語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【IT】フェイスブック衰退の後にSNSの未来はあるか

2013年01月12日 | 批評・思想
 (1)Facebook は、2004年に立ち上げられ、2012年10月、その利用者は10億人を越えた。
 しかし、すでに「熱は冷めた」「パーティは終わった」という声が出始め、米国では2012年上半期の利用者数が1.1%下落した。世界14ヵ国でも、「微増か現象」の時代に入った。

 (2)インターネット業界の1年は、かつての10年に匹敵するほど動きが速い。Facebook を始めとするソーシャル・メディアは、まだ表層に浮上していない新潮流に飲み込まれる。Facebook は、今後5~10年で消滅する。【エリック・ジャクソン・「アイアンファイア・キャピタル」創業者】
 この予言の背景に、Facebook のモバイル分野における広告業務への出遅れがある。モバイル専用広告業務の開始は012年6月で、Facebook すらインターネット業界の先を読めていなかったことを証明した。

 (3)米国では、すでに写真投稿へ関心が移った。画像を共有できるSNS「ピンタレスト」が好例だ。写真で人に思いを伝えられるサイトに人気が集まっている。Facebook はその波を察知し、2012年4月、スマートフォン向け写真共有アプリ「インスタグラム」買収を発表した(8月下旬、米連邦取引委員会承認)。

 (4)いまでもFacebook やツイッター利用者は膨大だが、自己顕示欲が幾重にも重なり合った場は、一種の虚像の投影だ、と思う利用者は少なくない。それが米国を始めとする先進国における利用者数減少に反映している。 ⇒ 今後、広告を「クリック」する人が減少する。 ⇒ 収入の8割を広告に頼るFacebook にとって打撃となる。

 (5)Facebook もツイッターも1日に億単位の書き込みがあるが、企業や組織がブランド力を高めようとSNSを利用する努力は、もう効を奏しない。5年前のほうが、むしろ影響力を行使できた。いまはソーシャル・メディアで金儲けしようと考えないほうがよい。インターネット業界で成功者と呼べるのは、ごく僅かでしかない。【ダン・シュワーベル・「ミレニアム・ブランディング」社共同経営者】
 数多くのSNSが登場し、多くの情報が蓄積されているが、プラットフォーム(機器を動かすハードウェアやソフトウェアの基幹部分)が幾つもあるため、ある時期にくると寡占が進む。淘汰されていく。【イーリス・ローマン・「ソングザ」創立者】

 (6)SNSで伝達される情報は、無料だが、生産性がない。ハードウェアを販売するわけではない。主な役割は、あくまでコミュニケーションの仲介だ。
 SNSのサイトは、大脳のシナプスに刺激を与え、一時的な歓喜をもたらすが、完結した話としての要素が含まれていないので、長期的な重要性がない。21世紀の半ばに向けて、人の心はこうした刹那的なセンセーショナリズムに満たされていくのかもしれない。【スーザン・グリーンフィールド・オクスフォード大学薬理学部教授】
 SNSは、閃光のように社会に光を放つが、沈着冷静に状況を把握すると、自然淘汰されていく運命にあるかに見える。

□堀田佳男「フェイスブック衰退の後にSNSの未来はあるか」(「文藝春秋オピニオン 2013の論点」、文藝ムック、2013.1)
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