今日の一貫

ニッポン農政の不思議 日経新聞 5月20日21日

5月20日21日の日経新聞に、「ニッポン農政の不思議」と題する記事が上下で出ている。
実はこの記事スルーしていました。

二つの事情で存在を知ったもの。一つは「散人」のブログ。
このごろ、農政ネタが少なくなっているのですが、久しぶりのこの農政ネタ紹介。
もう一つは、浜美枝さんからのメール。日経「人間発見」に農政ジャーナリストという肩書きで出ているとのこと。この肩書き、あまりお好きでないらしい。
「田園美評論家」なんてのも良いと思いますが、、日経夕刊、実は、仙台にはない。
そこで、早速「農政」で記事検索。

ありました。
同時に、「ニッポン農政の不思議」もありました。

「農政の不思議」の様な書き方は私はすきです。
内容ももっともなものです。
農政はこうしたことをシンプルに議論しなければならないと思います。
良い?わけは、
問題の所在が端的に表現されているからです。

こうした問題への農政当事者の回答は、おそらく、「生産者を保護するために」、、というのでしょう。

果たしてこれで生産者は保護されているのか?も議論の素材になります。
保護の実態をオープンにすることも必要です。
酪農家に、あなたは保護されてるんですよ、、といったら酪農家は果たしてなんと応えるでしょうか?
コメ農家や、麦農家に、あなたを保護するために、政府は、莫大な金を消費者負担にしてるんだよ、といったら、コメ・麦農家はなんと応えるでしょうか?

ましてや、讃岐うどんを毎日食べてる人は、農家に補助金を与えるために食べてるようなものなんだよ、、といったら、おそらく農家は、憤慨するのではないでしょうか。
そうしたことを突き詰めていくと、もっと違った仕組みの保護政策はないのでしょうか?となるのが筋だと思います。
そこから本当の農政論議がはじまるのだと思います。


しかし、農政当事者は、、政策の継続性にとらわれて、、
(というとそれなりに説明したような気がするのでしょうが、、、、何のことはない、、過去のしがらみや、、自分で責任取りたくない、、といった考えにとらわれて、、面倒なことはやりたくないだけなのですが、、)
なかなか、農政を大胆に変え様とはしません。

ですから、こうした、シンプルな疑問はこれからもどんどん書いてもらいたいと思います。
日本の農政が「おかしい」のですから、、いやいや、、「不思議」なのですから、、。

農政を専門家にしかわからない、訳のわからない領域に閉じこめてきたのが問題なのです。
その典型例が、昨年の「品目横断」だったのではないでしょうか?
あれは農家にどれだけ説明してもなかなかわかるものではありませんでした。
過去に「ニッポンのコメ」を書いた際に、「崩壊に向かう複雑なその仕組み」と副題をつけたのですが、実態はその逆で、ますます複雑になってきて、摩訶不思議な世界になってしまいました。
そうした意味では不明を恥じるばかりです。




以下要約なのですが、最後に記事をそのまま引用しておきましょう。
「海外不足でも、国内コメ余り」
「米不足で、世界の米価格の上昇が上がってるが、国内は政府の価格操作で上がっている」
「コメあまりの日本が、コメ不足の世界からコメを大量輸入するという不思議」
「そのコメを巡り国が実施した入札で、はじめての落札ゼロ」
義務輸入なのに、政府の手におえなくなった。
圧巻は、「世界がコメ不足と価格高騰に悩み、どう融通しようか議論している。日本は無理矢理減らし、価格の底上げや輸入米の取り扱いに政府と業界団体四苦八苦する。」
不思議だらけのコメ大国。農政の瞑想はいつまで続くのか、、と続く。

