呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

蔵王山麓暮らしのオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

呑む気オヤジの、読む!~「さよならドビュッシー」

2012-12-24 | 本の話
さよならドビュッシー (宝島社文庫)
クリエーター情報なし
宝島社


♪「さよならドビュッシー」中山七里著 宝島社文庫

本屋で何を読もうか物色していたら「このミス大賞受賞!」のPOP文字が目に入り、題名の「ドビュッシー」に惹かれてつい買ってしまった。作品のタイトルも作家の名前も全然知らなかったのに、やっぱり宣伝とか本屋さんでの並べ方で、結構売れ行きに影響があるんだろうな。

音大付属高校に推薦入学が決まった遥は、ピアノの才能に恵まれ、将来ピアニストを目指していた。
ある日従兄妹とともに地元の資産家である祖父のもとに遊びに行くが、大火事に巻き込まれ祖父と従兄妹は焼死し、自分も大やけどを負う。だが、優秀な整形外科医の治療とピアニストで大学講師の岬洋介の的確な指導により、驚異的な回復を果たし地元のコンク―ルに出場する。
その遥を巡って、不吉な事件が繰り返される…。

この小説はミステリー(推理小説)だが、描かれる演奏シーンや曲の解説は中途半端ではなく、いかにも音大の先生かクラシック音楽評論家が執筆したかのよう。とても素晴らしくCDのライナーノーツやコンサートのプログラムを読んでいるようだ。
本の中から、まるで音楽が飛び出してくるような臨場感がある。ちょっと調べたら、国文科出身で音楽の専門家ではないようだ。大したもんだ!

後半で犯人が判明する辺りでは、音楽小説としては秀作だがミステリーとしてはイマイチ平凡だなぁー、と思っていたが、その後の最後の最後で、大どんでん返しが用意されていた。
えーーー、そういうことだったのぉーー!なるほどーーー!さすがに「このミス」大賞だ。すっかりやられてしまった。
いやぁー、多少は無理があるが。これは面白い小説だ。ぜひクラシックファン以外の方も読んでいただきたいし、クラシック音楽が好きな人はさらに楽しめると思う。
ぜひぜひ、お勧めします。



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呑む気オヤジの、読む!~「八つ花ごよみ」

2012-11-04 | 本の話
八つ花ごよみ (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社


♪「八つ花暦」山本一力著 新潮文庫

久しぶりの山本一力。中年を過ぎ酸いも甘いも見極めた老境の主人公の、夫婦の愛や友情を描く短編集。各話に何らかの形で「「花」が絡む。
病に倒れた妻を献身的に面倒を見る夫や、武骨で腕の良い独り者の職人の淡い恋心を成就させようとする友人の話など、心温まる話ばかりだ。
山本一力って、こういう人情話を書かせると、本当の上手だ。前にも書いたと思うけど、この人の話を落語の人情話とか浪曲にして語ったら、とてもよいと思う。
山本一力作の新作江戸人情話など、ぜひ聞いてみたい。山本さんに直接お願いしてみようかしら。

そして相変わらず文章がうまくて「山本名調子」が光る。なんと言っても、話の出だしの一行が素晴らしい(これも前に何度も書いている)。

「大横川を渡ってきた朝の風が、軒先に吊るした釣忍を軽く揺らした。」(「路ばたのききょう」より)

この一文で、朝から気温が上がった夏の町屋の様子がぱっと頭の中に広がり、すーっと江戸の下町に瞬間移動してしまう。
また話しの随所に出てくる風景やちょっとした情景の描写が巧みなので、常にそのシーンが目に浮かんで、まるで映画を見ているようだ。それでいて登場人物の心状描写も上手いんだから、読んでいてすんなりその世界に入っていけるわけだ。
あまり時代小説に縁のないみなさま、山本一力はお勧めですよ!

