yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

2019年1月27日

2019-01-29 19:36:20 | お知らせ




私はあまりいい書き手ではありませんでした。
更新はめちゃくちゃ不定期で遅いし、途中の話もあるし、文章も拙い。
それでもたくさんの方に見にきて頂けたのは(勝手に使わせていただいている)媒体が
嵐だったからということも理解しています。



これから先、書けるのかどうかわかりません。
自分自身の気持ちがどうなるかもわかりません。
でも許されるのなら、もう少しだけここはこのまま残しておこうと思っています。
そしてまた書きたくなったら。書ける時がきたら書こうと思います。
今までもそうですが、私の場合“書ける時が、書ける時”なので。
言い回しが変ですがその言葉そのままなのです。



初期の頃のは本当に恥ずかしいのですが。
でも不思議と直そうとも思わないっていうか。
まあ振り返るのも恥ずかしいというのもありますが、その時の思いが込められているものなので
後から変えてしまうと何だか違うっていうか。



ただただ好き好きという時の話もあれば、報道があった後の微妙な話とか。
ページ数は少ないけども(これでもアップして消した話は一個もない)
9年目ともなれば読み返してみて嵐さんたちの思い出す話もあるし、自分の歴史みたいなものです。
まああまりにも大雑把に書いているせいで、自分でも読んでわからないのもあったりするのですが。
あの時の事をって書いてあるけど何のことだっけ?みたいな。



そして今回の事。



やっぱりショックでした。
でも会見やzeroを見てやっぱり嵐っていいな、好きで良かったなって思ったし、
そして連日放送されている報道を見て、改めて凄い人たちだったんだなって感じています。
でも心のどこかではこんな日が来ると覚悟はしていたとはいえ、思っていたより随分と早かった。
そしていつかそうなる日が来るかも知れないとは思っていたけど、いざ現実となるとやっぱり辛い。



でも心のどこかでは仕方ないという気持ちもありました。
私も大野さんとは当たり前だけど立場も重圧も全然違うけどそう思っていた時があったから。
どんなに休みをもらっても(と言っても年休と夏休を合わせて10日くらい)
常にどこか片隅に仕事の事が頭の中にあって、どうにもダメになってしまって。
だから送別会の時に立場が違う方からも、今が一番経験を積んでいい時なのに勿体ないと。
せっかくこれからって時に残念でならないと言われ(他の同期の子も次々と辞めていく時期だったので)
その言葉が嬉しくもあったけど、でもそれ以上に一旦断ち切って離れたかった。



これから先どうなるかはわかりませんが、復活するしないにかかわらず
私は嵐さんたちを、これからも見守っていきたいと思っています。



そしてこういう時いつも思うのは、やっぱりzeroがあってよかったという事です。
私は何かあるといつもzeroでの翔くんを見て勝手に安心してました。
東日本大震災で毎日緊急地震速報や、アラームが一日中鳴りっぱなしで不安でどうしようもなかった時とか
月曜の11時にzeroを付けると必ず生の翔くんにあえて、その姿を見てその言葉を聞いて安心して。
そして今回もまた生の翔くんの姿を見て言葉を聞いて、救われている自分がいます。
確実に生の姿がみられる時があるっていう事は、凄くありがたい存在です。
そして大野さんの事を一生懸命伝えてくれた事、復活はあると何の躊躇いもなく言ってくれた事が嬉しかった。








『まず当日の昼にですけど大野に連絡しました。
何かあったら必ず僕がフォローするので安心して会見にのぞんで欲しいと。
そして彼からはありがとうという返事をもらいました』





さらっと何でもない事のように言った翔くんのこの言葉に、今回はじめて涙がでました。
やっぱり山が大好きです。。

山 短編 13【後】

2018-12-20 16:23:20 | 短編









なぜ引き留めてしまったのだろう。





こんな立場でこんな時に、こんな事言うべきではないのになぜ伝えてしまったのか。


現実に戻り後悔で何も言えない俺に、大野さんが静かな眼差しを向ける。


そしてなぜか大野さんはおもむろに手を差し伸ばしてきた。


目の前には綺麗な大野さんの手。


まさか。


まさか握手をしてくれるという事?
俺がファンだと言ったから?
本当はこんな時にこんなことを言ってはいけなかったのに。
色々な思いが駆け巡る。


大野さんは静かに俺の事を見ている。
その大野さんに躊躇いながらも恐る恐る手を差し出すと、ぎゅっと俺の手を握ってくれた。


目の前には大野さん。
そして大野さんの綺麗な手。
そしてその大野さんと握手している。
その考えられないようなこの状況に心臓はバクバク言っている。


でも立場を考えず伝えてしまったこと。
そしてその事で差し伸べられた手。
頭の中は反省と後悔。
そしてその反面、嬉しさと緊張で一杯だった。


そんな俺に突然大野さんが手を掴んだまま、グイっと自分の方に引き寄せた。
その行動に思わず身体がよろけ大野さんの方に身体が傾いた。
それを大野さんが支えてくれて、ちょうどハグをしているみたいな体勢になった。


大野さんの身体と密着した身体がカッと熱くなる。
何がどうなっているのか分からない。
慌ててすみませんと謝って身体を離そうとした。
でもなぜか大野さんは気にするそぶりもなく、その体勢のまま俺の背中を優しくポンポンとしてくれる。


もう何が何だかわからない。
今何が行われているのかさえ分からない。
思考能力は完全に停止している。
色々な思いがまじりあって何も考えられない。


「ありがとう」


身体がゆっくりと離れ呆然としている俺に大野さんがニコッと笑ってそう言った。













そして。









「話すとここにえくぼできるんだね、俺の姉ちゃんと一緒」


首を傾け俺の顔を覗き込んできたので何だろうとドキドキしていたら
そう言って自身の頬にちょんちょんと指で弾いた。


「え、あ、そ、そうなんですか、こ、こ、光栄です」


まさかそんな事を言われるなんて思わなかった。
それよりなによりも握手してハグしてくれたことが自分の中で大きすぎて、
今は何を言われてもとても思考能力が追い付かない。


「んふふっだから何か親近感」


それなのに、


大野さんがそう言って、んふふっと可愛らしく笑った。












って、親近感?


今、親近感って言った?


