因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

オリガト・プラスティコvol.5『龍を撫でた男』

2012-02-04 | 舞台

*福田恆存作 ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出 公式サイトはこちら 本多劇場 12日まで
 俳優の広岡由里子と劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチによるユニットの公演だ。公演チラシ掲載の演出家挨拶によれば、毎回「かなり偏った、個人的好みで演目をチョイスさせてもらっている」とのこと。
 本作は昭和27年文学座において長岡輝子の演出、芥川比呂志、田村秋子、宮口精二、中村伸郎、杉村春子ほかで初演されたものである。想像しただけで空恐ろしくなるような面々ではないか。

 不慮の事故で子どもを亡くした夫妻の居間が舞台となる。夫は精神科の医師、妻とは悲しみのゆえもあって重苦しく淀んだ空気が漂う。事故の際、孫たちといっしょにいたらしい夫の母親は自責の念で気がふれてしまい、妻の弟も情緒不安定だ。元旦の午後、友人が妹を伴ってやってきた。友人は劇作家、妹は女優である。

 ただでさえ危うい家庭が他者によってさらに揺さぶりを受けて崩壊していく残酷な様相が描かれた作品は、60年も前に書かれたことを忘れさせる。人の精神の正常かそうでないかの境界線があやふやで、どれもが真実にも思え、逆に妄想のようにも感じられるのである。
 どこにどのように視点を定めてよいのか、最後まで迷いながらの観劇になった・・・というより正直に言えば、はじまったとたんに眠気に襲われて撃沈、必死で浮上を試みたがとうとう最後まで集中できなかった。食後に服用した風邪薬のせいにすればそれまでであり、なぜこのようなことになったのか、要因が舞台にあるのなら、どこがどのようであればよかったのかを検証すべきなのであろうが、今回は沈みかたがあまりに激しく、手も足も出ない状態だ。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第60回東京藝術大学 卒業・修... | トップ | ハイリンドvol.12『ロゼット... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは。 (no hay banda)
2012-02-06 23:26:23
こんばんは。
私の観た記憶では、「友人は劇作家」ではなく、女優をしている妹(緒川たまきさん、彼女はもともと妻=広岡由里子さん=と女学校時代から親密で、夫=山崎一さん=とも古い仲)の方が友人であって、彼女が劇作家をしている兄(大鷹明良さん)を伴って山崎・広岡宅を訪れたはずです。
ご確認頂ければ幸いです。
舞台はとてもよくできたものだと私は思いました。福田恒存さんの作品はよくよく気を付けないと往々にして皮相なシニズムを示して終わってしまいますが、そこを演出と出演が注意深く回避している。そのように感じました。
返信する
no hay bandaさま (因幡屋)
2012-02-07 11:05:16
no hay bandaさま
当ブログにお越しくださいましたこと、ならびにコメントをありがとうございます。
ご指摘の箇所ですが、自分は公演チラシに書かれた演出家の文章をベースに書きました。
「友人の劇作家が、女優である妹を伴って夫妻の家を訪れる」という記述に対して、特に違和感をもたなかったのです。
結果的に、実際の舞台においては妹のほうが友人としてのつきあいが長く、彼女が兄を伴って訪れたこと、つまり人間関係の濃度が異なる点までは観劇中に読み取れていなかったということになりますね。
安易な書き方であったかもしれません。
ご指摘に改めて感謝いたします。
ぜひ戯曲を読んで舞台の記憶を呼び起こし、今度は自分の脳内で劇世界を構築してみたいと思っております。
今後とも因幡屋ぶろぐをよろしくお願いいたします。
返信する

コメントを投稿

舞台」カテゴリの最新記事