因幡屋ぶろぐ

劇評かわら版「因幡屋通信」主宰
宮本起代子による幸せの観劇記録。
舞台の印象をより的確により豊かに記せますよう・・・

『神様の夜 Cプロ 魅せられる』

2007-07-15 | 舞台
*読本 川上弘美 「春立つ」「離さない」 公演は15日で終了 
 今夜も雨の恵比寿、しかも台風接近中。いよいよ『神様の夜』最終プログラムとなった。ふたつの読本をつなぐのは、失恋した娘リョウとその父、娘の友だちによる「魅せられる」である。父娘はDプロの「さようなら」と同じ配役で(志賀廣太郎、後藤飛鳥)、しかしDでは幸せが弾けるようだった娘が今夜は一変、自分のもとを去った恋人(Dプロの三浦友之)が忘れられず、恋い焦がれている。もし順番通りC→Dとみていたら、少し印象が変ったかもしれない。

 「春立つ」は、猫屋という飲み屋の女あるじカナエさん(麻生美代子)の昔の恋の話。昔のカナエさんをリョウ役の後藤飛鳥が、カナエさんの恋人をリョウの恋人はるお役の三浦友之が演じ、「魅せられる」とのゆるい連なりを示す。地の文を読むのは志賀廣太郎。地の文と現在のカナエさん、若いころのカナエさんの台詞の配分、聞かせ方が絶妙である。店の常連である「わたし」(原田砂穂)は、「魅せられる」ではリョウの友達としても登場。随分お酒のみで、ややがさつなキャラに作ってあるが、友達を思う気持ちとずっこけた味わいの混じり具合がとてもおもしろい。

 終幕、ようやく立ち直りかけたリョウが本を開き、詩を読む。「まだ見ぬあなたへ」である。読み始めると後ろのカーテンが開き、ABプロのハジメ(窪田道聡)が姿を現す。ああ、こうしてすべての物語がつながっていくのだとため息がでた。もっとも今夜のCプロを初めてみた同道の家族は「恋人のはるくんだ」と思ったらしいが。桑原裕子の構成、脚色の手腕はもちろんだが、カンパニーぜんたいが原作を信頼し、心から大切に思っていることが伝わってくる。自分は以前から小説の『神様』が好きだったけれど、この4回の恵比寿通いでますます好きになった。

 舞台で本を読む行為について、もっと考えてみたい。今回はいわゆる「本」(小説)であるが、自分がずっとこだわっていた「戯曲」を読むということについても。

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