日本国号成立の謎、草薙の剣の謎、どれを取っても、いずれも一冊の単行本になしうるテーマである。ノンフィクション系の本にまとめようかな、という気がしなかったわけではない。しかし、日下部佐保というヒロインを創り上げてしまうと、彼女と彼女の先祖にまつわる謎として、彼女の恋人となる青年に解き明かせたかった。「あたし、浦島の子孫よ」という美女に出会って、最初は困惑しながら、しだいに古代史にのめりこんでゆく青年を通じて、かって私がはまってしまった泥沼のような古代史の世界に訣別を告げたかった。
実はヒロインにとんでもないものを持たせた。草薙の剣である。えっ、それは名古屋の熱田神宮の神宝じゃないか、小説とはいえ、なんでそんなものが一般人の手に入るのか、という声が聞こえそうだ。いえいえ、きちんと整合性のある仕掛けにしたつもりだ。
ところで、草薙の剣は熱田神宮の神官でさえ、見ることを許されぬ秘宝である。だから学術的な対象になったことはなく、銅剣なのか鉄剣なのか、長剣なのか短剣なのか、わかっていなかった。昭和20年8月、敗戦直後に、神剣が米軍に没収されることをおそれて、熱田から岐阜は飛騨山中の水無神社に移したという秘話がある。運ぶために封印をといて、二人の人物がこの剣を見ている。(白絹でぐるぐる巻き状態であったらしい)50センチほどの短剣であった。考古学者たちは、この実見録に気づいていない。
ヒロインはなぜ、この剣を持っているのか。それを語ると長くなる。殺人事件も起きるミステリなので、もうこれ以上、小説『浦島の秘密』について語るのはよそう。ヒロインは現代によみがえった乙姫で、彼女に恋する青年の方が、浦島太郎といえるかもしれない。
実はヒロインにとんでもないものを持たせた。草薙の剣である。えっ、それは名古屋の熱田神宮の神宝じゃないか、小説とはいえ、なんでそんなものが一般人の手に入るのか、という声が聞こえそうだ。いえいえ、きちんと整合性のある仕掛けにしたつもりだ。
ところで、草薙の剣は熱田神宮の神官でさえ、見ることを許されぬ秘宝である。だから学術的な対象になったことはなく、銅剣なのか鉄剣なのか、長剣なのか短剣なのか、わかっていなかった。昭和20年8月、敗戦直後に、神剣が米軍に没収されることをおそれて、熱田から岐阜は飛騨山中の水無神社に移したという秘話がある。運ぶために封印をといて、二人の人物がこの剣を見ている。(白絹でぐるぐる巻き状態であったらしい)50センチほどの短剣であった。考古学者たちは、この実見録に気づいていない。
ヒロインはなぜ、この剣を持っているのか。それを語ると長くなる。殺人事件も起きるミステリなので、もうこれ以上、小説『浦島の秘密』について語るのはよそう。ヒロインは現代によみがえった乙姫で、彼女に恋する青年の方が、浦島太郎といえるかもしれない。