円の外へ

20070121開設/中学高校国語授業指導案/中学校学級経営案/発達症対応/生活指導/行事委員会指導

中学国語指導案俳句・岩鼻やここにもひとり月の客

2010-07-26 19:14:46 | 中高国語など指導案
2010up
中学国語指導案俳句・岩鼻やここにもひとり月の客/向井去来
2010年5月8日(土)サークル模擬授業
(想定中学3年対象)
1 ねらい
 去来の作句に芭蕉が意見し「自称の句」にさせた由来がある。詩中の語句・情景から話者が一人かどうかを検討させる。

2 授業案
「5分間用」模擬授業案/(原文は配ってある)

指示 岩鼻やここにもひとり月の客、全員でさんはい。(読む)
指示 10点。三回練習しなさい。
   プリントは持ってるかな。足の裏は床についてるかな。腰は伸びてるかな。
指示 全員でさんはい。(読む)50点。天井に届くようにさんはい。(読む)
   百点、百点、百点、三百点。マルつけコンビにうまかったよと言ってあげます。

発問1 話者は何を見ていますか。(月)

発問2 それでは「月の客」とは何をしている人ですか。(月を見ている人。お月見。)

発問3 どんな月ですか。(満月)

発問4 月以外にも見えているものは何ですか。(岩鼻)

発問5 「岩鼻」とは何ですか。(岩の突端。写真見せる)

発問6 「月」と「岩鼻」はどちらが重要だと思いますか。(岩鼻。切れ字)

説明  お月見の句なのに「岩鼻や」となっている。名月やではない。不思議ですね。

説明  もう一つ不思議があります。「ここにもひとり」と書いてあるのに、他に誰かいるとは書いてない。
(岩鼻や・ここにも、と板書)

発問7 月の客は、一人・二人以上、どちらですか。プリントに書きなさい。
(・一人・二人以上、と板書)
(全員書かせて人数確認。板書)

指示  理由を書きなさい。
(本来は持ってこさせて丸つける)
(様子を見て書き終えたものが出始めたら)

指示  指名なし発表です。書けた人から立って言いなさい。
(本来は少数派からだが時間がないため)
(時間を見て切る)

説明  次回は意見を作文にまとめましょう。終わります。

「50分間用」模擬授業案(原文は配ってある)

指示 マルつけコンビでジャンケンポン。負けた方が三回読みなさい。うまいねと言ってあげる。勝った方が二回読みなさい。天才と言ってあげる。

発問1 季語はどれですか。(月・月の客)
(細切れの指名で次々さす)

発問2 季節はいつですか。(秋)

発問3 切れ字はどれですか。(や)

発問4 岩鼻とは何ですか。(相談させる。岩の突端。突き出た岩のはし。)

発問5 話者は何を見ていますか。(月)

発問6 「月の客」とは何をしている人ですか。(月見をしている人)

発問7 月とはどんな月ですか。(満月)

発問8 なぜ三日月でなく満月なのですか。(客としてわざわざ見るほどの月だから)

発問9 話者はどこにいますか。(ここ)

発問10 「ここ」とはどこですか。書いたら持ってきなさい。

指示 指名しないので立って発表しなさい。
(岩鼻の上。岩鼻の下。道。野原。河原。砂浜)
(岩鼻のそばであればよいとする)

発問11 「岩鼻」と「月」重要な言葉はどちらですか。(岩鼻)

理由は。(切れ字「や」がついているから)

説明  お月見の句なのに「岩鼻や」となっている。名月やではない。不思議ですね。

説明  もう一つ不思議があります。
「ここにもひとり」と書いてあるのに、他に誰かいるとは書いてない。
(岩鼻や・ここにも、と板書)

発問12 月の客は、一人・二人以上、どちらですか。プリントに書きなさい。
(・一人・二人以上、と板書)
(全員書かせて人数確認。板書)

指示 理由が書けたら持ってきなさい。
(ノートに丸をつける)

指示 指名なし発表です。人数の少ない方から。
(反論もうながす)

指示 討論を参考にして理由を10行以上書きなさい。
(例=400字詰め原稿用紙20字×18行・題と氏名含み20行)
月の客を検討する
三年一組三番 ** ** 

一人だ。

まず、話者は目の前に、岩鼻というどっしりと大きな自然を見る。次に月を見る。岩鼻が毎晩月の下にあることが話者にはわかる。だから、岩鼻や、となる。
岩鼻はいつも月の客だが今夜は私も月を見せてもらいます、ちょっとおじゃましますという気持ちである。

また、切れ字によって強調された岩鼻に向かって「ここにもひとり」と言っていると感じられる。人間にではなく、岩鼻に向かっていると考えるほうが人間と自然の対比が引き立つ。

大きな自然の中にぽつんと一人話者がいる。他に人間がいては、自然と人間との対比が弱まる。ぽつんと一人いるから、人間の小ささと岩鼻の大きさが際立つのである。

だから、一人だ。

<他にも問うとすれば:>

●「ここにも」と「ここには」ではどう違うか。
(ここにも、の「も」は並列か強意か。)

