酢豚のひとりごと

楽しい芝居と映画探しつづけま~す!

『十九歳のジェイコブ』

2014-06-30 08:13:22 | 演劇


「十九歳のジェイコブ」  於:新国立劇場小劇場

演出:松本雄吉、脚本:松井周、原作:中上健次
出演:石田卓也、松下洸平、横田美紀、奥村佳恵、有薗芳記、石田圭祐、西牟田恵、中野英樹、チョウヨンホ、酒井和哉、山口惠子、新部聖子


中上健次の小説を今注目の劇作家松井周が戯曲化。

何の予備知識もなく見たが、面白い芝居だと思った。19歳のジェイコブ(石田卓也)と友人のユキ(松下洸平)はセックスとドラッグに溺れる退廃的な生活を過ごしている。それぞれ抱えるイライラ感が頂点にきて暴発し殺人と自殺へ。しかしそれは何ももたらすことはなくむなしく消える。

演出の松本雄吉の劇団である「維新派」を思わせる立ち姿や動き、センスある舞台美術、そして衣装。ヘンデルの曲やジャズの音楽も魅力的だと思った。

ところがである。帰って脚本を読んであ然とした。多くのところを見過ごしているし、かん違いもしていた。
冒頭部分のシーン。主役の後ろにぼんやりと見えていたのは、三体の死体だったらしい。前から二列目で目をこらして見たのだが、なんだか分からなかった。一番端の席だったかもしれない。血が滴ってもいたらしいのだが、これも雨にしか見えなかった。
また奥村佳恵が二役をやっているのも気がつかなかった。違う名前で呼ばれていたはずだし、服装も変わっていたのでこれも見落としである。
ともかく他にもかん違い多数。今回はどうも感想を書く資格なし。

出来ればもう一度見たいが、残念なことに6月29日で終了した。

『赤鬼』

2014-06-24 10:43:35 | 演劇


「赤鬼」  於:青山円形劇場  
作:野田秀樹、演出:中屋敷法仁 、出演:黒木華・柄本時生・玉置玲央・小野寺修二ほか

<物語>
ある日、村の砂浜に異人が打ち上げられる。村人達はその人物を「赤鬼」(小野寺修二)と呼び、人を喰うと怖れる。ただ他の村から移り住んでいた「あの女」(黒木華)だけが心を開き、赤鬼が花を食べること、理想の地を探しにきたことを知り、 少し知恵遅れの兄「とんび」(柄本時生)、嘘つきの「ミズカネ」(玉置玲央)と共に、 赤鬼を救うために島から舟を出すのだが・・・。


注目の若手演出家中屋敷法仁が野田秀樹の戯曲に挑戦する注目の舞台。

主な役と村人など何役への転換が流れるように進む演出が気持ちいい。
ただ赤鬼がラスト近くで英語をしゃべることで、英語圏の人物と特定されるのだが、わからないままの方が芝居に広がりが出たのではないか。

初々しかった黒木華が、いつのまにか貫禄さえ感じさせる堂々たる演技。玉置玲央と柄本明の次男である柄本時生の柔軟な演技も見事である。

公演は6月15日に終了。

『海辺のカフカ』

2014-06-13 12:27:47 | 演劇


「海辺のカフカ」  於:彩の国さいたま芸術劇場

原作:村上春樹、脚本:フランク・ギャラティ、演出:蜷川幸雄、美術:中越司
出演:宮沢りえ、藤木直人、古畑新之、鈴木杏、柿澤勇人、木場勝己他 

村上春樹のベストセラー『海辺のカフカ』を、2012年に蜷川幸雄が舞台化。今回は一部出演者を変えての再演。

カフカを名乗る少年(古畑新之)の自分探しの旅が描かれる。
彼は世界で最もタフな人間になろうと、15歳の誕生日に家出をし四国に渡る。働かせてもらうことになった甲村図書館では自分の母だったと思われる女性佐伯(宮沢りえ)と出会う。一方、字を読むことも書くことも出来ないが、猫や犬と会話の出来る不思議な老人ナカタさんも同じ時に長距離トラックに乗せて貰って四国にやってくる。二人が近づくにつれ物語は不思議な展開に・・・。

動物虐待や過剰なセックスシーンもあるが、全体的には詩情豊かな魅力的な舞台に仕上がっている。

ただ蜷川の舞台装置や演出に過去に使った手法が結構見られ、私には気が散る部分があっつた。林の動くシーンは『ムサシ』の冒頭の竹林を、鰯が上からぼとぼと落ちて来るのは『近代能楽集』の椿が落ちるのを、宮沢りえが入っていたアクリルの箱はネクストシアターの舞台『美しきものの伝説』他を、母子の再会シーンは『身毒丸』など、その都度その舞台を思いだしてしまい、流れが中断されることがあった。
それだけ蜷川幸雄の今までの舞台が印象的だったとも言えるのだが・・・。

出演者では、不思議な老人ナカタさん役の木場勝己の演技が最高。その存在感に圧倒される。
オーディションで選出されたカフカ役の古畑新之も初舞台と思えないしっかりしたセリフ回しで頑張っている。
またジョニー・ウォーカー役の新川將人やカーネル・サンダーズ役の鳥山昌克が個性的ないい味を見せ、カフカを助ける若い美容師さくら役の鈴木杏のはじけっぷりも気持ちいい。
脇の役者さん達がメインの宮沢りえ、藤木直人などを上回る好演だったと私は思う。

現在大阪公演中(~16日まで)
今後の東京公演は6/21(土)~7/5(土)まで赤坂ACTシアター
おすすめだが、もうチケットはないかも。

『関数ドミノ』

2014-06-07 11:33:39 | 演劇


「関数ドミノ」 イキウメ公演  於:シアタートラム

作・演出: 前川知大、出演:浜田信也・安井順平・伊勢佳世・盛隆二・岩本幸子・森下創・大窪人衛・新倉ケンタ・吉田蒼
2005年に初演、2009年に再演され、今回は新型の2014年版だそう。

ある地方都市の見渡しの悪い交差点。交通事故が起こり、車は大破するが、ぶつかったはずの歩行者は無傷。六人の目撃者がいたが、納得できる説明が出来るものは誰もいない。
中の一人がこれは特別な人間「ドミノ」が起こしたものだと主張したことから、目撃者達の心に変化が生まれ・・・・・。

東洋大学の哲学科を卒業した前川知大の作・演出。
哲学科卒だから哲学的と言うのは短絡的過ぎるが、突拍子もないことを理詰でどんどん押してきて、いつのまにかその世界に観客を取り込んでしまう、不思議な才能を持つ作家であり演出家である。

一見SF的でドライな感覚の芝居だが、特殊な能力を持ちながら負け犬根性が邪魔をして能力を生かせなかった男の悲しい物語というウエットな面も持つ。この辺が強引だけでない、観客をひきつける前川の魅力なのだろう。

いつもの「イキウメ」のメンバーも期待通りの息のあった演技を見せ、お薦めの芝居。
公演は2014年06月15日(日)まで


☆過去にコメントを書き洩れた芝居



3月『幽霊』
久しぶりに戯曲に真っ向から取り組んだ芝居を見た。イプセンの「幽霊」。演出は、最近「芸術選奨新人賞」を取り注目の森新太郎。
梅毒が不治の病であるとか、現代に馴染まないところもあるが。人生をどう生きるかと考えさせられる芝居だ。
気になったのは息子の感情にあたふたする場面での安蘭けいの歩き方。気品までなくしては元も子もない。

4月『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』公開リハーサル@KAAT』神奈川芸術劇場