yama room

山コンビ大好き。

ブログではなくて妄想の世界です。

きらり

山 短編8 スピンオフ

2014-07-22 17:23:16 | 短編



「修也~行くよ~」

「え~ヤダ。俺行かないから、姉ちゃん一人で行ってきて」


日曜日の朝。
姉ちゃんは朝からめちゃくちゃ張り切っている。


「何言ってんの? お母さんにも頼まれたでしょ?」

「だってメンドクサイ」

「何がめんどくさいなの」

「姉ちゃんだけで行ってきてよ」


せっかく部活も何もない日曜日。
こんな日ぐらい家でゆっくりしていたい。
中学2年生は忙しいんだぞ。


「またそんなこと言って」

「だってせっかくの日曜だもん」

「修也はお兄ちゃんのこと心配じゃないの?」

「そりゃあ、心配は心配だけど……」


この夏から兄は父から頼まれ家を出て同じ年の男の人と
シェアハウス生活をしている。


「でしょう? お母さんもそのために忙しい中
煮物とかたくさん作ってくれたんだよ」

「まあ、それはそうだけどさ。
でも便りがないのは元気な証拠って言うじゃん?」

「あんたそれ何か違くない?」

「え? そうだっけ?」

「まあいいから、ほら行くよ。
お兄ちゃんにも今日行くって伝えてあるんだし」

「……」


やっぱりそうは言ってもメンドクサイ。















そんな感じで半ば無理やり連れて行かれることになった
兄が住んでいるシェアハウス。


そのシェアハウスには一度だけ来たことがある。


それは兄の引越しの日。


兄は多分すぐ帰ってくることになるだろうからと
そう言って笑っていた。
でも、一週間たっても二週間たってもその言葉に反して
戻ってくる気配はなくかれこれもうすでに一ヶ月以上がたっている。


姉も母も他人と暮らしたことがない兄には無理だろうと
すぐに根を上げて帰ってくるものと思っていたから
心配になったのだろう。
忙しい母に代わって様子を見に行くようお達しが出たのだ。


兄のシェアハウスの同居人の話は少し聞いてはいた。
でも男の人だし別に興味もなくふーんってかんじで
聞いていたので詳しいことはあまり覚えていない。




















「ね、お兄ちゃん、かなさんと別れたらしいよ」

「え?」


姉と一緒に兄の住むシェアハウスに向かう電車の中
突然姉がそう言った。
かなさんは高校時代から兄と付き合っていた人で
家にも何度か遊びに来たことがあったので
顔だけは知っていた。


「びっくりだよね~」

「なんで知ってんの?」

「だってかなさんからメールもらったもん」

「ふぅん」


まぁ、兄が誰と付き合おうが別れようが
あまり自分には関係がなかったので
はっきり言ってどうでもよかった。


兄は


兄は昔からよくモテる人だった。
同じ学校の人であるとかそうでないとか関わらず
よく告白されていた。
兄はよく彼女がいるって知っててもそれでも
まだ告白してくる人がいるって苦笑いしてたっけ。


そんな話しながらようやく兄の住むシェアハウスに到着した。
つっても同じ沿線上なんだけど。
つーか近いんだからたまには兄ちゃんも
ゆっくり顔を見せろって言うんだよなぁ。


ごくたまに帰ってきたかと思っても
荷物を取りに来ただけとか言ってすぐ行っちゃうし。
おかげで俺のせっかくの日曜日が潰されちゃうってことを
兄は、はたして分かっているのだろうか。
そんな事を心の中で愚痴る。

















玄関のチャイムを鳴らすとすぐに兄が出てきた。
一ヶ月ぶりにまともに見る兄の顔。
姉ちゃんも嬉しそうだ。



そして


兄の後ろから顔を見せたその人。


その人を見て


息が止まった。














兄も昔から綺麗な顔立ちをしていると
親戚の人やら近所の人やらよく言われていた。
だから綺麗な男の人の顔といっても免疫があるつもりだった。


でもその兄とはまた違ったタイプの美しい顔の男の人。
見慣れていたはずなのに
その兄とは違ったタイプのその美しい顔に
息をすることも忘れ釘付けになった。



「何ぼーっとしてんの? ほら入るよ」


そう姉に言われて慌ててお邪魔しますと
言って案内されるまま部屋に入った。


「ほら、お母さんから肉じゃがだよ~
それにお浸しとか唐揚げとかも持ってきたよ」

「おぉ、でも、すぐ帰れよ。智くんもお茶なんていいから。
こいつらすぐ帰るから」

「ヒドイ~帰れとかすぐ帰るとか。せっかく来たのに、ねぇ」

「……」

「修也? 何かさっきからやたらぼっとしてない?」

「え? そんな事ないです」

「……やっぱ変だわ。あんた」


慌ててそう言って思わず大野さんをみると
大野さんはお茶をテーブルに並べながら
その綺麗な顔でふふって笑った。


その顔を見て自分の顔が真っ赤になったのがわかった。
慌てて気づかれないようにと下を向く。
そしてそのまま目線をテーブルにやると
大野さんがコップを並べている綺麗な手が目に入った。