●「ここにもひとり」と話者は誰に語っているか。
(語りかけているような感覚は<ここ>から来る。『上にも一人』『下にも一人』であれば語りかける感じはない。<ここにも>からはここ以外の場所にも見ている者がいるぞ、の意味が取れる)
(では、岩鼻・月、どちらに向かって語っているのか。ここでは切れ字の強調から岩鼻とする。いずれにしても、別の人間に向かって語っていると読むよりも、自然物に向かっていると考えるほうが人間と自然の対比が引き立つ)

<資料説明・前実践の主発問例>
http://www.geocities.jp/ac_ueno/chousen2.htm
法則化サークル富士桜 上野敦司
●「ひとり」とは「岩鼻」のことですか,「月の客」のことですか。
●月の客は何人いるのですか。
http://www13.ocn.ne.jp/~koyachan/iwahanaya3.htm
小山博史(法則化サークル富士桜)
●話者に、「客」は見えているのですか。
●「客」から、話者は見えているのですか。
http://www1.ocn.ne.jp/~tashiro/iwahana.html
TOSS SANJO田代勝巳
●「月の客」とはだれですか。
●「ひとり」とは話者のことですか。それとも話者ではなくて別のものですか。
http://homepage3.nifty.com/daisuke-watanabe/iwahanaya.html
山梨 渡辺大祐
●芭蕉はどこから見ていることにしなさいといったでしょうか。絵の中に目玉を書き入れてくださ
http://homepage2.nifty.com/melkappa/classic-Shomonmeikakusen-kyorai.htm
●なぜ自称のほうが良いのだろう。月がこうこうと照る場面に先客を認めることで、自分はその場面に付けたしの存在のような者ですがというニュアンスが加わり、句が軽くなるからだろう。芭蕉の説く「軽み」の考えがよく分かる解釈である。
http://homepage3.nifty.com/daisuke-watanabe/iwahanaya100.htm
●岩鼻やここにもひとり月の客 発問100
http://2.suk2.tok2.com/user/yahantei/?c=001&pp=210
seisei diary
●去来自身が、明月に興じていると、岩頭にもう一人月見の風雅な人を見つけた、の意で作った句を、芭蕉が、作者自身の姿を描いたものと解すべきだとした、という。「月の客」を、他称ではなく自称にすることによって、風狂(風雅にひたりきること)人の姿を見いだし、より味わいの深い句となった。
http://www.furutasigaku.jp/jfuruta/tyosaku3/j3shin6.html
親鸞探究者の群れ
●"月のいい晩、わたしは月の夜の風情を求めてさまよい出て、崖の岩鼻の所へ行った。ところが何と、そこにはすでに先客がいた、おお、あなたも、わたしと同じ風雅の友か。" こういった意味です。ところが芭蕉はこれを聞き、独特の別解を与えます。 "これを「自称の句」とせよ。" と。つまり、「ここにも」の「も」を "並列(へいれつ)" ではなく、 "強意" に解し、"ここ岩鼻の上に、わたしひとり天空の月に相対している。この寂(せき)たる天にも地にも、ただわれと月とあるのみ。" こういう意味の句にせよ、というわけです。(注:下線伊藤)


<思ったこと・感じたこと・気づいたこと>
(HKさん)
○リズムとテンポが良く、授業に入りやすかったです。
○お互いに褒め合ったり評価し合えたので、導入のやり方はとても勉強になりました。
○最後まで悩む発問で、頭をフル活用しました。どのように中学生におとすのですか?

(Iさん)
一人月を愛でている自分。
そこに天空に突き出た岩鼻が目に入り、
それを「月の客」としてとらえたのだなあと解釈できました。
発問時の先生の迫力と真剣なまなざしに圧倒されつつたのしい授業でした。

(Wさん)
○流れにテンポがあり良かった。
○岩鼻の上でひとり読んでいる俳句となるのだと理解した。
○平仮名のひとりは何か意味があるのか知りたい。

(HYさん)
○どこに着眼点をもっていくかで月の客が広がりをもつと思い、ハッとさせられました。
○順々に1問1答のような発問が、
それには即答できても、最後の質問は、色々な意見がでてきて、おもしろかったです。

(AMさん)
二人か一人かと聞いた時点でズレが生じたと思う。
「も」なのだから( )も( )も月の客、と問えばよいと思う。
・・・ゆらしたかったのならよいのだが。

(ACさん)
なんということはない、と思ったのに、
とても奥行きがあって、びっくり、わくわくしました。
こうやれば―こういう揺れる授業ができるといいんですね。
改めて感心しました。

(Kさん)
○授業に緊張感があり、
また、発問に対してのこたえ方についての指導がされている為、
授業を重ねるにつれてきちんとした”こたえ方”が身につくと思いました。
○また、全員の意見をきくことができるのがとても素敵だと思います。
ありがとうございました。

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