「智く~ん」


遠くで大野さんを呼ぶ声がした。


「あ、」


気付いた大野さんも声の方を見る。


「もう出るってー」

「翔くん」


櫻井さんだ。


櫻井さんがハアハア言いながら駆け寄ってくる。
それを嬉しそうに見つめる大野さん。


「はーあちー」

「ねー」


暑い中は走ってきた櫻井さんは汗を拭いながら、あちーとか言ってる
それを優しそうな眼差しで、ねーと言いながら見つめる大野さん。
途端にここの空間はふんわりとした空気に包まれた。
メンバー同士仲がいいとは聞いていたが、同じグループの人がいるだけで
こんなにも空気が変わるんだなと半ば感心しつつ二人を交互に見る。


「あれ? 何か話してた?」


俺の存在に気付いた櫻井さんが大野さんに聞く。
そしてその言葉に大野さんが俺の顔を見た。














二人して俺の顔を見る。


その二人の美しい顔を交互に見つめ返しながら話してしまうのだろうな、と思った。


そして、二人で男の俺にファンだの好きだの言われちゃったと言って、笑うのだろうなと思った。


「ううん、別に。可愛い顔してる子がいたからジュニアかなって話しかけてたの」


でも、違った。


「ここにジュニアの子がいて、トンカチ持っているわけないでしょ~」

「そっかあ」

「ふふっそうだよ。それにお仕事の邪魔しちゃだめでしょ」

「んふふっ」


それより何だか二人の空気感がほんのり甘くて優しくて
そこにいるはずの俺の存在なんてすっかり忘れ去られ空気のような存在になった。


「もう車出るっていうから行こ?」

「うん、じゃあ、お仕事頑張ってね」


その言葉に大野さんが俺に優しく頑張ってねと言ってバイバイと手を振ってくれる。
そして櫻井さんもよろしくねなんて言ってくれていい人たちだなと思った。


でもそれよりなにより何だか二人が。二人の空気が。
やっぱり甘くて優しくてふんわりとした空気に包まれていた。
そしてそのふんわりとした空気を残したまま仲良く話をしながら去っていく二人の姿。
その姿をいつまでも見ていた。























仕事を終え家でまったりと過ごす時間。


「何だか今日えらいご機嫌じゃない?」

「え? そう?」


何だかいつになく機嫌がいいというかニコニコしているというか。


「そうだよ、なんかいい事あった?」

「ううん、ない」

「本当?」

「うん」

「そう言えば今日下見に行った時話しているのを見て思ったけど、
智くんっていつの間にか大道具さんとかと仲良くなってたりするよね」

「そうかな?」

「そうだよ」

「あんま気にした事ないけど」

「だから余計心配なんだよね、ふわふわしてるし」

「してねえよ」

「ふふっ」


そう智くんは言うけど今日だってなんか凄く親しげに話してなかった?
遠くでよく見えなかったけど何だか距離も近かったような。


「でもさあ男の人にファンって言われると嬉しいものだよね~」


そう思っていたらそんな事を言い出す。


「は? いつ? どこで? どんな状況で、どんな風に言われたの?」

「え~」

「え~じゃないでしょ。で、いつどこでどんな状況で言われたの?」


これは確認しとかなければいかん。


「んふふっ内緒だよ~」

「内緒って、もしかして今日のあの時?」

「え~」


その言葉に智くんは否定も肯定もしない。
ビンゴだなと思った。


「ちょっそれ職権乱用じゃね?」

「職権乱用って…」


智くんが呆れた顔をする。


「許さん」

「もー翔くんたらあ」


だって心配なんだよ。
ふわふわふわふわ。
いつでもどこでも誰にも好かれて愛されて。


一緒にいる人はもちろん共演者スタッフにもすぐに好感持たれて。
それでなくても今はドラマをやってるから可憐で儚くて、どこかにふわふわ飛んで行ってしまいそうなんだし。
それに今日話してた子ってなかなかのイケメンじゃなかった?













「知ってるでしょ? 俺は翔くんがいないとダメだって」

「知ってる けどさ」


そんな事を思っていたら智くんがよいしょと言って俺の膝の上にのってきた。


「男の子からファンですって言われると嬉しくない?」


そして首を傾け可愛らしい顔で聞いてくる。


「まあ確かに」


それはよくわかる。
女の子から言われるのももちろんうれしいけど男の人から言われると格別というか。
不思議と特別な嬉しさがあるんだよね。


「うん。それに可愛い子だったし」

「ちょっ可愛いって」


でも、やっぱり、聞きずてならん。


「またあ」

「だって心配なんだもん」


確かに可愛い顔をしていたし。
何というかファンの子が自分に向けられる思いと、智くんに向けられる思いが違う気がする時があるんだよね。
スタッフさんにしても共演者の方もそうだけど
ファンとか好きって言ってもその本気度が違うというか。
好きの度合いが違うというか。
そして多分それを本人は全然わかっていないと思うけど。
今までそれをたくさん目の当たりにしてきたせいもあるのか、そのたびに不安になってしまう。


「まあ、そんな翔くんも好きだけど」


そう言ってくすくす笑う。


「そんなって…」

「んふふっ好き」

「俺もだけどさ」


そして膝にのったまま腕を回しちゅっとキスをしてくる。
それに応えるように腰に手を回すと、智くんがニコッと笑う。
それを合図に何度も角度を変えキスをする。


こんなに近くにいて、こんなにキスしているのにね。
そう思いながら顔を見つめると智くんが何が不安なのって顔をして
俺の頬をぎゅっと包み込んだ。
そしてニッと笑うと包み込んだまま唇を重ね深いキスをしてくる。
だからそれに応えるように膝の上にのっている智くんのその華奢な身体を強く抱きしめ
そしてまた深いキスをした。






















遠くから見つめるそのステージは偶然にもあの時と同じ楽曲で


あの時と同じように可憐に美しく舞い踊る。


それを見つめながらあの時の事を思い出していた。


夢みたいなできごと。


話をして


好きだと言ったら


握手をしてくれて


そして


ハグをしてくれた。








本当は彼らのステージ。


そこで働くバイトの俺がそんな事を言ってはいけないのに


大野さんはありがとうと言ってくれて


そしてえくぼが姉ちゃんと一緒と言って俺に笑いかけてくれた。


そんな夢みたいなできごと。








大きなこのステージ。


会場には7万人を超えるファンの人がいる。


そんな中、


前を通り過ぎるとき大野さんが俺に気付いたような気がした。


まさか。


これだけたくさんの人がいるのに気付くはずなんてない。


前の方だとはいえスタンド席だ。





そう思ったけど。






あの時と同じように俺の顔を見て左の頬をちょんちょんと指で弾いた。


その可愛らしい仕草に周りのファンの子達がキャーと歓声を上げた。


あの時、俺の姉ちゃんと同じところにえくぼができるんだと言ってくれた時と同じ仕草。


まさか俺の事に気付いてくれた?


まさかその時の会話を覚えていてくれた?






