goo blog サービス終了のお知らせ 

因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

『友達』

2008-11-14 | 舞台
*安倍公房作 岡田利規演出 公式サイトはこちら シアタートラム 24日まで
 開演30分前になり、劇場スタッフの方が「ただいまより開場いたします。チケットをお持ちの方は~」と告げると、客入れの音楽がロビーにも流れ出す。この瞬間が自分はとても好きだ。劇場に新鮮な風が吹き抜ける。今回の『友達』でかかった音楽は、あれはどういう系統の曲なのだろう。客席につくと客電の照明もさまざまな色合いに変化して心をかきたてる。開演前の気分は上々といったところか。

 ☆趣向の多い舞台です。このあたりからご注意くださいね☆

 始まった途端、自分の失敗に気づく。腕時計をはずしたままだった。しかも今回の舞台の上演時間を確認することも忘れていた。おそらく休憩なしだと思うが、エネルギー配分がうまくできるだろうか。

 
 関心と期待の多くは、気鋭の演出家、チェルフィッチュの岡田利規が安倍公房の作品にどう挑むかである。バレエダンサー、アングラ演劇、新劇、ミュージカル、小劇場からモデルまで多種多様な出演者は豪華というより、「これをいったいどうするんだ?」と不安にすらなる。客席にも微妙な具合で照明があたり、登場人物が観客に向かって妙に親しげに台詞を話す場面が多い。一人暮らしの男のアパートに大勢の人々が押し掛けて居座ってしまうという不条理な状況に対して、客席も半ば共犯関係に取り込みたいという意図だろうか。

 ギターやマイクなどの小道具や、ヨガやバレエのような動き、ある人物に敢えて不自然に照明をあてる、映像の使用など、いろいろな試みが『友達』という謎の多く厄介な作品を作るために有効に機能していたかは疑問である。上演時間はおよそ2時間20分。やはり長かった。達者な俳優が多いので、ちょっとした台詞の言い方や仕草がおもしろくて客席に笑いも起こったが、それらは枝葉の部分であり、何でも来いのベテランと演技の質があまりに違う若手俳優の共存にもいささか無理がある。「いかに見せるか」に重点が置かれていて、この戯曲がどんなものであるか、67年に初演された『友達』が、今でも有効であることを感じ取れなかったことが残念である。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« <del>中野成樹</del>多田淳之... | トップ | 浜田真理子X久世光彦ライブ『... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。

舞台」カテゴリの最新記事