語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【消費税】増税しなくても10兆円増収する法 ~金持ちの「高い所得税」の抜け穴~

2013年10月13日 | 社会
 (1)消費税によって、低所得者ほど打撃を受ける。低所得者は、収入のほとんどを消費に回すので、収入に対する消費税の負担率が高い。
 他方、高額所得者の消費は、収入のごく一部であって、収入に対する消費税の負担割合は低い。投資や貯蓄には消費税がかからないからだ。

 (2)年収200万円以下の低所得者層が1,000万人を超えた。派遣など有期雇用労働者も1,400万人を超えている。こうした中、消費増税すれば、苦しい生活を強いられてきた人がさらに苦しくなる。格差社会がさらに深刻化する。
 「格差社会」や「喪われた20年」の時期と、消費税導入時期はリンクしている。

 (3)政治家や財務省は、これまで「日本の所得税は世界的に見て高い。上げるとしたら消費税しかない」と、国民に消費増税を喧伝してきた。
 しかし、この論拠は実は大きな欠陥がある。
 確かに、日本の高額所得者の所得税率は45%であり、世界的に見て高い(米国は40%)。
 しかし、これにはカラクリがある。日本の金持ちの所得税にはさまざまな抜け穴があって、名目税率は高いけれども、実質的な負担税率は驚くほど安いのだ。

 (4)先進主要国の国民所得に対する個人所得税負担率を見ると、次のとおり。国民全体の所得のうち、所得課税されているのは何%かを示したものだ。国民全体の所得税の負担率を示したものだ。
   英国・・・・13.5%
   ドイツ・・・・12.6%
   米国・・・・12.2%
   フランス・・・・10.2%
   日本・・・・7.2%
 日本は、断トツに低く、英国の半分だ。
 個人所得税は、先進国ではその大半を高額所得者が負担している。国民全体の所得税負担率が低いということは、それだけ高額所得者の負担が低いということだ。
 つまり、日本の金持ちは、先進国の金持ちに比べて断トツ税負担率が低いということだ。
 日本の金持ちは、名目の税率は高くなっているけれど、実際に負担している額は非常に低いのだ。
 庶民や低所得者の犠牲の上に大企業・金持ち優遇が成り立っている構図は、働く者に不当・不法な働き方を強いて「繁栄」していくブラック企業に似ている。

 (5)なぜ日本の金持ちの実質税負担がこれほど低いかというと、日本の金持ちの場合、抜け穴がたくさんあるからだ。
 <例>日本の金持ちの中で非常に大きい比重を占めるのは(a)投資家と(b)開業医。
  (a)投資にかかる税金は現在原則として10%でいい。新米の会社員の税金よりはるかに少ない。
  (b)開業医は、社会保険料収入が5,000万円以内なら、収入の約7割が自動的に経費として計上できる。つまり、課税されるのは3割だけ。

 (6)(5)のような抜け穴があるため、金持ちの税負担は非常に少なくなり、必然的に日本の所得税の収入が非常に少ないのだ。日本の税制は、金持ち優遇の「ブラック税制」だ。
 もし、金持ちの税金の抜け穴をきちんと塞ぎ、日本の所得税収入を先進国なみに引き上げることができれば、概算10兆円の増収となる。
 消費税を増税する前に、金持ちからきちんと税を取れ、ということだ。

□武田知弘(経済ジャーナリスト)「「高い所得税」という政府・財務省のウソ 金持ち優遇の「ブラック税制」である」(「週刊金曜日」2013年10月11日号)

 【参考】
【消費税】「富裕税をかけると富裕層は海外に逃げる」はウソ
【税】実質税負担率はトヨタ社長より庶民のほうが高い ~金持ち優遇~
【経済】金持ちに1%の富裕税を課せ ~消費税の2倍の税収~
【経済】年々減る給与、年々増える会社の貯金 ~企業の内部留保金300兆円~
【経済】税制が作った“富裕老人”400万人
【経済】消費税は失業者を増やす
【経済】「億万長者激増」の原因 ~税制~
【経済】「億万長者激増=景気低迷原因」説 ~日本に5万人の億万長者~
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