顔が、胸が、身体が、熱くなる。








大野さんとどうこうなりたい訳じゃない。


手が届かない存在だって知ってる。


ましてや男の俺にファンだの好きだの言われても困るだけだろう。





でも。






大野さんを知ってから


大野さんの生き様を見るたびに


大野さんの仕事に向き合う姿勢を知るたびに


大袈裟だと言われるかも知れないけど、人生が変わった。








何に対しても無関心で無感動で


まるで白黒の廃墟の世界で生きていた俺に


光をくれて、


色を与えてくれた。








思い切って大野さんに向かって手を振ると




それに気づいた大野さんがニコッと笑って、手を振り返してくれた。









周りのキャーという歓声が遠くに聞こえる。











そして、その姿にまた恋をした。












山 短編 13【前】

2018-12-20 15:33:30 | 短編










あれよあれよという間に




5×20コンも始まり




誕生日も過ぎ




12月も後半に突入してしまいました。





すみません。










少し昔のお話です。














すべてのものは自然へと帰っていく。





今、生きているものも。


今、使っているものも。


今、目の前にあるものも。





そして





今住んでいるこの家も。


通っている学校も。


いつも行くコンビニも。







人が住まなくなった家はやがて風化し、朽ち果て、土へと戻っていく。


そして植物にのみこまれ、浸食され、自然へと帰っていく。







地球上にあるすべてのものは、遠い未来。


自然へと帰っていく。




それなのになぜ人は生き創造し続けるのだろう。





そんな事を毎日考えながら生きていた。


生きる意味も見いだせず


勉強する意味も分からず


かろうじて学校には行っていたけど


無気力で


無感動で


ただ惰性で生きていたあの頃。
















曇天とはいえ明るかった空がだんだんと薄暗くなっていく。


そこからますます色を変え刻一刻と濃さを増していく。


そんな空の移り変わりと、


その中心で歌い踊る人たちと、


その人たちを取り囲むたくさんの人と、


その裏で動いている大勢のスタッフの姿を、ぼんやりと眺めていた。









5年前の夏。




初めて行ったその場所で、初めての恋をした。











それはまだ暑さが残る9月の始めの出来事だった。


その日は朝から母ちゃんが電話で何だか騒いでいるなとは思っていた。


でもその事が、後々自分の身に影響を及ぼすことになるなんて


この時はこれぽっちも思ってはいなかった。









「もったいないでしょ?」

「そんなの俺知らねえし」

「だって国立だよ? アリーナだよ? こんな奇跡もう二度と起きないよ?」


いやいやいや。
国立って言ったって俺はそれほどサッカー信者じゃねえし。
それにアリーナって別に俺には関係ないし。
そもそも俺はアイドルなんて興味ねえし。
ましてや男の俺が男のアイドルグループをなぜ見に行かなければならないのか。
だいたいいつも一緒にコンサートに行ってる友達がいけなくなったって、そんなの俺知らねえし。
アリーナやドームは慣れてるけど国立は初めてなのって知らねーよ。


「いいから行くの」

「ヤダよ、何で俺が?」

「どうせ家にいても何もしてないでしょっ」

「してるよっ俺は忙しいんだよ」

「ぼーっとしてるだけでしょっ」



そんな事を言い合いながらもなぜか今、俺はここにいる。










かつてオリンピックが行われたというこの場所に。
目指す場所はみな同じなのであろう満員電車に揺られ、
一定の方向に向かい歩いていくその大勢のその人波にのまれ、
母ちゃんからの1万円あげるとのその言葉につられ、ここにいる。


って、ほとんど女の子しかいねえし。
たとえ男の人がいたとしてもカップルだったり、友達同士だったり
俺みたいに母親と高校生の息子って、あんまり、いや全然いねえよ。
それでなくても野外公演なのに雨が降るって言われていて、憂鬱な気分この上ない。


こんな事だったら1万円なんて言葉につられず家にいたかった。
欲しいゲームの為についつい乗ってしまった事に、心の底から後悔していた。
なんとか大勢の人の波にもまれながらもその席に辿り着くと、はぁと大きなため息をつく。
ここまで辿り着くまでにも一苦労で、数日分の体力を消耗した気がする。
そんな事を思いながらその会場を見渡すと、物凄い人たちがそのステージを中心に取り囲んでいて
遠くにいる人がまるで米粒みたいに見えた。


凄い人数だ。180度見渡しても人、人、人。
上を見上げても人、人、人。とにかくその人の多さに圧倒される。
それまで人生とは何か、とか
全てのものは自然に帰るとか悩んでいた事なんて一瞬で吹っ飛んでしまうと思うほどの熱気。


しかも横を見ると母ちゃんは初めてのアリーナなんて言って泣いているし。
周りは妙に凄い熱気だし。
いや、電車の中からも、歩いている時も熱気はずっと感じていたけど
会場に入ってからはそれがよりダイレクトに感じられる。


そんな中、一人取り残されたような気分になっていた。
まるでこの世界に異質なのは自分だけのような気分になってくる。
圧倒されきょろきょろと周りを見渡す事しかできない。
やっぱり自分だけが異質な存在な気がした。
















そうこうしている間に時間となりステージが始まった。



キャーと悲鳴に近い歓声が上がる。
それを冷静に見つめる俺。
周りと自分との温度差に一人だけ別世界にいるみたいな感じがして、孤独な気分だった。


でも悲しい事に、母ちゃんが家事をしながらずっと曲をかけてたし
リビングではテレビの前を陣取り、歌番組やらコンサートDVDやらいつも見ていたので自然と覚えていた。
でもだからって周りの人たちみたいに盛り上がれるはずもなく
ぼんやりとその中心で歌い踊っている姿を見つめ
周りの熱狂的なファンの人たちの姿を眺め
遠くに見える人達の姿を見
スタッフらしき人達が必死に働いている姿を見つめ
そして刻一刻と移り変わってゆく空を眺めていた。


舞台は最高潮に盛り上がっていた。
それとともにだんだんと日が暮れ周りが暗くなってくる。
ステージの照明が灯され会場がますます盛り上がっていく。
それでも自分だけはまだそこに取り残されたままで、
時折空を眺めながら雨が降らなきゃいいな、なんて思っていた。





周りは黄色い歓声で溢れている。




そして




それは終わるまでずっと続くのだろうと、




そう少しうんざりした気持ちでそのステージを見ていた。




でも。




その曲が流れ始めると一変した空気。




いや、本当はどうだったかわからない。




自分自身だけがそう感じただけなのかもしれない。




だけど、その時、空気が一瞬変わったような気がした。



それまで悲鳴に近い歓声が上がっていた会場が、シーンと静まり返る。
その空気の変化を感じてそのステージを見つめた。
それはまるで流れるような綺麗な動き。
その流れるようなダンスから目が離せなくなる。
そして高音で奏でられる透き通るような歌声。
いや、それまでもその人の声を聞くたび綺麗な声をしているなとは思っていた。