*釣忍(つりしのぶ)=涼味を誘う夏の吊り飾り



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呑む気オヤジの、読む!~「果つる底なき」

2012-10-24 | 本の話
果つる底なき (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社



♪「果つる底なき」池井戸潤著 講談社文庫

直木賞の「下町ロケット」の筆者ということで、本屋に作品が平積みになっている。
ぜひ読んでみたいなーと思いながら、さて何から読もうか?と悩んだ。でも僕は、基本的に初めて読む作家はなるべく初期の作品(できればデビュー作)から読むことにしている。
まぁその作家をずーっと読み続けるかは分からないので、面白そうな本から読めばいいんだけど、なんとなく作家の歴史、作品を辿りたいと思うんだな。

ということで、どうせ読むならと池井戸潤の初期作品の本作から読み始めた。
この話は、都市銀行の融資担当者が、同期入行の同僚の死や取引先の連鎖倒産に疑問を持ち、いろいろ調べるうちに大手都市銀行の隠された暗部に到達し、命を狙われながらもその暗闇を抉り出すというミステリーだ。
3大メガバンクの一つの出身という池井戸氏、さすがに銀行業務に精通しており、「ホントにこんなこともやっているのか?でもひょっとしたらあるのかも…」と思わず考えてしまう迫力と現実味ががある。
ミステリーなので、内容には触れないようにするけど、江戸川乱歩賞受賞作品だけはある。面白くて一気に読んだ。
最後の一行が気が利いている。お勧めします。特に銀行員にはお勧めです。ハート4つ!


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呑む気オヤジの、読む!~「6TEEN シックスティーン」

2012-09-14 | 本の話
6TEEN (新潮文庫)
石田 衣良
新潮社


♪「6TEEN シックスティーン」石田衣良著 新潮文庫

直木賞受賞作「4TEEN フォーティーン」の続編。月島中学を卒業した4人の少年は、それぞれ異なる高校に進学するが、相変わらずの仲良しで毎日のように月島のもんじゃ焼き屋に屯している。
4人組の一人テツローを通して語られる、4人や彼らを取り巻く同世代の若者、大人たちの悲喜こもごも。テツローの捉え方、感性はあくまでも若くて(ある意味青くて)瑞々しい。
16歳ともなると、子供と大人のまさに真ん中の不安定な時期だ。直面する問題や悩みも、14歳と比べれば随分大人びてくる。あー、自分もあんなことに悩んだっけな、あんなことに夢中になったよな、いつもつるんでいたよな…。まさに40年前のことだけど、つい最近のことのように思い出すことも多い。
石田の筆致は、高校1年のテツローに合わせて今時の若者のもの。でもその軽い口調の中に、きらりと光ったり、ずんっと重い言葉やフレーズが散らばっている。これは、石田の文章力、上手さなんだと気がついた。
高校生が何を生意気にほざいているんだ、大した話じゃねーよ、とか思いながら読み進めるが、結構オヤジの胸にきゅっと響いたり、ちょっと目頭が熱くなったりする。やっぱり、さすがに直木賞作家だね。
なかなか良い小説です。最近歳のせいで感性が錆びついてきたかな、と感じているご同輩、間違いなく心地よい潤滑油と刺激となりますよ! ハート4つ!





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呑む気オヤジの、読む!~「プラチナデータ」

2012-08-01 | 本の話
プラチナデータ (幻冬舎文庫)
東野 圭吾
幻冬舎


♪「プラチナデータ」東野圭吾著 幻冬舎文庫

ほんの少し先の近未来の日本。国民のDNAを登録し、事件が発生した時の捜査の証拠とする法案が成立した。犯人の残したDNAと登録されている者のDNAとの類似性から、身元を特定し犯人に酷似したモンタージュまで作成できる。
警察では、地道な聞き込みや長年の勘による操作はもはや不要とまで言われた。しかしある連続殺人事件では、犯人と一致するDNAが発見できず、捜査は息詰まる。
しかしそのうちにDNAによる捜査を担当する警察庁特殊解析研究所の主任解析員が連続殺人犯として警察から追われる身に…。

久しぶりに面白くて、読書にのめり込めるミステリーに出会った。飯を食べる時間もトイレの時間も勿体なく感じる面白さ。
まさに4~5年先には、国民総背番号制どころか、DNAを全員登録する世の中にならないとは限らない。僕は国民一人ひとりに番号を設定して、住民票などをどこでも取得できる、税金の徴収などを公平に行う、などは良いことだと考えている。
でもDNAまで登録して、本人どころか親族のことまであからさまになることは如何なものかと思う。まぁ、その辺がフィクションであるのだが、ひょっとして!?と思わせるところが、東野さんの上手いところだ。
とにかく面白くハラハラしながら、そして犯人の謎解きという推理小説の王道も盛り込んだ秀作と思う。
面白さ度・お勧め度 ハート4つ!



