神奈川絵美の「えみごのみ」

唐津からの手紙

以前にも書いたことがあるが、
私は展示会などで作家ものをいただいたとき、
ご本人がその場にいらした場合は、必ず
作品を最初に纏ったときの写真をお送りするようにしている。

唐津市在住の松尾鏡子先生とは、
約10年前に銀座 和光で初めてお会いし、
ご縁あって蒲公英色のロートンの着物をいただいた。


(2010年に撮った写真)

私が持っている先生の着物は、これしかない。
でも、とても愛着があるし、先生ご自身は滅多に上京せず
そう簡単にはお会いできないという思いもあって、
私はこの着物を着るたび、写真を撮ってはお送りしていた。

-佐賀の方は、地震はどうだったのだろうか-
熊本地震の際、松尾先生のことも気にかかっていた。
地震発生から10日くらい経って、
ご状況伺いの手紙を書いた。
昨年いただいた古帛紗を、衿元にしのばせたお茶会での写真を
同封して。

そしたら先週、5月半ばにお返事が。


原稿用紙3枚にびっしりと、
地震のときは家が壊れるかと思うくらい揺れたこと
四月初めに手を怪我してしまい、今はのんびり過ごしていること
唐津焼きの作家さんの奥様が、松尾先生の着物のファンで
雑誌掲載(写真)された折、着物が木村孝先生の目に留まり、
奥様経由で励ましの言葉をいただいたこと、などの近況が。

それとともに


-いつもお心遣いありがとうございます-
良かったら使ってください、と、懐紙入れが入っていた。
もちろん、先生の作品だ。
干支や梅、桜などの可愛い透かしが入ったお懐紙も。

地震でたいへんなのは、先生の方なのに、
私はただ、写真を送り続けただけなのに…
お心遣いを感謝すべきなのは、私の方。


昨年いただいた古帛紗と、同じ手法の織。
先生の優しさが、身に沁みる。

松尾先生は(以前にも書いたけれど)
元来、とてもシャイな方で、
…と、私は、後になって和光の店員さんから打明けられたのだけど、
私も基本シャイだからだろうか、
初対面のときから、お互いの心地よい距離感が
暗黙のうちに何となくわかり、
自然に話が弾んだことをよく覚えている。
滅多に応じないというツーショット写真も快諾くださって、
それには和光の店員さんも驚いていた。

あれから10年、
健康状態があまり良いとはいえない先生を、折にふれ思い出し
手紙を書いて、
そのうちお姉さまやお兄さまとも仲良くなって、
ふんわりした心の交流が続いていることは、とても嬉しいし、
私にとっての心の糧になっているとすら思うことがある。

御礼状は紫陽花柄の便箋にしようかな。
好きな人を想う気持ちが、季節をまた一つ、進める。

コメント一覧

神奈川絵美
冬林檎さんへ
こんにちは
本当に、松尾先生ご無事で良かったです。

私など、周りの目に映るほどには
フットワークが軽いと自分では思っていないんですよー。
ネジの切れたからくり人形みたいに
なっていることもしばしばあり(苦笑)。

ただ、雑誌の編集者さんには鍛えられたなと
思うことはあり
「会いたい人に、会いに行く」
「知らないことを知るって、楽しいこと」
その人がよく口にしている言葉を思い出して
自分を奮い立たせているようなところはあります

ご友人が和光にお勤めなのですね。
そう広くなくて、落ち着いて買い物できるので
好きです。
ここのホールで開催される展示会は、
私好みのものが多く、よく足を運んでいます。
冬林檎
松尾先生と
えみさまの
心温まるお話、ありがとうございます。

やはり
思う・・・だけではダメなんですね。
時間を置かずに即、実行なんですよね。

お忙しいのに実践していらっしゃる
えみさまの、ますますファンになりました。

松尾先生との出会いも銀座の和光とか。
私の小学校の同級生が和光に勤務をしておりまして・・・
その昔、おのぼりさんの私は和光の催事場のトイレのお洒落さに感激して
帰って来たことが有りました、笑。

(人との繋がりって財産ですね、
松尾先生が御無事で何よりでした。)
神奈川絵美
とうこさんへ
こんにちは お疲れ様です…
理不尽なこと、世の中にはたくさんありますよね…。
そんなとき、こうしたエピソードもそうですが、
シンプルに、ただただ好きなもの、良いと思うものに
私も助けられます。
とうこ
とてもとても素敵なお話
ほっこり、心に沁みました。
少し、せちがらい思いを、この数日に体験したので、なおさらでしょうか。
神奈川絵美
朋百香さんへ
こんにちは
松尾先生のお着物は肌触りがとても良いです
この着物はふわふわ、ガーゼみたい。

この頃は、“情の深さ”について思うことがよくあります。
表面的なそつのなさとか、人当たりの良さでは
はかれないし、こちらもそれなりの、
人をおもんばかる気持ちが育っていないと、
その人の情の深さに気付けないな、と。

人間関係があまり器用とはいえなくても
(やや失礼な物言いですが)
静かな愛情を胸に秘めている
情の深い方って、多いような気がします。
朋百香
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
作家さんとの交流、いいですね~。繋がっているとその着物がさらに生きてくる感じ。タンポポ色のお着物、暖かくてほんわり陽だまりのようで絵美さんによくお似合いです。いつも思うのですが、作品って作った方を投影しますよね。松尾先生って本当に優しい方なんですね。そして着ていて気持ちが良さそう。
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