今日の一貫

農政を考えるには、ちょっとした常識のテストが必要

我が国の農政を考えるには、ちょっとした常識の転換がいりそうだ。
たとえば、
「日本は、食料自給率が低く世界最大の食料輸入国になっている」と嘆くのが常識となっているが、本当か?
常識は、疑ってかかった方が良い。

1,日本は世界最大の食料輸入国か?

①食料輸入額の多い順に主要国を並べると、アメリカ、ドイツ、日本、イギリス、中国、フランス、イタリアとなる。
世界最大はアメリカ。
そしてドイツ、次いで日本。日本とイギリスの額はさして違わない。
まー、世界でも多い方であるのは確かだろう。

②人口一人あたりにすると、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、イタリア、日本、オーストラリア、韓国の順。
量(一人あたり)で見ても仏、独、英(多い順)より少ない。


我が国の食料輸入量や輸入額は、英・独・仏より少ないか、あるいはせいぜいが同程度。
先進国としてみれば普通
「日本は世界最大の食糧輸入国」などというのは誇張が過ぎるといえまいか。

2,日本は世界の農業貧国だ?

日本は、どんなに努力しても、世界の農業にかなわない。
農業の弱い、農業貧国である、といわれている。
これも本当か?
みる局面にもよるが、

日本は、農業総生産(GDP)で、中国、インド、アメリカ、ブラジルに次ぐ、世界5位の農業大国なのは確か。
産出額の統計が手元にないが、おそらく産出額も上位だろう。
産出額や農業総生産で見る限り、日本は農業大国である。

3,農産物輸出が少ないのが課題
ただ、他の国と違って農産物輸出が極端に少ない。
農家が内向きで、保護されているから、国内市場に甘えてしまっているためだ。

農産物の輸出額の順位は、アメリカ、フランス、ドイツ、ブラジル、イタリア、カナダ、オーストラリア、中国、イギリス、タイ、インド、ロシア、韓国、日本の順の最下位。(これには、デンマークやオランダは入れてない)

4,とすれば、日本の農業の課題も自ずから明らかになってこようというもの。
日本の農業はこのままでいい訳はない。
縮小再生産過程に入っている。
農業縮小論、農業貧国論に影響されて、人材が枯渇してしまったのが最大の課題か。
また国際市場を無視してるいる点も問題。

5,結論
世界最大の食料輸入国、低い食料自給率、の主張は、ためにする議論。
食料輸入(量・額)は、英・独・仏より少なく、先進国としてみれば普通。
しかも農業総生産(GDP)は世界5位の農業大国。

「日本が世界最大の輸入国で農業貧国」との主張は、おそらくWTOやFTAで、「日本農業は弱いんです、もう充分に輸入してるじゃないですか」と主張したいから作り上げた虚構なのだろう。
「食料自給率」などと言う概念は世界のどの国でも使ってない。粉飾し防衛するために農水省が作った概念なのかもしれない。

民主党も、「主要穀物等では完全自給を目指す」などと言う虚構にすがらず、もっとリアリティのある農業政策を作った方が良いと思う。

「日本農業弱体論」からは、せっかく世界5位の生産額を誇りながらも、それを成長産業化する手法は生まれてこない。
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