21日の記事は、
「国の保護厚いほど品薄感」
バターは、㎏985円の高関税をかけている(360%)。そのため、国際価格が上がると、企業が国産バターに手を出し始め、国内でのバターの品薄に拍車をかけた。これに対し、チーズは、自由化品目名ため、国際価格が上がればそのまま消費者価格へ転嫁。需要が変動するが、それを見越して輸入量を調整。
「食糧自給、そのための国内生産保護と言うが、国の保護が厚い品網ほど、品薄感が強まる皮肉な事態が、、」
「小麦も、値上げ幅は、国際価格値上がり幅より、政府の補助金相当額(マークアップ)の方が高い(トン1万4千円とトン1万7千円)」これで、香川さぬきうどん協同組合、は加盟120店舗でうどん一玉30円から50円の値上げという。



以下引用
ニッポン農政の不思議(上)海外不足でも国内コメ余り――続く輸入義務、輸出も制約。2008/05/20, , 日本経済新聞 朝刊, 5ページ, 有, 1405文字


 コメや小麦、大豆の国際価格が高騰し、パンや麺(めん)、バターなど、身近な食材の値段も上がりはじめた。だが一皮むけば、日本の食料事情は世界とまったく違ったメカニズムで動いている。ニッポン農政の不思議をのぞく。
国なお強く関与
 五月の連休明け。都内の一部の米穀店で、コメの値段が上がりはじめた。銘柄米で十キログラムあたり百―二百円程度。世界のコメ価格の上昇が日本の食卓に及んできたのだろうか。
 答えはノーだ。値上げした米穀店は「政府や商社がたくさん買っているため」と説明する。政府がコメを買い上げ、価格上げを誘導した効果がじわりと店頭に及んでいるためだ。
 コメの価格には、今なお国の関与が強い。昨年にはコメの余剰感が出て価格が下落。政府は農家保護のための緊急対策として、有事に備えて保管する備蓄米を買い増すことを決めた。
 日本人が一年間に食べるコメの量は、二〇〇六年度に一人当たり六十一キログラム。最も多かった一九六二年度の半分程度で、食生活の変化で減り続けてきた。足りない世界とは逆に、日本では恒常的にコメが余る。それを避けるために水田の四割でコメを作らない減反政策で生産量を強引に減らし、価格を政府が支える。
 価格が安い世界のコメ取引から日本のコメを切り離し、伝統的なコメづくりを保護する、というのが日本の農業政策の絶対理念。コメを聖域と位置付け、市場のメカニズムを遠ざける。高い日本産米の価格は意図的に導かれた結果だ。
 それでも、かつて七―八倍とされた国産と海外産のコメの価格差は今では三倍程度に縮んでいる。仮に減反して価格を維持することだけにとらわれず、自由にコメをつくり、大規模化で効率を高めていたら――。
 もちろん国内農家が崩壊することなく生産量を増やせたらという仮定だが、内外価格差はもっと縮んで輸出大国として世界のコメ不足を解決する立役者になっていたかもしれない。
 「コメ事情」が塗り替わる世界の中で、日本は特異な存在だ。それはコメ余りの日本がコメ不足の世界からコメを大量輸入するという不思議にも表れている。
 「ミニマムアクセス(MA)」という名のコメ輸入だ。コメ市場を全面開放しない代わりとして日本政府が受け入れを決めた制度。不要でも一定量を輸入する義務を負い、国内年間消費量の一割にあたる七十七万トンを毎年輸入している。
「保護」が足かせ
 四月二十二日。そのMAのコメを巡り国が実施した入札で、初めての「落札ゼロ」が起きた。外国産米の価格があまりに上がったため国が想定する購入価格を超えてしまったのだ。「義務」のはずの輸入も、政府の手に負えない。農水省は「とりあえず様子見」(幹部)を決め込んでいる。
 国内外から買い上げて、政府がため込んだコメは合計二百三十万トン。輸入米は加工用や飼料用に回しても余ってしまう。一方で日本のコメは、昔ながらの保護のもとで海外産に対抗する競争力も育ちにくく、こちらも余る。どちらにも多額の予算が注がれている。
 世界がコメ不足と価格高騰に悩み、どう融通しようか議論している。日本は生産を無理やり減らし、価格の底上げや輸入米の取り扱いに政府と業界団体が四苦八苦する。経済連携協定(EPA)では「国内農業保護」がいつも足かせになる。不可思議だらけの「コメ大国」。農政の迷走はいつまで続くのだろう。
【図・写真】政府は毎年77万トンのコメを輸入。そのまま保管されるものも多い

