恐山あれこれ日記

院代(住職代理)が書いてます。

待ち人、来る!

2016年05月20日 | 日記
 某所での待ち合わせに向かうため、バスに乗り込んだ住職。車内は7、8人。天候暑からず寒からず、快晴。

 立っていることが多い住職、その日も立っていると、右斜め前に座っていたおさげ髪の女の子(小学校1、2年生くらい)が、いきなり振り向くと住職を見て、

「○○町3丁目というのは次でしょうか?」

「えっ。ああ、そうだよ、確か」

「ありがとうございました」

(礼儀正しい、いい子だな)

 バス、3丁目到着。女の子、再び、

「ありがとうございました」

「はい、さようなら」

 停留所に降り立った女の子、突然

「あれ、おじいちゃんがいない」

 女の子、住職を見上げて困惑の目。

「えっ、おじいちゃん?」

「いないの・・・」

「お迎えに来るの?」

「そう・・・」

 女の子の声、ぐっと心細そうになる。乗客の視線、住職に集まっている気配(自意識過剰か)。

「どうしよう・・・おかあさんが、おじいちゃん、来るって・・・」

 運転手から、何とかしろよと言われそうな感じ(完全に自意識過剰)。

「じゃ、オジサンと待とう」

(ああ、坊さんの見栄だよなあ。それなら、「和尚さんと待とう」と言うべきであったな)

 停留所に女の子と住職。

「すみません・・・」

「いいの、いいの。ただ、ぼくにも約束があるからなあ・・・」

(じいさん、早く来いよ! 何してんだよ!)

 名前を訊いたり学校のことを訊いたりしつつも、心配なまま15分以上経過、バス2台通過。

「あの、きみ、携帯電話持ってる?」

「うん。でも、おかあさん、いま仕事に行ってるから、通じないの」

 ちょっと涙ぐみ状態。

(あーん、泣かれたら困るよう!)

「あっ!」

「あの人、おじいちゃん?」

「うん!」

 くまのプーさん的体形のおっさん、300メートルほど彼方から、実にゆっくり接近中。

「よかったなあ」

(おい、じいさん! 全力疾走で来いよ!!)

 おじいちゃん追い抜いて、次のバス接近。

「じゃ、ぼく行くね。バイバイ」

「バイバイ!」

 本当はおじいちゃんにひとコト言いたかった住職、そのまま出発。バスの車窓には、ようやくやって来たおじいちゃんと手をつないだ女の子。

 住職がいつもの格好で出歩くと時々ある、この手の出来事。


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242 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (立葵)
2016-05-20 07:05:05
『住職がいつもの格好で出歩くと時々ある、この手の出来事。』

もしかしたら恰好が違っても、こういう出来事に巻き込まれることがあるかもしれません(笑)

困っている人、何かを必要としている人は、それに応じてくれそうな人を「直感的」に選んでいるのではないかと思われてなりません。


「道先案内人」、「旅先写真家」という肩書(あだ名)を持っている人を知っています。

それぞれ、道をよく聞かれること、観光地で写真撮影をよくお願いされることに由来しております。

海外でも明らかに「外人」扱いされているにも関わらず、現地人にフランス語混じりで現地の道先案内を請われたときは、「道先案内人」の肩書は、属性を離れて、世界に通用するものだと思われました(笑)
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Unknown (お転馬)
2016-05-20 07:52:03
さすがは親分だっぺ。
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Unknown (Unknown)
2016-05-20 07:59:29
その状況でしたら、席も空いて、立つところも他にあったはずですが、わざわざ女の子の近くに立たれたのは、何故でしょう?

それなりの因縁があったのでしょうね。
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Unknown (Unknown)
2016-05-20 08:11:12
知人の女学生が、コンビニに行くと、見覚えのあるお坊さんが、ジーンズ姿で買い物をしているのを見かけ、"びっくりした!"とのことでした。

さて何に、"びっくりした"のでしょうか?(笑)
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Unknown (Unknown)
2016-05-20 08:44:55
よく道を聞かれる人がいる
目の前に目的地があっても聞く
知っていても安心するために聞くらしい
その人に吸い寄せられる何かがある

ぷーさんの想像力の欠如
共感とはなんなのか
バスの時間と合理性
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Unknown (御坊哲)
2016-05-20 09:16:56
なにかほのぼのとするエピソード、いいですねぇ。和尚さんだからこそ女の子にも頼られるんですね。私だとこうはいきません。
顔が怖すぎるらしいので‥‥。
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Unknown (お転馬)
2016-05-20 09:35:19
旅先案内人が、親分の仕事だっぺな。
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Unknown (Unknown)
2016-05-20 09:47:33
南さんは、女の子に対して、自分のことを、
「オジサン」「ぼく」と使い分けられて、女の子に、「お嬢ちゃん」ではなく、「きみ」と使われいる。

意図するところや如何に?

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Unknown (Unknown)
2016-05-20 10:02:17
面倒な事は坊さんに任せちまえ。
自意識過剰というよりは周囲の人間からの無言の圧力なのでは。
お孫さんの心細さを汲み取れず、遅れて
のこのこやって来るおじいちゃん。
子供に対する配慮を欠いた大人のダメっぷり。笑える人の気が知れない。
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Unknown (Unknown)
2016-05-20 10:16:11
慈愛ある人だと思うからはっきり言うんだけど、
皆も思ってるだろうけど、お顔を拝見したときに
あきらかにヤバいという感想がでてきた
自分は直感的に視覚で相手を判断する能力があると思うが
著書を色々読んでたら、納得した
でも、子供に好かれているし
子供好きな方だとおもうから安心したけど
人間って両サイドあることもあるし
老婆心だけど、まだ顔に残っている気がしますよ
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