ラティハン日記2

ラティハンと人生の散歩道

ことばをたずねて・ナフスの章

1958-06-03 | 日記
・1・・・3つのナフス・・・

インドネシア語で「欲望」はnafsuです。

これがジャワ語になるとnapsuとなります。

インドネシア語で「怒り」はamarahです。

nafsu amarahで「貪欲」となります。

nafsu makanで「食欲」です。


ナフスというコトバが生まれたのはアラビア地方のようです。

7世紀に成立したクルアーンにナフスの記述が出てきますので、その時にはすでに人々の間で使われていた事がわかります。

13世紀になるとスーフィー sufiによってナフス nafsは3段階に分けられます。

3段階のナフスとは、
  「悪を命令する魂(nafs ammāra)」
  「非難する魂(nafs lawwāma)」
  「安寧の魂(nafs muṭmaʾinna)」
となります。

以上、「スーフィズムにおけるラターイフ(laṭā’if )論の再定義」からの引用です。<-リンク


ジャワにイスラムが伝わったのは15世紀終わりから16世紀にかけてです。

このときジャワ島の民衆にイスラムを広めたのがワリ・サンガ(九聖人)といわれるスーフィー聖者たちでした。(wiki インドネシアの歴史 から引用)<-リンク

したがってこの時ジャワに上記三つのナフスがスーフィーによって伝えられたと考えるのが妥当なところでしょうか。

そしてアラビア語ではnafsでしたがジャワではそれがnapsuあるいはnafsuになりました。


さて、こんにちのジャワ神秘主義・クバティナンではナフスは4種類と一つ増えます。

    クバティナン分類(ジャワ語)        スーフィーズム分類(アラビア語)

第一はソフィアsofia, つまり物質欲,

第二はアマラamarah すなわち自尊心,<--「悪を命令する魂(nafs ammāra)」

第三はルアマluamah, すなわち食欲, <--「非難する魂(nafs lawwāma)」

第四がムトマイナmutmainahつまり徳への欲望。
                          <--「安寧の魂(nafs muṭmaʾinna)」

このように比較するとソフィア sofiaがクバティナンでは追加になっているのが
わかります。

以上、ジャワ神秘主義の民族誌からの引用でした。<-リンク


という訳でナフスという言葉は千年以上も前から使われていたのですね。

そんなことも知らずに「ナフスが・・・」などと分かったような話をしていたのですから、我ながら自分の無知に恥じ入る次第であります。


ところでバパのトークにも4つのナフスが登場します。

そしてバパはこれらのコトバの起源がアラビア語である事を示しています。

関連する部分、リンク先に提示しておきます。<-リンク

2013・3・21

PS

ソフィア sofiaという言葉もスーフィーたちが最初に使っていた様です。

もっともクバティナンで使われている意味とは違う使い方ですが、、、。

詳細はまた後日にでも。<--リンク2014.11.13

2013.5.1