お父さんのマリポタ日記。
マリノスのこと、ポタリングのこと。最近忘れっぽくなってきたので、書いておかないと・・・
?



<その6>より続きます。

 本格的な雨のなかを走り出す。道は真っ暗。回りには樹木があるだけで何もない。ただくねくねした上り坂があるだけ。車もまったく通らない。ブルベだったら、前にも後ろにも人がいる。同じルートを同じ条件で走っている仲間がいる。しかし、今はひとりきりだ。こんな天気のこんな時間に、この道をツーリングしている自転車海苔がいるとは思えない。
 
 後ろを振り返ってもいけない。そこには誰もいないはず。なのに誰かいたら非常に困る。
 
 雨が強くなってきた。ライトの明かりで浮き上がっていた路肩の白線が消えた。センターラインも消えた。あるはずなのに見えない。道がどう続いているかも判別できなくなってきた。右へ曲がっているのか、それとも左? 路肩にガードレールはない。突っ込んだら、助けが来るまで何時間待てばいいのだろう。ゆっくりと慎重に上っていく。

 道の真ん中を走っていても、幸か不幸か車がまったく来ないので安全だった。それに急な傾斜もない。ここも緩やかに緩やかに上っていく道だった。
 
 困ったことに気が付いた。こういう状態で果たして降りられるのだろうか。一寸先は闇。路面は濡れている。ブレーキは効かない。降りられないじゃん。
 
 上れども上れども、ピークはやってこない。もう10キロほど上ったはずだぞ。
 
 そして、腹が猛烈に減ってきた。当初の予定ではこのあたりの時間帯で補給のはずだった。それが、途中で引き返したために補給のタイミングを失った。水も底をつきかけている。非常食は何も持っていない。コンビニはこの峠を越えた先の中軽井沢まで行かないとない。大津で補給すれば良かったと後悔しても後の祭り。だんだんと足に力が入らなくなってきた。ハンガーノックだ。ペダルを回すのが面倒になってきた。でも雨宿りするような場所はない。走り続けるしかないのだ。
 
 羽根尾から北軽井沢のピークとなる峰の茶屋までは、実は約20キロあった。それを知ったのは帰宅後。渋峠の詳細は調べていたが、この道は軽く考えていた。渋峠に比べればなんてことないさとなめていた。


午前4時28分、とある別荘の入り口にて

 1時間半近く上ったところで力尽きた。もうダメ。上れない。
 
 幸いに雨は小降りになり、回りも明るくなり始めていた。これほど朝が来るのが待ち遠しかったことは未だかつて無い。だが、明るくなったことで道の先が見えるようになり、逆に気力が萎えてきた。行く手には、いつまでたっても上りしかないのだ。
 
 狭い路肩では休めない。やっと別荘の入り口を見つけ、自転車が立てかけられるところもあったので、ひと息つく。「関係者以外立ち入り禁止」とあったが、緊急時だ。許せ。
 
 ここからは数百メートル上っては休憩の繰り返し。腹減ったよ~。


午前4時39分、鬼押し出しへの入り口

 幾多の艱難辛苦を乗り越えて、鬼押ハイウエーの入口にたどり着いた。羽根尾から何もない真っ暗な道を延々と上ってきたが、ようやく人の臭いを感じる所に出てきた。レストランもあったが、当然営業してない。「ハンバーグ」と書かれたのぼりがうらめしい。


午前4時54分、雨宿りした焼とうもろこし屋

 その先にあったとうもろこし屋は最高だった。何たって屋根がある。ようやくゆっくり腰を下ろして休むことができた。これでとうもろこしが食べられればもっと幸せなんだが・・・。


午前5時13分、峰の茶屋

 とうもろこし屋の軒先でのんびり過ごし、体力を回復させる。そして「峰の茶屋」の標識。ここがピークだと思ったのだが、世の中、甘くない。
 
 実は鬼押ハイウエー入口あたりからはアップダウンが続くようになる。「これを上れば・・・」。そう何度も思うのだが、希望は常に打ち砕かれる。一体、どこまで上ればいいんだ?