ニッポン農政の不思議(下)バターとチーズ、同じ乳製品でも…。2008/05/21, , 日本経済新聞 朝刊, 5ページ, 有, 1456文字


国の保護厚いほど品薄感
 「安定供給できるまではお一人様一点限りでお願いします」――。都内のスーパーでは、バター売り場にこんな注意書きを掲げる。バターの品薄が今春、消費者の混乱を招いたが、同じ乳製品でありながら、チーズは豊富に並ぶ。なぜか。
急な増産難しく
 からくりはこうだ。バターは年九万トンの需要のうち、国産品が九割を占める。国内では生産者団体が需要を予測しながら生乳を計画的に減産していた。バターの急な増産は難しく、家庭用バターの品薄につながった。
 バターは輸入すると価格に対して二九・八%の税率に加え、一キログラムあたり千円弱の高関税がかかる。一キロ六百円のバターを輸入すると、通関後は三倍近い千七百六十四円になる。
 乳製品の国際価格が上がると、これまでバター入り生地など半製品を輸入していた企業が国産バターを買いはじめ、品薄に拍車をかけた。独立行政法人を通じて一定量を低関税で入れる仕組みはある。輸入の前倒しを急ぐが、入札枠は限られている。
 これに対し、自由化品であるチーズの関税は輸入価格に対して二九・八%のみ。需要の九割を輸入する構図だ。国際価格が上昇すれば店頭の値段も上がるが、輸入事業者は需要に応じて購入量を調節。事情はバターほど深刻ではない。
 なるべく輸入に頼らず、食物の自給率を高める。安定供給のために高関税で国内農家を保護するのが、ニッポンの農業政策の中核だ。だが今回は国の保護が厚い品目ほど、品薄感が強まる皮肉な事態が起きた。
 「これ以上の値上げはもう難しいよ」。讃岐うどんの本場、香川県。さぬきうどん協同組合(高松市)では、加盟社の約百二十店舗で、うどん一玉当たり五―三十円を昨年から値上げした。
補助金分上乗せ
 政府は今年四月、輸入小麦の売り渡し価格を三〇%引き上げた。一トンあたり約五万三千円だった価格は、約六万九千円に跳ね上がった。組合の大峯茂樹理事長は「原料小麦の国際価格高騰が響いた」と嘆く。
 小麦高値の原因はそれだけではない。政府は購入価格に、一トン約一万七千円の補助金相当額などを上乗せして売り渡し価格を決める。補助金相当額は今回の値上げ額を上回る。
 小麦は国内消費量の約九割を輸入に頼り、基本的に政府が管理する。農林水産省は「本来のルールではもっと大幅に引き上げる必要があった。今回は消費者のため価格を抑えた」と主張する。
 だが価格を抑えた分は国が財政手当てをする。年約九百億円におよぶ農家への補助金も税で負担し、減らさない。国民は「見えないコスト」を支払う。
 世界貿易機関(WTO)は十九日、農業交渉に関し、先進国が農産物関税を単純平均で五四%削減するとの議長案を示した。日本政府は関税の大幅削減には反対を続けている。保護策など無理を重ねた制度設計には、国内できしみが出ている。国際価格の高騰が、国内の農業政策の矛盾をあぶり出す。
【表】主な品目の関税率      
   実際の関税率   実質ベースの関税率
コメ(精米)   1キロ当たり341円   778%
小麦   1キロ当たり55円   252%
小豆   1キロ当たり354円   403%
粗糖   1キロ当たり71.8円   305%
バター   価格の29.8%+1キロ当たり985円   360%
チーズ   価格の29.8%   29.8%
(注)実質ベースの関税率は、重量に対する関税を価格に直して計算      
【図・写真】バターの品薄を知らせる表示を出したスーパー。陳列されているのはマーガリン(東京都品川区)
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