でも。



歌いながら踊るその姿があまりにも綺麗で目が離せなくなる。
そしてさっきまでキャーキャー言っていた周りの人の手も止まって見入っている。
そして近くを通り過ぎる時マイクを通さない歌っている声が聞こえた。
その声に圧倒される。
この大きな会場に高音が響き渡る。


動き一つ一つが美しく圧倒的なパフォーマンスに周りもみな放心状態だ。
でもこの時多分俺が一番放心状態だったと思う。
その情感込めて歌うその高音で透き通るような美しい声と
指先足先まで綺麗に映るダンスの美しさと
その人の持つその存在の美しさに夢中になった。










それからは何があったか覚えていない。


どうやって家に辿り着いたのかも分からない。


ただ、大空に無数の風船たちが舞い上がっていくのを


ぼんやりとただ眺めていた。












そして、あれから5年。






俺は再びこの場所に立っていた。




高校生だった俺は大学生となっていた。













あれからその人の事を夢中で調べていた。
といっても家にはDVDだのCDだの雑誌だの本だのごろごろしていたので、片っ端から見始める。
母ちゃんは基本櫻井さんのファンだったけど全員が好きなのだと言って
メンバー全員のドラマはもちろんバラエティも全て録画しグッズも含め全て保管してあった。


その中からとりあえず今やっている彼の初主演しているというドラマを見た。
そこに映っているのはステージで踊り歌っていた人とはまるで別の人。
そしてそれ以外にもとりためてあった歌番組をはじめ
夜中にやっているまったりとした番組
夜にやっているバラエティ番組
昼にやっている対戦型の番組
撮ってあった心霊番組
真夜中にやっていたまだ若い頃の彼らの番組
その他もろもろそして雑誌や本、そしてDVDを夢中でみた。


面白いし
ダンスは凄いし
歌はうまいし
ドラマでは別人だし。
魅力があり過ぎてとても言葉に表しきれない。


そしてこんなにも近くに嵐漬けの人がいたのに、全く気付いていなかった自分が悔やまれる。
そしてその時には、もう人生は何かなんて考える余裕なんてなかった。
見たいものもたくさんありすぎたし、消化しきれないものがたくさんあった。



そして。


いつしか夢もできた。


壮大な夢。


その為に、それまであまり勉強の必然性を感じなかった俺は進路の事を考え勉強を始めた。
それでも憧れだけでどうこうできる訳ではない事はわかっている。
でも初めてできた夢。
初めての目標。













無謀だとも思ったけど、それでも、あれから5年。



俺は再びこの場所に立っていた。



ただのバイトだけど。



舞台に携わるなんてそんな夢とは程遠いただの肉体労働だけど。
使いパシリで重たい荷物を運んだり工具を持って走ったり。
怒鳴られることもしょっちゅうで危険な事もたくさんあるけど。


そこにいるだけで汗が滝のように流れた。


ふと、その場所から上を見上げる。


やっぱり凄い空間。


そしてこの場所を毎年連日満員にする人達。


なぜあの時もっと真剣にステージを見ていなかったかと悔やまれる。
そして改めてどれだけ凄い人たちだったのかと思い知る。
あれからファンクラブに入会してもコンサートに当たる事はおろかアリーナ席なんて夢のまた夢だった。
あの時の事がどれほど凄い事だったかを今更ながら思い知る。
今だったら泣いてアリーナがと言っていた母ちゃんの気持ちがわかる気がした。


あれから当たったという母ちゃんに一緒に行きたいと頼んでも、お友達の笠原さんと行くからダメって言われるし。
ファンクラブに入っても全然当たんないし。
まあこうしてコンサートに携われること自体奇跡で夢みたいな事なんだけど。
でも俺たち下っ端バイトはある程度出来上がってしまえば終わりみたいなもので、リハさえ見られるわけでもない。














そんな事を心の中で愚痴りながら作業に没頭する。


「……ジュニアの子?」


突然後方から声をかけられた気がした。


「……?」


何だろうと思いながら振り返ると、キャップを深くかぶった男の人。


「……」

「……」


この人が今俺に話しかけたんだろうか?
でも何も言わないし…。
しばらくお互い無言で見つめあう。


って。


えぇえええええ?


まさか、大野さん?
何で?
っていうか今、大野さんに話しかけられている?


何で?


周りを見渡すとみんな作業中で近くには誰もいない。
やっぱり俺が話しかけられたみたいだった。


なぜ大野さんがここにいて俺が話しかけられているのか。
何で、なぜ、とその全く理解できない状況に焦る。


それにジュニアの子って言ってたけど俺がそうなのかと聞かれてるのだろうか?


「ち、違います。俺は、バイトで…」

「そうだよねー綺麗な子がいるからもしかしてって思ったけど、
ジュニアの子がここでトンカチ持ってるはずないよねー」


そう言いながら、うんうんと自分自身の言葉に納得している。














もしかして天然なのか? と思いつつもあまりにもその姿が可愛くてつい顔が緩む。
でもなぜここに、この人が?
まあ確かに自分たちのコンサート会場。
下見や演出を考える上で来ることはあるだろう。


でも何で?
っていうか綺麗な子、ってまさか俺のこと?
色々な思いが頭の中をかけまわりとても整理しきれない。


ずっと画面上で見続けていた大野さんが目の前にいて。
そしてその状況に把握しきれない俺がいて。
それはもう自分の許容範囲をとうに超えていた。


周りを見渡すとみんなは作業に没頭中だし、大野さんはラフな格好でキャップを深くかぶっていて、
完全にオーラを消し去ってるし。
まあだいたい本人たちのコンサートの舞台を作っているわけだから気付いたとしても騒がないだろうけど。


でも俺は全然慣れてない。


「じゃ、暑いけど頑張ってね~」


そんな事を頭の中でぐるぐる考えていたら大野さんがそう言って去ろうとした。


って、今、俺に笑いかけた?
頑張ってねって言った?
あの大野智が?
このでかい舞台を連日満員にする嵐の?