午前5時22分、やっとピーク到着

 朝も完全に明けたころ、待望のピークに到着した。標高は約1400メートル。約20キロで約750メートルを上った。長かった・・・。
 
 ここにもレストランがあったので、その入り口付近でレインウエアを脱ぐ。雨はいつの間にかあがっていた。これで上りはおしまい。後は下って、軽井沢駅で駅弁でも買うか。「もし渋峠に登っていたら」と思うとちょっと恐ろしい。帰りにこの道は上れなかっただろう。20キロの上りはやっぱり辛かった。

※峰の茶屋
  午前5時22分
  231.75km
  av22.0km/h
  走行時間 10時間29分40秒
  グロス  14時間39分



午前6時34分、中軽井沢へ

 降りるにしたがって路面は濡れていないところが出てくる。やっぱり標高の高いところしか降っていなかったのか。
 
 明るい中を気持ちよく降りていたら、路肩に何かいる。何だろう?
 
 もしかして、サル? お~! サルだよ。5~6匹いるぞ。周囲にはレストランやホテル、別荘が現れ始めたところ。なのに野生のサルがいる。やばいよ。目を合わせないようにしなきゃ。いや、引き返そうかな? あ、でも上りだからいやだな。写真も撮れないぞ。下手な動きをしたら狙われる。困ったな~。多勢に無勢だしどうしよう。
 
 「軽井沢がサル被害に遭っている」という事実をその時点では知らなかったのだが、自転車を漕いでいて野生のサルに出会うなんて、48年の人生で初めてのシチュエーションだ。車だったらどうってことないが、自転車だしなぁ。それにひとりだし・・・。
 
 悩みながらゆっくり降りていたら、下から車が数台上ってきた。でもサルたちは悠然と路肩を歩いている。人が通っても気にしないようだ。え~い、行っちゃえ。下りだし、追いかけられても逃げ切れるだろう(ホントか?)
 
 サルたちの間を何事もなかったように降りていく。緊張の一瞬。
 
 サルは私に見向きもしなかった。良かった。無事、脱出した。
 
 危機を乗り越えてしばらく降りるとセブンイレブンがあった。やっと食料にありつける。日本のコンビニはまさに地獄に仏、ナイトランの自転車海苔のオアシスだ。
 
※セブンイレブン中軽井沢店
  午前6時14分
  グロス  15時間31分

  
 おにぎりと玉子スープで生き返る。518円也。
 

午前7時14分、軽井沢駅

 中軽井沢からは路面のまったく濡れていないR18を軽井沢まで走る。碓氷峠から高崎と思っていたが、この天候だと霧の可能性が高いし、走る気力も萎えてきたのでここでゴールにしよう。「勝手にブルベ320」は、「勝手にブルベ246」で終了だ。

※ゴール 軽井沢駅
  午前6時46分
  246.06km
  av22.1km/h
  走行時間 11時間5分33秒
  グロス  15時間59分
  コンビニ費用 合計2810円(プラス自販機での補給500円ぐらいかな)
  

  
 渋峠へのチャレンジは雨に流され、暗闇の中を走った印象しか残らなかった今回のツーリングだったが、闇夜の雨のライドや補給のタイミング、そして不測の事態に対する準備など、いろいろ経験になった2日間だった。
 
 軽井沢からは東京、新横浜と新幹線で輪行。新横浜からの自走帰宅がまだあるので、ビールは飲めない。これが一番辛かったりして・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●月日 07年7月21日(土)~22日(日) 
●天気 曇り~雨~曇り
●ルート 自宅(21日午後2時半ごろ)~境川~橋本~八王子~拝島~狭山~坂戸~東松山~藤岡~高崎~渋川~吾妻峡~長野原草津口~羽根尾~北軽井沢~軽井沢~(輪行)~新横浜~自宅(22日午前11時半ごろ)
ルートマップ

 ◆サイコンによる記録(自宅~軽井沢、新横浜~自宅)
       距離 264.39km
       平均時速 21.9km/h
       走行時間 12時間2分12秒
       最高速度 52.1km/h
       ※07年の通算 6926.67km
              ロード 3771.33km
              BD-1  2882.12km
              MTB  0238.26km
           ママチャリ  0035.00km
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  ←ランキング参加中です。よろしければクリックを!

