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きらり

山コンビ小説 Drの翔くんと患者さんの智くん 3

2012-06-06 22:23:39 | 日記
家に戻り櫻井から言われた事を思い出し考える。
突然仕事場に現れたかと思ったら、話がしたいと言われ、そして好きだと告白された。
その言葉に、ただただ驚くばかりであったが不思議と嫌な気はしなかった。

そして入院中の事を振り返る。
入院中、彼は毎日のように自分の病室に訪れ何かしら話をしていった。
最初は病状の説明とかが多かったが病状が落ち着いてくると世間話などもしたような気がする。
そう言えば自分の仕事の話や仕事場の場所、そして一人暮らしなのかとか聞いてきた事もあったっけ、
と思い返す。

最初はとにかく身体が辛くて何を話したか記憶もほとんど残っていないが、
2〜3日もすると身体も随分と楽になって色々話をした。
入院中は個室だったこともあって話し相手もおらず寂しい思いをしていたので
主治医の櫻井がきて何気ない話をしてくれるのが凄く嬉しかったのを覚えている。

まあ、それが仕事といえばそれまでだが、いつもフラっと病室に現れたかと思うと
楽しい話を聞かせてくれたり、不安な気持ちを優しく受け止め会話してくれていたのが印象的だった。
だから病気を治してくれた事もそうだが、その存在にも随分と感謝していたのだ。
そして自分の身体が楽になり、入院中で時間もあったのでお礼の意味で櫻井の絵を描いて渡したのだ。


その後も彼は仕事場であるコンビニに時々顔を見せる。
特にこれといって自分に話しかけてくることはなかったが、
ただ自分が来ることが迷惑だったら遠慮なく言って欲しいとだけ言った。
どうしてもあなたに会いたくて会いに来ているだけだから、と。

そして櫻井が現れる度、入院中は全く気にならなかった視線や存在がだんだんと気になってくる。
そうこうしているうちに、とうとうコンビニでの仕事が最後の日を迎える事となった。
あれ以来話をする事はなかったが、伝えておいたほうがいいだろうと思い櫻井にその事を告げた。

櫻井はちょっとびっくりしていたようだが前から言ってあった事だったので
「そうですか。大野さんにお逢いできるのは今日が最後だったんですね。
寂しいですけど。お身体、大事にして下さい。」
そうとだけ言って去ろうとする。

その後ろ姿を見て慌てて呼び止める。
「僕、櫻井先生に本当に感謝しているんです。」
と言った。
櫻井はゆっくりと振り返り
「ああ、病気のことですか?前にも言ったとおりそれは仕事だから当たり前の事なんですよ。
僕も元気になられて本当に嬉しかったですし。」
そう言って優しく微笑む。

「違うんです、それだけじゃなくって毎日話をしにきてくれた事。
楽しい話を沢山してくれた事、凄く嬉しかったんです。
入院中、心細かったけど先生がたくさん話を聞いてくれて励ましてくれたから凄く元気になれたんです。
だから先生に何かお礼がしたくて絵を描いたんです。」
と、言った。

そして紙に自分のアドレスと番号を書き
「僕も先生と逢えなくなるのは寂しいです。」
そう言ってその紙を手渡した。

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