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呑む気オヤジの、読む!~「羊の目」

2012-07-22 | 本の話
羊の目 (文春文庫)
伊集院 静
文藝春秋



♪「羊の目」伊集院静著 文春文庫

今、同じ仙台の地に住み、言ってみれば「同じ土地の空気を吸っている者」という親近感があり、伊集院静の「大人の流儀」は2巻とも読んだ。(2冊とも感想をアップしています)
書店で本書を見かけ、「そういえば伊集院の本格的小説ってあんまり読んでいないな」と思い、購入した。
ご多分に漏れず、本書も読み終えるのに相当の時間を費やしてしまった。よっぽど面白くて先が気になる本でもないと、最近はなかなか読書が前に進まない。
合唱の譜読みうんぬんもあるが、やっぱり歳のせいで、集中力とかが薄れているんだろうか。だめだねぇ~。

昭和初期、「夜鷹」が産み落とした子供が、侠客として義理の父親(育ての親、親分)のために『義』を貫き通す壮絶な人生の生涯記だ。
「なぜそこまでやるの、もういいじゃない」と思わず言ってしまいそうな神崎武美の人生。今のやくざとは一線を画す「任侠」の心を貫き通した人生ともいえる。
因みに「任侠」とは、本来「仁義を重んじ、困ったり苦しんだりしている人たちのために、体を張る自己犠牲的精神」を意味するらしい。当然、そのために敵対する相手を攻撃したり、体を張って身内を守ったりということはあったのだと思う。でも今のやくざの所業とは全く違うものだ。
以前に清水次郎長の生涯を描いた山本一力の「背負い富士」を読んだが、まさに自分の身内や庶民の平和を守るのが「侠客・任侠の人」だ。
この小説の主人公神崎武美は「任侠」とは少し違う世界を歩んできた。育ての親である親分を、体を張って守り抜くことに人生を懸けた一生は、もちろん僕の人生とは全く違うものであるし、共感できるものではない。でも、1つのものに命を懸ける、「一所懸命」を貫く人生に、畏敬の念を覚えることも確かだ。
そういう人生は、普通の人では、やりたくてもなかなか具現化できない。今のやくざの世界でも、そんな生き方をする人はいるのだろうか。ある意味「古き良き時代」の任侠物語でもある。


PS)
伊集院さんの長編小説は初めてだけど、ちょっと暗いね。特に本書は伊集院さんの出生や半生と多少なりともリンクする部分があり、思い入れも深いのだろうが、内容的にも重い。
次は、もっとスカッと明るい本が読みたい。(なにせたまにしか読まないもので…)


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吞む気オヤジの、読む!~「池上彰の宗教がわかれば世界がみえる」

2012-05-20 | 本の話
池上彰の宗教がわかれば世界が見える (文春新書)
池上 彰
文藝春秋


♪「池上彰の宗教がわかれば世界が見える」池上彰著 文春新書

新聞を読んでいて、相変わらず中東問題とかテロとか石油問題とかが理解できない。これはやっぱり宗教から勉強しないとわからないよなと思い、本屋に寄った。最初は中東の諸問題と宗教を関連付ける本を探していたけど、世界の宗教そのものを解説する本書が面白そうで買ってしまった。

仏教、キリスト教、イスラム教、神道等のそれぞれのオーソリティー(僧侶や研究者)に池上彰がインタビューする形で、各宗教に対する素朴な疑問や抱える問題点などが浮き彫りにされる。
当然、各宗教のことをちゃんと理解するまでには至らないが、入り口のところはそれなりに理解できた、かな?
仏教ってなに?坊さんは葬式で儲けているだけ?仏教の将来は?
キリストはなぜ迫害された?世界の終りが来て、天国行きか地獄行きかの最後の審判が下される?
日本人は無宗教?いや、すべてのものに神が宿る?八百万の神って?
イスラム教のコーランって?ユダヤ教とキリスト教とどう違うの?