いくら彼らの舞台を作っているとは言ってもやっぱり信じられない。


いや、本当は彼らの舞台。
もしかして会えたらなんてちらっと頭をかすめた時が片時もないと言ったら嘘になる。
でも遠くで見るくらいでそんなの夢の夢だと思っていた。


それなのに。


やっぱり信じられない。
















「あ、あのっ」

「……え?」


行こうとした大野さんを思わず引き留める。


「あ、あの、俺大野さんのファンなんです。それでどうしてもステージに携わりたくて…」

「……」

「初めて見た時からずっとファンで、大好きで……DVDも擦り切れるほど見てました」

「……」


相手は芸能人で、ましてや男相手に突然そんな告白されたって答えようがないのだろう。
立ち止まったまま静かな眼差しで見つめられる。


「すみません…」

「……」




その綺麗な顔で向けられる視線に恥ずかしくなって俯いた。





そして、





言った事を後悔した。













短編集 part8

2018-10-23 21:24:15 | 超短編










久々に家でまったりと過ごす時間。
ZEROが変わったんだね、なんて他愛のない話をしながら
ゆったりとした時間が流れていく。


「……」

「……」

「…藤子不二雄A先生に、絵、贈ったんだってね?」

「見たの?」


そう言えば、とネットで見たのを思い出し智くんにそう話しかけると
智くんはびっくりしたような表情を浮かべた。


「うん、見た。凄く智くんらしくて、凄く先生らしい絵だった」

「俺らしくて、先生らしい絵?」

「うん、凄く良かったよ。素敵だった」

「……」


そう言うと何かを考えるような顔をして、じっと見つめてくる。


「ん?」

「いつも翔くんはそう言って褒めてくれるよね」

「いや、だって本当にそう思ったから。ダメだった?」

「ううん、ありがと」


何か思うところがあったのか。
それとも少し不安を感じていたのだろうか。


そう言うと、少し安心したようにふっと笑みを浮かべた。












「それに、もともと俺は智くんの絵が凄く好きだし…」

「ふふっよく俺が描いているといつも隣に座ってきてずっと見てたよね?」

「うん、多分うざかったと思うけど」


そう、昔から。ジュニアの時から、智くんが描いている姿を見るのも、
描いている作品を見るのも好きだった。
その綺麗な手から魔法の様に次々と描かれていく絵。
それがどんな絵になっていくのか、どんな作品に仕上がっていくのかといつもワクワクしながら見ていた。


そしてそれは今も変わらない。


俺にとって重要なもの。


重要な事。


そして。


智くんにとって、とても重要なもの。










でも。




この人にとって絵を描くことが。
絵を描いている時間が。
絵の事を考えている瞬間が。
何よりも重要だってことを知っていたけど。





知っていたけど。






知っていたから。


ずっと、描けない。


描いていない、という言葉を聞くたびに心配していた。



智くんの生活の一部でもある絵。
精神的にも重要な作用を持っていて、そして自分自身を切り替えるためにも
そして自身を保つためにも重要な、絵を描くという作業。
それはきっと子供のころからずっと変わらずそうであっただろう、大切な作業。


でも、それができないと。
できていないと言っていたその姿が、なんだか苦しそうでずっと心配していた。
心配でたまらなかった。
だから今回、藤子不二雄A先生に描いて贈ったと聞いて
そしてその贈られた絵を実際に見る事が出来て


描いていたんだ、と。


もしかしたら断続的なのかもしれないけど、描けるようになったんだ、と凄く嬉しかった。


そして。


それが。


智くんが子供の時から好きだった藤子不二雄A先生の絵だと知って。
そして思い入れのある怪物くんの衣装を着た先生の絵を見て。
そしてなによりも智くんらしさが溢れた絵だと知って嬉しかった。



「よかった…」

「え?」

「いや、何でもない」








でもそれを言ってしまったら、何だか智くんが負担になってしまうような気がして。



だから何でもないといって誤魔化すと、不思議そうな顔をして見つめる智くんの唇に、



ちゅっと触れるだけのキスをして



心の中でもう一度“良かったね”と小さくつぶやいて



そして、



その唇にもう一度キスをした。





















『大野くんの事を抱きしめたくなりました』


『大野くんにずっとオファーしている』


『大野さんの為に船舶2級の免許を取りました』






ダンス、歌、性格、芸術的なこと、字の上手さ…
この人の凄い所はたくさんあるけど
でも本当に凄い所は実はこういう所なんじゃないかなと思う時がある。


普通でいるのに。


普通でいるはずなのに。


愛されようと努力しているわけでもなく
マメでも物凄く気が利くわけでもなく、媚びを売るわけでもなく、自分からアピールする訳でもなく


ただ自然で。


自然体でいるだけで、愛される人。







それは本当の智くんの姿を知っているから。
そして裏では考えられない位の努力をしているしているのを知っているから、というのもあるのだろうけど。
でも普通、男の人が男の人に対して抱きしめたくなるなんて、言葉に出しては言わない気がする。


でもそう言わしめてしまう不思議な人。


それもここ最近だけでも大物の著名人だったり監督だったり。
智くんに対して何気なく発せられた言葉一つ一つをとってもそう感じざるを得ない。
そしてそれ以外にも先輩や後輩、そして共演者スタッフ。
そう言えば、一緒に携わった芸術家の方々にもことごとく愛されていたっけ。

















「これって、週刊誌?」

「ああ、これ智くんのこと書いているあったから見せたいと思って持って来たんだった」

「俺の事が?」

「そうアツヒロさんが語ってたんだけど読む?」

「うん、読む読む」


そういって持ってきた女性週刊誌を静かに読み始める智くんのその姿を見つめる。






そこには事務所の大先輩であるアツヒロさんが見た、大野さんの姿が描かれている。






『嵐がデビューしてまだ3~4年のころかな。
プーシリーズを見に行ったら、あまりにも大ちゃんが良かったから、びっくりしました。
立ち回りや芝居、立ち姿がいいなって』


『人は見かけによらない、っていうけど、大ちゃんはまさにそう。
普段は眠そうにしているけど、本番になったらめっちゃ力を出すんです。
そのギャップが凄い。絶対、陰で練習していると思います。そうでないとできない』