 にほんブログ村 自転車ブログへ←こちらも、よろしければもうひと押しを

コメント(17|Trackback()



« 年間7000キロ突破 標高2172mの渋... »
 
コメント
 
 
 
おつかれさまでした。v(^o^)v (TET)
2007-07-26 05:45:17
心が折れそうになったところでの雨はホントにつらいですねぇ。
渋峠は残念でしたが、そのうちリベンジできますよ。

最高の教科書をありがとうございます。v(^o^)v
 
 
 
一人で320kmを目指すとは (ヒロ)
2007-07-26 12:33:28
こんにちはヒロです

一人で320kmを走ってみようと思われるところがすごいですね。
正直、今300や400のブルベを走るかといわれると、ちょっと心が折れています。

特に雨の夜間走行はトラウマ気味です。
 
 
 
雨が (境川のmasa)
2007-07-26 17:12:37
>TETさん
高崎か渋川あたりで降ってくれると、のんびり1泊できたんですけどねぇ。あそこで降るとは・・・。最悪のタイミングでした。心はズタズタ、体はヘロヘロになりました(泣)。
挫折ネタなので教科書になったかどうか分かりませんが、8月末のライドは頑張って下さいね。

リベンジは・・・まず200キロですからねぇ。どうしましょ?
 
 
 
午後のスタートなので (境川のmasa)
2007-07-26 17:13:50
>ヒロさん
付き合ってくれる人はいないでしょうね(笑)。

辛いのは渋峠への30キロだけと思ってましたから、走る気になりました(実際は北軽井沢への20キロも辛かったです)。それに、午後のスタートだと距離的に200キロ走らないと朝にならない。ま、仕方ないかということで・・・。
300、400と走ったブルベが私の距離感覚を破壊したのも事実ですが(笑)
雨の夜間走行はできれば避けたいですが、山の中で逃げ込むところがありませんでした(泣)
 
 
 
「冒険」ですね (weatherman)
2007-07-27 00:06:37
はらはらしながら一気に読ませていただきました。これは「冒険」ですね。車ならなんてことない道のりですが、自転車でとなると、前人未到の冒険みたいです。
お疲れ様でした!
 
 
 
Unknown (TOMOKI)
2007-07-27 00:53:11
境川のmasaさん、こんばんは!!
楽しく読ませていただきました!!渋峠への挑戦は残念でしたが、軽井沢まで行くなんて凄いです。自分だったら、家に帰ってます(汗)
しかし距離感が一般人と違ってきてますね~(笑)

自転車に乗っていても車の距離にしか思えません。。。

そうそう、自分も来月予定が合えば自転車を【車】に積んで秋山郷に行こうと考えています。
一人で山岳を楽しめたら良いな~♪
 
 
 
光栄です (SST)
2007-07-27 18:18:26
コメントさせていただくのは初めてかもしれません。
これからもヨロシクお願いいたします。
私の拙いエントリーが少しでもお役にたてたのでしたら光栄です。
でも、今回のmasaさんのエントリーは、直江津組には大きな指針となると思われます。
いつかお会いできる機会を楽しみにして・・
ではでは
 
 
 
ようやく全容把握しました (おいちゃん)
2007-07-27 22:03:38
地図を見ながらようやくどこを走られたのか理解しました。20Kmで750mののぼり(平均3.5%)は青葉300Kmの本栖の登りよりきついですね。一人で登っていて後ろに誰かいたら昇天します(笑)。
直江津は遠いです。

いい教科書だなあ、ありがとうございます!
 