やっぱり宗教って難しいなぁ~。日本人は決して無宗教、無信心ではない。だって神社を通りかかればお賽銭を投げ込み拝む。初詣には律儀に出かけるし、結婚式は教会だったり神前だったり。子供が生まれればお宮参りに行くし、クリスマスには教会に行く人も多い。そして人生の最後は仏式でお葬式。
普段だって朝日に向かって手を合わせる。キリスト教徒やイスラム教徒に負けないぐらい祈ったり拝んだりしている。
ただ、一つの神に絞り切れないんだね。一神教は向いていないのだろう。それから神様は敬うけれど、信じ切って頼り切ることはあまりない。だから殉教という精神もない。なので自分は「無宗教」という意識が一人ひとりにあるんだろう。

本書の中で、臨済宗神宮寺住職の高橋卓志氏は「寺は人の苦しみや辛さに寄り添い支えるべき」と仰っている。その考え方で、末期患者の緩和ケアや高齢者のケアをやっているそうだ。
そうなんだよねぇ。お寺は、やっぱりもっと地域の中核をなすコミュニティー的役割を果たすべきだと思う。葬式だけのお寺はダメですよ。日頃からお年寄りや子供たち、地域の住人が拠り所とするような存在じゃないと。
高橋曰く、亡くなった人の葬式を行うとき、坊さんはその人たちの生前の喜びや苦しみ共有していて、その人に合った葬式を組み立てる。それが理想というわけです。なるほどね、まさにお寺のあるべき姿だと思う。
そういう意味ではキリスト教の教会のほうが。信者が寄り集まるコミュニティーの役割を果たしている。毎週の日曜学校、教会のバザー、クリスマスのミサ、結婚式も葬式も、他人でも気軽に教会に集まって祝福したり見送ったりできる。悩みがあれば牧師さんに打ち明け、救われる。聖書が口語で書かれ、牧師の語る説教も理解しやすい。
お寺もそういう役割を果たさないとねぇ。100年後にお寺は残っているんでしょうか?

中東問題を宗教から理解するという目的は叶わなかったけど、別な意味で勉強になった。そうなんだよ、僕も基本的にはキリスト教のほうがピンと来るし、教会にも通ってみたいんだよね。
一方で、仏教ももっと勉強したくなった。う~ん、年を取った証拠か…。


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呑む気オヤジの、読む!~「第九・ベートーヴェン最大の交響曲の神話」

2012-03-22 | 本の話
第九 ベートーヴェン最大の交響曲の神話 (幻冬舎新書)
中川 右介
幻冬舎



♪「第九・ベートーヴェン最大の交響曲の神話」中川右介著(幻冬舎)

大好きな第九だけど、初演の様子こそ伝記に書かれたり、映画になったりで有名だが、その後の演奏はどんなふうだったのか、いつからこんなにしょっちゅう演奏されるようになったのか、などはよく知らなかった。
ベートーヴェンの交響曲第九番の初演から現在までの演奏の歴史と、どの指揮者がどんなふうに振ったのかを記録的に綴ったノンフィクション。
今でこそアマチュアのオケでも演奏するけど、初演からしばらくは、あまりにも難曲で、オケも合唱団も相当人数を揃えなくてはならないし、ソロも4人必要だしで、そう簡単には演奏されなかったようだ。
ベートーヴェンの楽曲は当時から人気があり、交響曲もヨーロッパ各国の演奏会で取り上げられていたようだが、第九番は1楽章だけとか、2楽章だけなど、今じゃ考えられない「ぶつ切り演奏」だったという。
それにまだレコードもない時代だから、スコアだけでこの大曲、難曲をきっちり理解して振れる指揮者も多くはなかった。
でもびっくりしたのは、ワーグナーやリスト、メンデルスゾーン、ベルリオーズなどの錚錚たる大作曲家たちが指揮者として第九を振っているということ。その当時(200年近く前)は作曲家=優秀な演奏家だったんだね。