『大ちゃんはやっぱり、ふだんはボーっとしてるんだけど、ステージに立つとスイッチが入る。
それを見てみんなもスイッチが入る。オーラも凄かったです』












「何かいつも周りからすごく愛されるよね、智くんて」

「え~そう? でも俺には翔くんみたいにアニキ会とかないし」

「いやいやあれは…」

「凄くみんな翔くんの事アニキアニキって慕ってくれてるじゃん。面倒見もいいし、さすが翔くんて思うもん。おれには絶対できない」

「いや智くんだって加藤くんとかに慕われてんじゃん。そう言えば、いつの間に船舶2級も取ったんだか…」


テレビで初めて知って本当にびっくりしたんだよね。
しかもプライベートでなんて。


「ね~」

「ね~ってあなた知ってたでしょう?」


みんなは驚いていたけど、智くんは前から知っていたようだった。
全然驚いていなかったし。照れくさそうにしてたし。


「え?」

「え? じゃないよ、バレバレなんだよ。それに何か凄く嬉しそうじゃなかった?」

「え、そっかな?」

「そうだよ。しかも何だか妙に照れくさそうな顔してたし」


後から見てもあれは何だか嬉しさを堪えているようにしか見えなかった。


それが。


「そんな事ねーよ」

「そんな事あるよ」


それが、何だか無性にムカついた。


「も~いいじゃん加藤の話は」

「よくない。ね、そんなに嬉しかった?」

「いや、別に?」

「正直に。」

「まあちょっとは、ね。ちょっとだよ?」


そう言って胡麻化しているけど本当は相当嬉しかったんじゃないかと思う。


「くそ~加藤くんめ抜け駆けして~」

「ぬけがけって」


そう言ってクスクス笑っているけど。
でもその為にプライベートの時間を割いて
自分の為に船舶2級を取りに行ってくれて。
嬉しくないはずはないだろう。








「いや、メンバーならまだしも加藤に先を越されるとは」

「んふふっ」

「笑ってる場合じゃないよ、俺は悔しいんだよ。先を越されたこともそうだけど、あの加藤君の行動力にも、それに対して凄く嬉しそうな智くんにも」

「いやそんな大げさな」

「大袈裟じゃないよ」


そりゃあ一緒に乗って撮影なんかしていたら自分も取って助けたいって思うのは当たり前の感情かも知れない。
でもあの嬉しそうな顔。
やっぱり、悔しい。


「俺も取る、船舶2級」

「ええぇ? 翔くんが? そんな暇あるの?」

「わかんない」

「わかんないって」


確かに今日明日とすぐにできないことなんてわかりきっている。


でも。


「でもとるって言ったら、とる」

「まあ翔くんだったら頭的には問題ないだろうけど…。でも問題は時間だよね、翔くん忙しいしそんな時間…」

「いや必ず、とる。とるったら、とる」

「んふふっわかった。待ってる」


そう言ってこちらの気持ちを知らない智くんは可愛らしくクスクス笑い続けている。


「うん、待ってて?」

「うん」

「ふふっそしたらこんどは朝活とコラボだな。朝、俺と智くんと船に乗って交代で運転してさ。
で、市場とかにいってそこで新鮮な魚食べたりして…」

「翔くんはどうせ貝でしょ?」

「おっ貝いいね。採れたてのサザエなんかをつぼ焼きにしたらいいよね。醤油とかかけてさ」


忙しいけど、もし船舶2級が取れたら、と夢がどんどん膨らんでくる。









「んふふっそうだね」

「ってバカにしてるでしょ?」


それなのに。


「してないよ」

「今、笑った」

「んふふっ笑ったけどさ」


智くんてば他人事のような顔をして笑ってるし。


「ひどいっ俺の夢を笑うなんて」

「いや…夢って」

「あ、今度はめんどくさいって顔した」

「してないよ、もう」


そんな事を言い合っていたらめんどくさくなったのか、
智くんが俺をソファの上に押し倒してきてそのまま身体の上にのった。


「何でたまに子供みたいになるの?」

「子供⁉」


そして俺を上から見つめながら、くすくすと笑ってそう言った。


「ま、そんな翔くん嫌いじゃないけど」

「子供じゃねえしっ」

「うん、知ってる。子供相手にこんなことしないでしょ?」


そして、そう言ってにっこり笑ったかと思うと
ゆっくりと顔を近づいてきて唇にちゅっとキスをしてくる。


「今度は翔くんの持ってるクルーザーでいこうよ」

「持ってねーよクルーザーなんて!」


そして可愛いらしく笑うと、そんな事を言ってくる。










「え? そうだっけ?」

「当たり前でしょう~。ま、ちょっと考えちゃったけどさ」

「ほんと⁉」


その言葉に途端に智くんの目がキラキラと光り出す。
いや、キラキラなんて可愛らしいものではなくメラメラ、か。


「いや考えただけ、本当にちょっとだけ頭の中をかすめただけで、買うわけじゃ…」

「翔くん~」


でも燃え上がった智くんには一切届くことはないようで、嬉しそうに抱きついてくる。
まあ、嬉しいんだけどね。


「翔くんなら買えるよ。お仕事頑張ってるし」

「いや、あなたも頑張ってるでしょ? それに中村監督からもずっとオファーされ続けてるって聞いたよ?」

「中村監督? 」

「聞いてないの?」

「うん、知らない。だから、翔くん~」


いや知らないって。確かに大野君には届いていないかもしれないけどと監督は言ってだけど。
でも、だからって、だから翔くん~じゃねえし。
船だよ?
クルーザーだよ?













「考えて? 考えて? たくさん考えて?」

「う、うん。考えるだけね。まだ買うとか何とかじゃなくて…ちょっと頭の中をかすめただけで…」

「うん、わかってる、わ~ってる」

「本当に?」


でもそんな俺の思いは一切届くことなんてなくて
本当に分かってる? 何だか最後わ~ってるなんて言っちゃてるけど本当に大丈夫?
何だかとんでもなく妄想に走ってない?
もしかしてもう船長さんになった気分になってない?と心配になってくる。


「翔くん大好き」

「俺も好きだけどさ」


でもそんな心配をよそに智くんは頬を染め、嬉しそうにぎゅうぎゅう抱き着いてくる。
嬉しいし、可愛いんだけどね?


でもやっぱりもうちょっとだけ考えさせて欲しい。
ほんとにちょっとだけ頭の中をかすめただけなんだから。
なんて話は当然智くんの耳に届くはずもなく俺の上にのっかたままぎゅうぎゅうと抱きついてくる。


「考えるだけね?」


だから、仕方なくそう言ってその智くんの背中に優しく手を回すと
負けじとその身体をぎゅうっと抱きしめる。


「んふふっわかってる」











そして。


身体をゆっくり離すと、いたずらっこみたいな無邪気な顔でクスっと笑って、わかってると言う。


わかってるって、わかってるって? どういうこと?


そう思っていたら、そのまま俺の顔を両手で包みこむように優しく触れると


そのまま唇に唇を重ね深くキスをしてくる。


だからそのキスに応えるように下を絡ませ背中に腕を回す。


そして。


「んふふっ冗談だよ」

「え? 冗談?」


そして、長いキスが終わって唇が離れると智くんは冗談だよと言って笑った。


「もし欲しかったら自分で買うからそんなに心配しないで」

「え?」

「んふふっ翔くん好き」



そう言うと、智くんはにっこり笑ってまた唇にちゅっとキスをすると


ぎゅっと身体に抱きついた。






























余談



『大野さんと僕』すごく素敵でした。


絵が描けるって本当に素敵です。
絵で表現できるって凄い才能です。
本当に、本当に、羨ましいです。


私はほとんど漫画で育ってきたようなものなので。本と漫画1対9くらい💦
なので本当はここのブログも漫画で描きたかった。
でも全然才能がなくて。思えば美術の成績も散々でした。
でもたまにここの場面を絵で表現できたらもっとわかりやすいだろうなあって
描いてはみるのですが、やっぱりできなくて撃沈という感じで。
本当に絵で表現できる方って凄いです。羨ましいです。