 
 
天気は最大の敵ッスね (masa@あぁ、湘南)
2007-07-27 22:18:03
真っ暗な道を一人で行く怖さを懐かしく思い出しながら読みました。
どこのルートを行っても、この暗闇との闘いがありますね、新潟。

地図といい、ルートの詳細といい
直江津集合!の参考文献として紹介します。
 
 
 
前人未踏! (境川のmasa)
2007-07-27 23:12:33
>weathermanさん
あんな時間にあそこを走っているという意味でいうと、前人未踏かもしれませんね(笑)。普通、計画もしないッスよね。でも自転車だからドラマになるんですね。自分の足であそこまで行ったんだと思うと、ちょっと嬉しいッスね。
 
 
 
ブルベを走れば・・・ (境川のmasa)
2007-07-27 23:13:27
>TOMOKIさん
深夜に草津なんて着いちゃうと、家に帰れません。きっと温泉街も静まりかえっていることでしょう。だから走るしかないんスよ(笑)。TOMOKIさんもブルベを1回走れば、距離感覚が変わりますよ。来年、走りましょうね!

秋山郷は私も車ですよ。100キロ走る前に、200キロ以上自走するなんて、そこまでは壊れてないッス(笑)
 
 
 
役立つどころか (境川のmasa)
2007-07-27 23:18:28
>SSTさん
SSTさんのエントリーがなければ、直江津はR20からのアプローチしか考えていませんでした。車で関越道もあまり走ったことがないので土地勘もなく、自分の頭の中の地図から抜けていたところでした。

直江津ではご一緒できませんが、そのうちお会いできるかと思います。今後ともよろしくお願い致します。
 
 
 
ありがとうございます (境川のmasa)
2007-07-27 23:56:36
>おいちゃんさん
すべてのエントリーにコメントして頂き感謝です。

本栖は上りきってから雨でしたが、今回は上り始めてからの雨ッス。後ろも振り返らず、黙々と上りました。辛かったですけど、もう忘れました(笑)。暗闇なので覚えるような風景もなかったですし・・・。

直江津集合! は頑張って下さい。SRのおいちゃんさんなら余裕ッスね。
 
 
 
暗闇だけなら (境川のmasa)
2007-07-28 00:04:35
>masa@あぁ、湘南さん
いいんですけどねぇ。雨は困りますよねぇ・・・、ホント。
新潟は暗闇との闘いをどこでするかが、みなさんの悩みの種かな。

直江津集合! は楽しいオフ会になるといいですね。お気を付けて、2000メートル級の峠を2つ越えて下さい。
 
 
 
そのモチベーション・・・ (noahpon)
2007-07-29 09:49:27
全編一気読みさせていただきました。
孤独なナイトロングラン・・・・
一人でロングナイトランできるそのモチベーションを少しおすそ分けください。
masaさん、すごいです。。。。私もがんばらナイト(^^;
 
 
 
9月部屋では (境川のmasa)
2007-07-30 21:48:09
>noahponさん
孤独なナイトランが早くも約束されてますからねぇ(笑)
どこかで練習しておかないとと思ったのですが・・・。

今考えると、午前0時過ぎにあんな道をよく走ったもんだと思いますね。自分のエントリーを読み返すと、怖さが今ごろ涌いてきます・・・。

モチベーションは・・・「目指せ!SR」。それだけッス。それがなきゃ、走ってなかったかも。
 
 
 
こんにちは (ゆううまん)
2007-08-05 23:01:26
自分も7月25日に渋峠登ったんですよ!!

ママチャリで。笑

なんかコースも似てて懐かしかったです

やっぱ雨はきついですね

なんか、これからも頑張ってください!!
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。