ラティハン日記2

ラティハンと人生の散歩道

ラターイフ

1958-06-02 | 日記
スーフィズムにおけるラターイフ(laṭā’if )論の再定義
   石田 友梨 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)より引用

386P
イスラームの信仰の基礎となる聖典クルアーンには、霊魂がどのように描かれているのだろうか。
アラビア語で霊魂(soul)に相当する言葉に、ナフス(nafs)とルーフ(rūḥ)がある。
通常、ナフスは自我(ego)や劣情(lust, lower self)、ルーフは精神(spirit)と訳されている。
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「繊細なもの」としてスーフィーたちが挙げるのは、基本的にナフス、ルーフ、カルブ (qalb,心)、スィッル(sirr, 秘密)の四つである。
これらを合わせて「ラターイフ(laṭā’if )」と呼び、これらがそれぞれ何を意味するのかを論じたものを、ラターイフ論と呼んでいる。
ラターイフという言葉は、「繊細な」を意味するアラビア語「ラティーフ(laṭīf )」の女性形「ラティーファ(laṭīfa)」を、さらに複数形にしたものである6)。

ラターイフは、目が視覚を司り耳が聴覚を司るように、それぞれが役割を受けもつ器官である。
そして、ラターイフの器官は、神に向かうための器官であった。
たとえば、クシャイリー(al-Qushayrī, d. 1072)は、ルーフは愛(al-maḥabba)、カルブは知識(al-maʽārif )、スィッルは観想(al-mushāhada)が宿る器官であると紹介している7)。
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ラターイフ論には四つの基本用語(ナフス、ルーフ、カルブ、スィッル)がある。
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さて、トゥスタリーがラティーフという言葉で表現したカルブとナフスであるが、両者ともクルアーンに何度も登場する言葉である。
スーフィズムの霊魂論におけるカルブとナフスの使用は、おそらくジャアファル・サーディク(Ja ̒far al-Ṣādiq, d. 765)まで遡る。
ジャアファル・サーディクの霊魂論は、ナフス、カルブ、ルーフからなる。ルーフもカルブとナフス同様、クルアーンに度々登場する言葉である。
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特にティルミズィーは、ジャアファル・サーディクの三区分を身体と対応させた。
すなわち、ナフスを腹部、カルブを胸部、ルーフを頭部に対応させた上、これらが順に肉欲(shahwa)、叡智(maʻarifa)、理性の中心となると考えた18)。
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本格的に修行論と霊魂論との関連づける説明は、クブラヴィー教団の名祖であるナジュムッディーン・クブラー(Najm al-Dīn Kubrā, d. 1220)の登場を待たねばならない。
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彼はナフスを三段階に分け、ルーフとスィッルとを合わせた五段階のラターイフ論を展開する26)。
三段階のナフスとは、「悪を命令する魂(nafs ammāra)」27)、「非難する魂(nafs lawwāma)」28) 、「安寧の魂(nafs muṭmaʾinna)」29)である。
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  27)「またわたし自身、無欠とはいえませんが、主が慈悲をかけた以外の(人間の)魂は悪に傾きやすいのです。本当にわたしの主は寛容にして慈悲深くあられます」(ママ)」
   [Q 12: 54](“nafs ammāra” 該当部分)。

  28)「また、自責する魂において誓う。」
   [Q 75: 2](“nafs lawwāma” 該当部分)。

  29)「(善行を積んだ魂に言われるであろう。)おお、安心、大悟している魂よ、」
   [Q 89: 27](“nafs muṭmaʾinna” 該当部分)
  

以上
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