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山コンビ大好き。

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きらり

17   vol 2

2012-11-11 16:14:29 | 日記
季節外れの転校生は


物静かで自分から率先してしゃべるタイプでは


決してなかったけど


なぜか人を惹きつけるものを持っていて


いつもクラスメートに囲まれていた。



その人が転校生としてクラスに来てから
クラスメートは皆その人の持つ
その不思議な雰囲気に魅了されていた。

それはその人の身ににおこった出来事に対しての同情、とか
東京からきた、とか
そういうのとは一切関係なく
その人の持つ独特な空気感と存在感のせいだったと思う。

そして自分も決して例外ではなく
初めてその人を見た時から
ずっと惹かれていた。

初めてその人を見た瞬間からなぜか目が離せない。



そんな自分の気持ちに戸惑いながら
あえてその人と距離を置く。
だけど困っているときは助けたい
何とかしてやりたいという思いが常にあり
その人にあまり気づかれないようさりげなく助けてきた。




そして、あの日。


その日、珍しくその人は朝いなかった。
そこに教師の休みのための教科変更の連絡と
教室の移動の話があった。

その移動教室からは校門が見える場所だったので
その人が来るかもしれないと思って
ずっと見ていた。

そしたらその人は来た。


理由をつけて慌てて教室に戻ると誰もいない教室でその人は
ボーゼンとしていた。
自分の気配に気づいたのか後ろを振り返り
「ああ、びっくりした」
とあまりびっくりした風でもなく綺麗な顔でそう言った。

その顔があまりにも綺麗で何も言えなくなって
見惚れていると
「今の時間って確か古文だったよね」
その人は反応がない事を気にする風でもなく
ふにゃんと笑ったかと思うと続けてそう言った。

その同性とは言えあまりの可愛さにクラっとしながらも
「古文のセンコー急に休みになったから移動になった。こっち」
そう自分の気持ちを押し殺して
何でもないふりをしてそう言って前を歩いた。
そうでもしないと顔が真っ赤になったのが
バレてしまうと思った。


ただそれだけの出来事なのに胸がドキドキした。
その人が気になって仕方がない。
だけど親しくなるとこの気持ちがどうなってしまうのかが
怖くてわざとそっけない態度をとる。




そしてあの雨の日。


あの日何やら担任に頼まれごとをされているなと思い
わざと帰り支度をゆっくりしていたら
その人は帰る準備をせず
残って何かをするようだった。

気にはなったが教室に残る理由もなく
帰ることにした。

家に帰りボーとしていると雲行きが怪しくなってきた。
きっと傘なんて持ってきてないだろう
そう思うといてもたってもいられず
自宅のそばにある学校に傘を持って戻る。


下駄箱を確認するとまだ学校にいるようだった。
そうしているうちにどんどん空は暗くなってくる。

下駄箱から少し離れたところで待っていると
その人は現れた。
急な雨にボーゼンとしているようだった。

そのまま雨の中駆け出して行きそうだったので
慌ててその人のもとに行く。
そして傘を差し出した。


その人は急に現れた自分と傘を差し出された事に戸惑って
いるようだった。

そして一本しかない傘に
「櫻井くんはどうするの」
その時、自分の名前をその人の口から聞いた瞬間。
時が止まったように思った。

何も言えなくなる。
何とかその人が不審に思われないよう
家が近いから大丈夫だと、使い終わたっら捨てていいと

それだけを何とか告げて

走り出していた。

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