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瀬尾佳美の暇つぶし日記

桐野夏生

2006年11月26日 | 乱読日記
最近話題の桐野夏生です。この人かなり筆に力のある作家ですね。

OUT,柔らかな頬,グロテスク・・と6冊読みました。古いほうから並んでいるんですが、この順に面白いような気がして、その点ちょっと気になっています。

「OUT」はものすごい迫力で、これ、本当に女性が書いたのだろうか、と思うくらい。取材も念入りになされており、全体としてとんでもなく非日常なのに、細部がやたらとリアルな日常になっていて、あっという間に独特の世界に引き込まれます。仕事も人生も中途半端な主婦邦子、姑の面倒を見、仕事もきっちりこなしてコマのように働く師匠ことヨシエ。いかにもいそうなキャラです。特に佐竹が邦子を評して、「大して仕事もできないくせに、事務所の備品を持って帰るような奴」と言っていますが、ありがちで笑えました。主人公の雅子はやたらカッコいいです。殺人者の佐竹もなんかカッコいい。それもありきたりなカッコよさではなく、強烈な個性があって魅せられます。

「柔らかな頬」は、ふとした日常から普通ありえないような非日常に脱出する、という構図はOUTにも共通するものなのかもしれませんが、いまいち細部がリアルでない。男が愛人との密会のために北海道に別荘を買うというのも(不便だよ)、そこに、妻と愛人一家を招待するというのもありえない。細部が不自然だと、全部作り物、という感じがして興ざめするんですね。主人公の女も、顔がきれいというだけで、頭も悪くあきらめも悪い。あんたの子供は死んでるよ、と叫びたくなるような感じ。ちょっと苛つきます。まあ、文章がうまいから、読めないことはないですが。。。

「グロテスク」は本当にグロテスク。主人公が実にいやな奴で(笑)。もちろんいやな奴に描かれているんですから、それでいいのでしょうけれど。なんで私がこんないやな奴に付き合わなければならんのか、と不快になるような人物です。主人公以上にキモイのが和恵。和恵ってなまえ、たしかOUTでも端役の下らない人物で登場したような・・・桐野は和恵という女に昔虐められたんだな(笑)。人物描写は上手いのかもしれませんが、別に娯楽本で修行をしようというのではないですから、もう少し読後に爽快感がほしいところです。

という風になんかだんだん(特に構想力が)盛り下がってる気がして寂しいものがあります。桐野は好きな作家なのでがんばってほしいですね。

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