たんなるエスノグラファーの日記

エスノグラフィーをつうじて、ふたたび、人間探究の森へと分け入るために

アルディよ、ルーシーよ、トゥルカナ・ボーイよ

2009年11月21日 21時37分49秒 | 起源人類学

9月以来まったく何も用事のない初めての週末。快晴(心のうちは、そんなに晴れ晴れとしていないのだが・・・)。思い立って、エチオピアで発見された、440万年前の猿人の女性アルディの頭骨と骨盤のレプリカが公開されていると聞いていたので、国立科学博物館に出かけてみた。パンフレットには、以下のように書かれていた。

「有名なアファール猿人の”ルーシー”と同じように、”アルディ”はある一人の個体の頭骨や歯、骨盤、手足などがそろった化石です。身長は約120センチ、体重は約50キロで、華奢な頭骨と小さな犬歯から、女性だったと考えられます。頭や歯、体の骨の分析から、”アルディ”たちは、チンパンジーやゴリラなど現生の類人猿とはだいぶ違った暮らしをしていたことが推測されています。オスでも犬歯が小さく、地上を直立二足歩行するなど、人類的な特徴もありますが、脳容量は少なく、樹上も生活空間として利用していたことがうかがわれるなど、より原始的な面もあったようです。」

より詳しいことは、以下のウェブページに載っている。

http://www.kahaku.go.jp/userguide/hotnews/theme.php?id=0001255574730972&p=1

アルディピテクスでは、男性の犬歯が大きくない。そのことから,配偶相手をめぐる諍いは少なかったことが推測され、
一夫一婦の関係が成立していたかもしれないという。アルディに配偶者がいたかどうかは分からないものの、食糧を持ち帰る夫の帰りを樹上で楽しみに待っていたかもしれないというロマンチックな想像もなされている。じつに興味深い。

アルディピテクスは、樹上で暮らし、ときには、二足歩行をしていたと考えられているようだが、もう少し時代を下って、いまから約350万年前のアファール猿人になると、
ルーシーの二足歩行の跡がくっきりと残されている。ルーシーの骨盤の形状や足の長さから、アファール猿人は、ホモサピエンスのような歩き方ではなく、不安定に、足を引きずりながら二足歩行していたと考えられているようである。

国立科学博物館には、ルーシーの復元模型が展示されていた。思いのほか小さかった。小さなおばさんという印象である。その隣には、約150万年前の原人であるトゥルカナ・ボーイの復元模型が置かれていた。トゥルカナ・ボーイは、身長160センチの、8~12歳の少年であったとされる。こちらのほうは、われわれとあまり変わらないような感じがした
(写真)。

それらは復元模型ではあるが、人間の古のリアリティーへの想像力が一気にぐ~んと広がるような気がする。同時代に空間を共有しているような感覚とでもいうのだろうか、彼らと意思疎通が可能になったような。不思議な異空間へと迷い込んだような気がした。ところで、
猿人から原人へ進化する過程で、彼らは、どのように道具を工夫しながら、食を探し、どのように眠り、暮らしていたのか。さらには、世界の成り立ちをこのようなものとして捉えていたのか。狩猟をうまく行えるようになるのは、そのずっとずっと先のことであったにちがいない。


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