酢豚のひとりごと

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タイタス・アンドロニカス

2006-05-06 00:13:40 | 演劇
彩の国さいたま芸術劇場・蜷川幸雄演出
人は何故、悲劇を見たいと思うのだろうか。シェイクスピアはどんな気持でこの戯曲を書いたのだろう。いろいろな思いの交錯する観劇であった。

ゴート族との戦いに勝利した、ローマの武将、タイタス・アンドロニカス(吉田鋼太郎)が凱旋帰国する。捕虜として連れ帰った敵方の女王タモーラ(麻実れい)の命乞いを聞かず、タイタスはその長男を虐殺してしまう。そこから復讐の連鎖が始まる。新皇帝に取り入ったタモーラは、策略でタイタスの息子二人を処刑するとともに、タイタスの娘ラヴィニア(真中 瞳)を自分の息子達に強姦させた上、舌と両手を切り落とさせる。この策略の背後にタモーラの愛人でムーア人のエアロン(小栗 旬)がいる。真相を知ったタイタスはタモーラへの驚くべき報復へ最後の執念を燃やす。
「タイタス・アンドロニカス」は、親子の愛がもたらす復讐と殺戮の物語と言えよう。

この芝居で二人の出演者に注目した。
一人はエアロン役の小栗 旬。原作を読んで私は、ずんぐりむっくりの黒人をイメージしたので、違和感を心配したが、黒い肌・鋭い眼光・立ち姿のかっこよさなどで、小栗 旬なりのエアロン像を作り上げていた。
もう一人はグレート義太夫。悲劇の中で唯一笑いをとれる道化役だったが、遠慮がちな芝居で物足りなかった。演出の制約かもしれないが、大きな活躍の場を逃したのではないかと、義太夫フアンの一人としては惜しまれた。

親子の深い愛情は、それを妨げる他者への深い憎悪を生み出す。シェイクスピアの戯曲が、現代まで人気を持ち続けているのは、言葉遊びや卑猥な笑いを交えながら、人間の本質に鋭く迫るものがあるからではないだろうか。




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