近代になってからの演奏の歴史も興味深い。第一次世界大戦後とナチス台頭時代の第九、フルトヴェングラーとトスカニーニの第九、カラヤンとバースタインの第九、そして日本初演の第九の話、etc。
日本で初めて第九を演奏したのは、第一次世界大戦後の捕虜収容所のドイツ人だった話(これは有名な話で、映画にもなった。我がブログでも紹介済み)や、日本人による初演は九大か芸大か?などの話も、第九ファンとしては改めて読むことが出来て面白かった。
第九を歌っているあなた、4楽章しか興味がないとか3楽章は退屈だなどとほざいているあなた(我がブログの訪問者にはいないでしょうが)、こういう本も読んで、ちゃんと曲の背景とか演奏の歴史も勉強しましょう。少しは、自らの演奏(歌)が奥深くなるかもしれません。

再来年の我が社のオケの定演で、第九を演奏する計画がある。合唱も基本的に社内から募集するとか。
僕は当然出ますよ。練習にはなかなか出れないと思うけど、2~3回合わせれば大丈夫です(^^)/







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呑む気オヤジの、読む!~「続・大人の流儀」

2012-02-23 | 本の話
続・大人の流儀
伊集院 静
講談社



♪「続・大人の流儀」伊集院静著 講談社

伊集院さんの、歯に衣着せぬ物言いと、まさに大人の男の所作というか、振る舞いというか、こうあるべき論が小気味よい。
第一巻では、男と酒について語っているパートがとても印象的であった。今回は、まさに未曾有の大震災を身を以て体験した経験から、いろいろな想い、いろいろな理不尽に対する憤り、完膚なきまで痛めつけられても力強く生きている一般市民への礼賛などがいっぱい詰まっている。
週刊現代(って、決してバカにしていることはありません)に毎週連載ということで、イマイチ推敲が甘いような乱暴な物言いも所々にあるが、それも伊集院さんの持ち味だ。
巻末の、大震災の真っただ中にいた経験を綴ったエッセイも興味深い。

あの震災はなんだったのか?日本全国にどういう影響を与えたのか、いつ東北は完全復活するのか、原発はどうなるのか?人間の手でどこまで制御できるのか…。
まさに一般人も子供も年寄りも、真剣に考える時期なのかもしれない、




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「仙台支店読書部」結成

2011-12-30 | 本の話

最近、会社のメンバーで「仙台支店読書部」なるものを立ち上げた。会議の後の懇親会で、大の本好き(あらゆるジャンルの本を週3~4冊読んでいるらしい)な若手支社長を中心に読書の話で盛り上がって、「本好きが結構いるね。じゃぁ読書部を作るか」ということになった。
立ち上げメンバーは8人(40~50代のオジサン5名に女性が3名)で、週1回持ち回りで、最近または以前に読んだ本やお気に入りの作家を、社内メールでみんなに紹介&お勧めし合おうということだ。
「読書素人」のメンバーもいるが、毎週メールが発信され、それに対する感想や意見が飛び交う。返信メールの内容は、紹介された本から離れ、その本の映画や役者の話にまで広がり、まさに「喧々囂々」状態。
これがなかなか楽しいし為になる。自分が触れたことがない作家やノンフィクションの世界、読みたかったけど今まで手付かずだったジャンル、見逃した映画の話などが、まさにガンガン飛び交い、とても興味深い。
自分自身は、最近は完全な「遅読症」に罹り、読みかけの本ばかりで全然読書になっていない。でもこの読書部のメール交換で、これから読みたい本や、DVDを借りて観たい映画、これから挑戦したいジャンルなどが増えて、「よし、本を読むぞ!」という気にさせられる。
ハイ、これからはちゃんと時間を作って、本を読みます!
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呑む気オヤジの、読む!~「プリンセス・トヨトミ」