でもまたまたやっぱり大野さんと僕を見て懲りずにちょっと描きたくなったので
ちょっとまねて描いてみました。







でもやっぱりまねてかくことは、かろうじてかけたとしても
自分で考えて顔がかけない。姿が描けない。構図が考えられない。
そしてこんなことをしているからなかなかUPもできない💦って感じで
この短編の2個目の話とか天神祭の話とかをどうにか漫画で、と無茶な事を考えていたのですが、諦めました(当たり前)。


でもいつか本当に本になって発売してくれたら嬉しいな。





Another World Ⅱ

2018-09-09 10:15:10 | Another World









被災された方々が、一日も早く平穏な日々を送れますように。











遅くなりました。





そしてこんな時にこんな内容で、とも思いましたがupしました。





またまた脱線しています。





しかもあの件にふれた内容です。





なので閲覧注意です。





問題あれば消します。





OKな方のみ閲覧注意で↓












これもまた別の世界の話。












楽屋で珍しく二人きり。


お互い話をする訳でもなく思い思いに好きな事をして過ごす。


俺はゲーム。


そして大野さんはソファに横になって仰向けでスマホを眺めている。


いつもと同じように。


いつもと同じ光景で。


シーンと静まり返った部屋に


部屋の外から聞こえる雑音と、そしてゲーム音だけが鳴り響く。
















「したいの?」

「……え?」


そんないつもと変わらない状況の中。
突然大野さんが口を開いた。


「結婚」

「……」


その突然の言葉に。


主語も何もないその言葉にびっくりして聞き返すと
大野さんはスマホから目を離さず何でもない事の様にそう言った。


まさか。


「……」

「……」


まさか。


あなたの口からそんな言葉が出てくるとは夢にも思わなくて
突然のその言葉に絶句した。









「ま、俺には関係ないけど」

「……」


でも、もし。


もし そうなったとしたら。


あなたは、どうする?
あなたは、どうなる?


この世界に何の未練もないあなたの事だから、と
その先の言葉が言えないままでいると、俺には関係ないけどと
少し冷めたような口調でそう言った。


関係ない?


本当に?


関係ない?


「でも、もししたら…」

「え?」

「……辞める でしょ?」


だから確かめたくて。
そう恐る恐る聞くとあなたはスマホから目を離し俺を見た。


もしそういう事があったら、これ以上続けるのは無意味だとそう言って
何の躊躇いもなくあなたはこの世界から去ってしまうかも知れないと、ずっとそう思っていた。


「ふふっどうかな?」


その綺麗な顔で俺を試すようにそう言って笑う。


「俺はそんなのヤだよ」


だけど。


身勝手だってわかってるけど、大野さんに訴えるようにそう言うと、
大野さんはおもむろに起き上がってゆっくりとこちらに歩いてきたかと思ったら
俺の座っているソファのへりの部分に座った。


「ニノはどうして欲しい?」


そしてやっぱり俺を試すように静かにそう言って俺の顔を見た。
その真っ直ぐに注がれる視線から目を離すことができない。










そして座ったままゆっくりと持っていたスマホをテーブルの上に静かに置いた。
その手を見つめる。
自分とは全く違う手。
細くて長くて綺麗な指。


昔からこの手がずっと好きだった。


だからいつもその手に触れていたくて触っていた。
眺めたり
掴んだり
握りしめたり
それをいつもあなたはこの手の何がいいのって顔をして不思議そうに見ていた。








「ごつくなったね?」

「んふふっそう?」


その静かな眼差しで見つめられているのが恥ずかしくなってきて、誤魔化すようにそう言うと
美しいものに全く無頓着で執着がないあなたは気にする風でもなく、そう言って笑った。


釣りをしているせいか昔に比べると随分たくましくなったけど
それでもやっぱりこの手が好きだと思う。


「そうだよあの白魚のような手が好きだったのに」

「白魚のような手?」


そう文句を言っても気にするわけでもなく、くすくす笑っている。
その顔も好きだなと思う。


そう。


なぜか俺は昔からこの人の事が好きだった。
あまり人には興味がなかったけどこの人だけは別だった。
ジュニアの頃は今と違って簡単には近づけないような、そんな雰囲気を持っていたけど。
いや今もその本質はきっと変わってはいないのだろうけど。
それでもずっと好きだった。


そしてそんな孤高のような存在だったあなたとどうしても仲良くなりたくて
ガンガン話しかけて、くっついて、手を握って。
そして慣れてきたらふざけている振りをしてキスする真似をして、抱きついた。


「今は嫌い?」

「嫌いじゃないけど…」

「けど?」

「黒くてごつくなった」


それでもやっぱり好きな手。
そんな事知ってるくせに。
そう思いながら憎まれ口をたたいた。










「……」

「……」

「ニノのしたいようにすればいいよ」


そしてまた俺の事を黙って見つめていたかと思ったら、
そう言ってふっと笑って俺の顔に手を伸ばしてきて頬に触れた。
それを何もできず、されるがまま見つめる。


いつもそうだ。


いつも。


俺が言いたい事を言ってやりたいことをやっているように見えて
本当は手の上に転がされているのは自分自身なのだ。









したいようにすればいい。


そう言ったけど、でももしそうしたらあなたはきっとこの世界から去るでしょ?
他のそうなりながらも続けているグループもあるけどあなたはそうはしないでしょ?


それが分かるから。
それが想像つくから。
だから、何も言えない。


あなたのいない嵐なんて嵐じゃないから。
もちろんほかのメンバーでも同じことがいえるけど。
でもあなたはやっぱり別格だと思う。


こないだのuntitled一つをとっても違う、と思う。
やっぱりダンスも歌も大野さんでないとダメだと思うし
あのパペットダンスは大野さん以外他の誰もがやってもああはならないだろうと思う。


昔から音楽もダンスもレベルは一人格段に上だった。
そして自分たちをいつもリードし牽引してきた。
それはずっと昔も今も変わらない。


ダンスだってこの人がいるからこそ引き締まるのだ。
ここぞという時にセンターで踊るから、より映えるしより綺麗に見える。
歌もここはという場面であなたがソロで歌うから曲としてもレベルが格段に上がる。
この人がいるのといないのではダンスも歌も全体の出来上がりが全然違う。


ソロの部分が曲全体を引き立てる。
ユニゾンが相手の技量以上のものを引き出させる。
そしてあなたしか表現できないフェイクがある。
あなたの声で、歌で、音楽が変わる。
あなたの踊りでダンスが変わる。


そのあなたがいなくなったらどうなる?









