた男達は、急激に自分達の
周辺が熱くなっていくのに気づいた。本能的に危機を感じた男達
の間に戦慄が走る。なんだってんだよ。歪んだ鉄パイプを持った男が
洸輝の背中に振り下ろしながら逃げようとしたが洸輝に当たる前に
それは男の手から落ちた。悲鳴。男の腕から噴出した炎はそのまま
袖口を伝って背中にまわり、あっという間に男の全身を包んだ。
他の男達は目を見開き、慌てて鉄パイプの男の炎を消そうとする。
炎は消えるどころか意志を持つ生き物のように別の男の袖口から
足元から伝い燃え広がった。
瞬く間に男達は黒い塊となり、ぶすぶすと煙をあげる。
「・・・洸輝!」
それらを跨ぐように郷は洸輝の元へと駆け寄る。
打ちすえられた跡が幾重にも残る背中。ゆっくりと仰向けにし、
出来るだけ負担をかけないように静かに洸輝を抱きしめる。
「・・・・・・郷?」
「うん、そう」
遅れてゴメンな。郷は泣きそうな顔になっていた。
鼻の奥がつんとして言葉が出ない。
こんなときにこそ、いつも洸輝が言ってくれるような安心できる
気の利いた言葉の一つでもかけなければと思うのに。
「・・・焦げ臭い。お前・・・力使った?」
郷の胸に抱きしめられたまま、洸輝は首だけを動かしてうつろな目
で郷を上目遣いで見上げる。頬に道路で擦ったらしい赤い線のような傷がある。
洸輝に禁じられていたのに。人に対してその力を使うこと。
「・・・ゴメンな約束守れんで。でも洸輝が・・・」
郷よりも幾分か細い指先が郷の肩越しに向けられ何かを指し示す。
「・・・まだ後ろに・・・・・・一人残ってる・・・」
振り向いた郷の目に焦げた死体から黒い液体が流れ吐瀉物の腐臭を
撒き散らしながら人型となりゆっくりと立ち上がるのが映った。
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