2011-07-06 | 本の話
プリンセス・トヨトミ (文春文庫)
万城目 学
文藝春秋



♪「プリンセス・トヨトミ」万城目学著 文春文庫

今までも何度かお伝えしていると思うが、僕にとって面白い小説、傑作、感動作にはいくつかのセオリーがある。
それは…
・1ページ目、それも数行読んで、ぐいっと引き込まれること
・読んでいて、楽しくてワクワクして、次が読みたくて仕方がなくなること
・最後の1ページ、数小節、そして最後の読点まで読んで、思わずゾクゾクっとして「やられたぁ~!」と心の中で叫ばずにはいられないこと

この「プリンセス・トヨトミ」はその3つとも備えた、僕にとっては大傑作の小説だ。

国家予算(税金)の無駄遣いを調査する会計検査院の調査官3名は、大阪府とその周辺の社団法人の監査に訪れる。そこで見た前代未聞の歴史的事実…。う~ん、まさに前代未聞、驚天動地、荒唐無稽!(笑)
敢えて、詳しい内容には触れないが、読んでいて新鮮なびっくりの連続でとても楽しかった。これだけのワクワクする小説は久しぶりだ。
あり得ない!と心の中で叫びながら最後まで読み進めると、いくつかの心憎いカラクリもある。な~るほど、そういうことか。親子、特に父と息子の絆や母親と娘たちの慈悲深い懐の深さにホロッとする。
「そうか、だから大阪人って、何でもお笑いに変えてしまうんだ、ボケと突っ込みが出来るんだ。大阪のオカンは強いし明るいんだ!」と、フィクションを読んだにも拘わらず、妙に納得してしまう。
なんだ、大阪人って関東や東北の人間が考えたり想像したりするより、ず~っといい奴ばかりじゃないかと、思わず騙される(笑?)。
著者の非凡さ、関西人魂と気骨を感じるとることができる、まさに傑作。ぜひお読みください!めちゃくちゃ面白いですよ!星、5つ!!

映画もヒットしているようだ。元々僕は映画に興味があって、でも観る前に読もうかなという気持ちで文庫本を手に取った。
映画は登場人物の設定が少し(いや大分)違うようだけど、これはこれで面白そうだ。必ず観ようと思います!


追伸その1)
著者の万城目さんは「マキメ」と読み、本名だそうだ。北海道にはこの字を書いて「マンジョウメ」さんという方がいらした。同じ漢字でも、いろいろ読み方があるもんだね。

追伸その2)
この本は、直木賞候補になったが受賞は逃したのこと。専門家が評価すると、僕たち素人には良く分からない解釈があるようだ。これだけ面白ければ、直木賞間違いないと思うんだけど、この世界は難しくて大変だね。






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呑む気オヤジの、読む!~「いつかX橋で」

2011-06-13 | 本の話
いつかX橋で (新潮文庫)
熊谷 達也
新潮社



♪「いつかX橋で」熊谷達也著 新潮文庫

熊谷達也氏の太平洋戦争末期および終戦後の仙台を舞台とした長編小説。以前読んだ短編集の「懐郷」がとても胸に染みたので、この小説はぜひ読みたかった(やっと文庫本化された)。「懐郷」に収録されている「X橋にガール」のコールガール淑子とキャラがダブるのも読みたかった理由の一つだ。

終戦直前の昭和20年7月の仙台大空襲で、母と妹を目の前で焼夷弾に焼き殺された祐輔。祐輔は師範学校に通う17歳の少年だが、終戦後は何を目標に生きていけばよいか分からない。自分は何のために生きているのか。自問自答を繰り返す…。