静かに見つめる視線から目を離すことができずにいたら
あなたは意味深な表情を浮かべ顔をゆっくりと近づけてきた。


視線を外すことができない。


そしてあっと思った瞬間。
大野さんの唇が俺の唇に重なった。
カッと身体中が熱くなる。


身体が信じられない位の熱量を持つ。
自分でも顔が真っ赤になっていくのが分かる。


いやキスなんて今まで何度もしたことある。
コン中であったり、ふざけあっている時だったり。
自分からけしかけたり。
遊んでいたり。


だけど、今は違う。







気が動転して何も言えないでいる俺に、大野さんはいたずらっ子みたいな目でニッと笑った。


なぜ。


こんな時に。


こんな状況で。


なぜか、こんなことをしてくる。


そしてそんな大野さんに、俺は翻弄される。


俺があなたの事をずっと好きだったのを知っているくせに。


そう思いながら。


そんな事を突然してくる大野さんが、少し憎らしい。














「ズリイよ…」


「ふふっ黒くてごついなんて言った仕返しだよ~」


「バカじゃね…」


その綺麗な顔でいたずらっ子みたいに言って、ふふっと笑う。
その姿に自分の心がまた翻弄されるのがわかった。


そしてその姿を見ながら、昔夢中で追いかけていた時の事を思い出す。


何とか近づきたくて必死だったあの頃。


ずっと好きだった人。


ずっと憧れていた人。


ずっと追いかけていた人。



そして、それは今も変わらない。



翔ちゃんがいるから自分の気持ちに蓋をして、



他を頑張ってみているだけだ。






だから。






全然仕返しになってねえし。


















部屋の外ががやがやとだんだん賑やかになってきて
仕事を終えた3人がお疲れお疲れなんて言いながら、部屋に入ってきた。
そしていつの間にか大野さんは何事もなかったかのように
さっきまで寝っ転がっていたソファに、同じように寝っ転がっている。


いつもの光景。




でも。








「なんかあった?」

「え?」

「顔赤いよ?」

「部屋暑い? 温度下げる?」


俺の顔が赤いせいか何なのかみんなが口々にそう言ってくる。
そして大野さんを見ると我関せずと言った感じで素知らぬ顔でスマホを見ている。


こっちはまだ胸がドキドキしていて身体だって熱いのに。
そう思いながら、そっと自分の唇に手をあてるとまだ大野さんの唇の感触が残っていた。
でもそれをみんなに気づかれないように、大丈夫大丈夫なんて言って
ゲームに夢中になっているふりをする。






「なんかあった?」

「別に」

「ふうん」


でも翔さんは何かを感じているのだろうか。
何か言いたげな表情を浮かべている。
でもそれに気付かないふりをしてゲームに集中した。








そう。



いつも大抵の事には緊張なんてしない。



どんな大物に会っても
どんな状況になっても
どんな状態でも。



動揺したり、自分を見失ったりなんてしない。



でも、この人は、別。


この人だけは、別。




ゲームに集中しながら
ゲームに集中しているふりをしながら


ずっと


その人の事を


その人の手を


その人の唇を


その人の言った言葉の意味を


ずっと


ずっと


考えていた。

















家に帰りシャワーを浴び、部屋着に着替えると珍しくピタッとくっついてくる。
何かあったのだろうか。


自分から誘ってきたし。


それに普段あまり動じる事のないニノの様子もおかしかった。


それにひどく疲れているように見える。
相変わらずピタッとくっついて、何も言わずグラスを傾けている智くんの姿を見つめた。


何も考えていないようで結構色々な事を考えている人だから。
考えすぎて疲れきってしまっているのだろうか。
ぼんやりとついているだけのテレビを眺めている。



その姿を見ながらもしかしたら、と思った。





今は昔と違って色々な情報が簡単に目に入ってくる。


見たくないことも。
知りたくないことも。
聞きたくないことも。




だからもしかして…









「ニノが…」

「ニノ?」


そんな事を思っていたらぼんやりとテレビを眺めていた智くんが小さく口を開いた。


「うん、ニノに…」

「ニノに?」

「……ニノは、さ」

「うん?」

「みんなも…」

「……」


それだけ言うと黙り込んでしまった。
そしてやっぱりそうか、と思う。


結局話の核心には触れることはなかったけど、
でも智くんがそれ以上何も言わなかったから
だから何も聞かなかった。


ただピタッとくっついて来るその華奢な身体に寄り添う。


そして


しばらくグラスを傾けていた智くんがウトウトし始める。


寝室に行って寝よっか、と声をかけると
素直にうんと頷いたので寝室へと連れて行った。


あまり考えていないようで考えている人だから。
いっぱいいっぱい考えて疲れてしまったのだろうか。


ベッドに入って目を閉じたと思ったらすぐに小さな寝息が聞こえてきた。









もうすぐ20周年。





考えなくてはならないことがある。
考えていかなければならないことがある。


嵐としての将来の事。
自分たちの今後の事。


変わっていくこともある
変わらないこともある
変わらざるを得ないこともある
変えられないこともある


そして


これまでの仕事の事
これからの仕事の事


そして


過去の事
現在の事
未来の事


年齢を重ねるとともに、移りゆくこと。
そして変化していくもの。


そしてそれは仕事だけじゃない。


プライベートなことも色々考えなくてはならない時期に入ってきている。







いつも考えてないようで考えている人だから。
リーダーはあだ名と言いながらもリーダーとしての考えを持っている人だから。
だから考え過ぎて疲れきってしまったのかもしれないと思いながらその顔を見つめる。
そしてその頬に手でふれるとうっすらと目を開いた。


「ごめん、おこした」

「ううん」


慌てて謝るとじっと見つめてくる。
そして、おいでという風にゆっくりと手を広げてきた。
だからその身体におさまるように身体を近づけると
引き寄せられるように両手を回してきてぎゅっと抱き着いてくる。


その身体を強く抱きしめる。


そして。


その華奢な身体を抱きしめながら、だんだんと過渡期に入ってきているのかも知れないと、


ぼんやりとそう思った。


この先色々な事が変わっていく時期なのかも知れない。


仕事のことも。


プライベートなことも。








でも。


それでも。


この先どうなろうともこの人のそばにいたいと思う。


この人の姿を追っていきたいと思う。
この人を守っていきたいと思う。


それはこの人が好きだから。
ずっと好きだから。
それはこれからもずっと変わらないと思うから。


だからどんな形になろうともずっとこの人を見ていたいと思う。
ずっと一緒にいたいと思う。
そう思いながらその額にお休みと言ってちゅっとキスをすると
物足りないというように首に手を回してくる。


だから求められるように頬に首筋に唇にとキスを落とす。


そして。


視線が合うと、またあなたはもっとというように求めてくる。
だからそれに応えるようにゆっくりと唇を重ねる。





そして。



抱き合って。



何度か角度を変え唇を重ねて。



あんまり考えすぎて疲れないでと願いながらまた強く抱きしめて。





そのまま深いキスをした。