仙台駅の北側に掛かる「X橋」を舞台とした、混沌として先が見通せない暗欝たる青春グラフィティーだ。
僕は「もはや戦後は終わった」と言われた昭和31年生まれ。でも子供のころには、まだまだ仙台市内に戦後の傷跡が残っていたことを覚えている。
もう今は無くなった「X橋」だって、もちろん知っている。X橋から仙台駅東口に至る街並みに、昔の「赤線街」や「特殊飲食店街」のような「痕」が残っていたことも覚えている。
「あ~、そうか、あの街並みで祐輔達はもがき苦しんで、戦後を生きたんだ」という、実体験のようなものを感じることもできる。う~ん、やっぱりこれって「仙台小説」だなぁ~。(スミマセン、ストーリーは省略です)


さて小説の印象は…。
祐輔が仙台空襲を経験し、母や妹を失い、虚ろな日常を続けていく…。空襲で焼夷弾の炎に追いかけ回されるシーンはそれなりに迫力があるが、最初はどうも胸に迫ってこなかった。終戦後のいろいろなシーンも、結構淡々としていて、ちょっと物足りなかった。もっとも、平和ボケした呑んべオヤジには、分からないのかなぁ~。
でも、でもです!! エンディングは、やっぱり泣ける。あぁ~、やっぱり君の人生はそういう結末なの!?そういう生き方しかできなかったの?なんでもっと安易に生きなかったの??
心に胸に染みる終戦直後の若者の「青春グラフィティー」なんですなぁ。仙台っていいなぁ~。やっぱり僕は仙台っ子だなぁ~。
いろいろ頑張っぺ、仙台!


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呑む気オヤジの、読む!~小説「八日目の蝉」

2011-05-28 | 本の話
八日目の蝉 (中公文庫)
角田 光代
中央公論新社



♪「八日目の蝉」角田光代著 中公文庫

映画を観て、どうしても原作を読みたくなって、帰りに文庫を買った。いや、原作も期待に違わず面白かったし、ぐっと胸に迫ってきた。
小説(特に良く出来た本)を映画にすると、相当の確率で映画(映像)のほうがつまらなくなる。本を読んでから映画を観ると、がっかりすることが結構あるよね。また映画を観てから本を読むと、原作があまりにも素晴らしくて、映像なんて白々しく感じることも多い。
なんでだろうね。文章は詳細まで表現できるし、読み手が自分の経験に照らし合わせて場面をいろいろ想像できる。言ってみれば、自分の好きな都合のよい場面が想像できるわけだ。
反面、映像にすると、直接的には「目に映るもの」しか分からない。主人公の表情、風景、セリフの裏とか背景を想像しながら観るのは難しいし、それを観せるのも難しいんだろう。だから、映像化するのは大変なのかな。(何度か観直せば、分かるんだろうけど)

なんて、屁理屈はどうでも良い。
映像で観るより、文章のほうが主人公たちの感情が淡々と語られ、その分良く理解できる。先に映像を観ると、どうしても登場人物の顔が浮かんできてしまうのが玉にキズ?でも、それもまぁいいか。
映画の脚本が、ほぼ原作に忠実であることが良く分かった。登場人物のセリフも原作と大体同じ。でもラストが全然違う。これは賛否両論あるだろう。
もっとも、賛否両論は映画に対してであって、原作はあくまで「オリジナル」なのだから、論議の余地はない。僕は、多少出来過ぎだけど、原作のラストのほうがいいなぁ。もちろん、映画のこれまた多少唐突で、でもいろいろとこれからの未来の出来ごとを想像させるラストシーンもなかなか良い。
原作をある程度ガラッと変える脚本家や監督の勇気に感心するとともに、成功で良かった。普通はあまり変え過ぎると、批判の嵐になるからね。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
恒例の追伸
タイトル「八日目の蝉」とは、普通の蝉は7~8年という長い間地中にいて、やっと地上に出てきたと思ったら、たった7日間で死んでしまう。でも中には8日間生きる蝉もいる。8日間生きた蝉は幸せなのか?というテーマなんです。
このことはまた別途。



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呑む気オヤジの、読む!~「いっちばん」

2011-05-10 | 本の話
いっちばん (新潮文庫)
畠中 恵
新潮社



♪「いっちばん」畠中恵著 新潮文庫

畠中恵氏の「しゃばけ」シリーズ第七段。
相変わらず若旦那の一太郎は病弱で寝たり起きたり、兄やの仁吉と佐助は一太郎に大甘、鳴家や屏風のぞき、野寺坊たち妖は今回も大いに元気だ。
五編の短編が続く。今回はこれまでの出来事の続き的な話が多く、ある意味馴染み深い人物が出てきて親しみやすく、ある意味新鮮味に欠ける展開であった。
面白いし、読んでいてほわっとした気持ちになるし、一気に読めるんだけど…、このシリーズはこれからどうなるんだろうか?(前にも書きましたが)だって、こんな病弱の若旦那じゃ、将来がないじゃない!ずーっと寝たり起きたりしながら事件を解決していくんだろうか。
そうなると、だんだん尻つぼみで、話も展開しようがなくなる気がする。いっそのこと妖達の力で永遠の命でも手に入れて、半人半妖の人ならぬ存在で巷の難題をバッタバッタと解決していったらどうだろうか。
ちょっとこのままだと、中途半端で飽きそうな感じになって来たなぁ。
頑張れ、若旦那!!


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呑む気オヤジの、読む!~「ピアノの森 第19巻」

2011-04-22 | 本の話
ピアノの森(19) (モーニングKC)
一色 まこと
講談社



♪「ピアノの森 第19巻」一色まこと著 講談社

(一部ネタばれあり)
ショパン国際ピアノコンクールの第2次審査の演奏が大詰めを迎える。
ポーランドのレフ・シマノフスキが、まさに「ポーランド人のショパン」を完璧に弾き切り、会場は興奮に包まれる。これぞ我が祖国のショパンだ!審査員も納得する本物のショパンだ!
あまりにも素晴らしいレフの演奏に、次に弾く一ノ瀬海は不利に思われたが…。ところが、ところがてす!カイはそんな杞憂も吹き飛ばし、レフに勝るとも劣らないショパンを見事に弾いたのです!
カイの弾く「マズルカ op.50」その導入部だけで、一瞬にして会場の色を変えた。カイのショパンは自然で、温かくて、懐かしくて、まるでポーランドの平原の菜の花畑。そして母のように愛に溢れ、切なく感動的…。そう、カイのショパンはまさしく「森のショパン」なんだ!
まだ曲の途中だというのに、カイの演奏に圧倒された韓客は総立ちで叫ぶ。「Bravo!」「ナシャ・ポルスカ!(私たちのポーランド)」気難しいポーランドの審査員たちも思わずうなり、落涙する。弾き終わったカイは2度のカーテンコールに応えて舞台を降りた…。
さぁ、2次審査の結果は如何に!? ライバル雨宮は?レフは?パン・ウェイは?そして一ノ瀬海は~??

一色まことの筆致は、相変わらず清々しく、温かく、そして力強い。漫画なのに、ホントに目の前でカイがピアノを弾いていて、その音色が聴こえてくるようだ。いや、間違いなく聴こえているから思わずウルウルしてしまうんだね。
「ピアノの森」を読んだことのない音楽に携わる皆さん、ぜひとも読んでください。漫画といえども、音なしでこんなに感動を与えられるんだよ。それだけ人間の感受性って素晴らしくて、凄いということだと思うんです。それを感じ取るだけでも、自分のやっている音楽にもう少し深みが加わるかもしれません。(なんちゃって、生意気言ってスミマセン)
えっ、我が合唱団のピアニスト諸君、読んでないの!? ダメだよぉ~、読まなきゃ~。今度貸してあげます。


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ショパンコンクールの2次審査、カイは見事に通過するんだけど、ファイナルはいったいどうなる?
2次審査でこんなに盛り上がってしまったら、ファイナルはどうするんだろうと心配していたら、案の定コミックモーニングの連載はしばらく止まってしまっている。やっぱりなぁ、煮詰まっちゃったんだなぁ。一色さんは前から連載を落とす名人だからなぁ。
コンクールファイナルを前にして、このまま連載終了(自然消滅)なんてならないようにお願いしますよ。全国の一之瀬ファンは悶絶しちゃいますよ!






コメント (4)
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