その美しい手。
今まで男の人でこんな手をしている人見たことない。
細くて長くて爪まで整った綺麗な手。
男の人だけどその綺麗な手は大野さんにすごく
似合っているような気がした。
















「あんたちょっと今日変じゃなかった?」

「……別に。疲れてただけだよ」

「でもまぁ二人で仲良くやってるみたいで安心したね
早速お母さんに報告しとかなくちゃだね」

「……うん」


結局お昼ご飯を兄のところでご馳走になり
そんな話をしながら家に帰る。


「大野さんも優しそうな人だったね」

「……うん」


大野さんという言葉にドキっとする。


「だから他人とは言え上手くいってるのかな?」

「……うん」

「さっきからあんたうん、しか言ってないし」

「……」






確かに大野さんは優しそうな人だった。


でも


それ以上に


兄が


兄の大野さんに向けられる視線が


優しかった。







愛おしそうに


見守っているかのような視線。


自分たちに向けられる視線とはまた違う。


両親や


友達や


そしてかなさんに向けられていた視線とも違う。









二人の関係は


よくわからない。


ただの同居人なのか


それとも友情なのか。




でも


ふたりの間には


優しい空気あって


ふたりがそれに包まれている。





でも


なぜかその中には


他の誰も入っていけないような


そんな目に見えないバリヤーが見える。






自分がもう少し


もう少しだけ大人になったら


そのバリヤーの意味が分かる日が


来るのかな。





そんな事を思いながら電車から見える景色をぼんやりと眺めた。

















「ごめんね~今日は妹と弟がどうしても挨拶したいってきかなくってさ」

「ふふっいいよ。中二と高二だっけ? 可愛いよねぇ」

「いやぁ生意気なだけなんだけどさ」

「それにうちのとこも来月姉ちゃんが戻ってきたら
翔くんのところに挨拶に行くって言ってたし」

「え~わざわざいいのに」

「イヤイヤ、お世話になってるんですから。
で、そん時多分この家にも来ると思うし」

「ええ~お姉様が」

「お姉様って」

「ふふっお姉さんって智くんに似てる?」

「まぁ似てるって言われるかなぁ」

「じゃあ綺麗な人なんだろうなぁ」

「……」

「……ん?」

「よくそんな恥ずかしいこと真顔で言うよね」

「え~だってそうじゃん」

「……」








ねぇ、翔くん。
こうして翔くんと一緒に暮らして
こんな風に何気ない会話をすることに
どれほど感謝しているかあなたはきっと分かっていないでしょう。


母が亡くなって後を追うようにあっけなく逝ってしまった父。
あの時は一人でいることよりもあの家で
同情や哀れみの視線を感じながら生活していくことのほうが
キツくて辛かった。


そんな中、翔くんのお父さんが心配して来てくれて
自分の息子と一緒に住めばいいと言ってくれた。


最初はそんな事、赤の他人同士だし上手くいきっこないって
そう思ったけどでもひとつの賭けに出たんだ。
翔くんのお父さんの言ってくれたことを
やってみてそれでダメだったらまた考えようと。


で初めて翔くんに会ったあの日。


翔くんは目をクリクリにして少し驚いた顔をしていたけど
でもやっていけそうだと、そう言ってくれた。
その言葉にすごく安心したんだ。





















そしてあの頃毎日悪夢ばっかり見てどうにも眠れない日々を過ごしていた。
ある日どうしようもなくて翔くんに助けを求めた。
一緒に寝てもいいかと言ったら翔くんは少し戸惑った顔をして
でもいいよって言ってくれた。


同じベッドに入ると翔くんは大きな目をますます大きくして
びっくりした顔をしてたけど気にせず布団をかぶったら
何だかやけに安心して良く眠れたんだ。


あの日。


本当は途中一回起きてしまって翔くんをみたら
翔くんは全身を緊張させててカチコチになってた。
で、悪いなって思ったんだけどそのまま翔くんの寝息を聞いていたら
自然にまた眠くなってきて気づいたら眠ってた。


絶対身体はきつかったはずなのに
良く眠れたって言ったらこれからも一緒でいいよって
翔くんはそう言って笑ってくれた。


その後彼女さんがきたりとあったけど
翔くんが不快な思いをしないようにって
いろいろ気を遣ってくれてるのがわかってたから
全然嫌じゃなかった。














そして


あの日突然


『キスしていいですか』


って遠慮がちに言ってきたよね。



そんな言葉が翔くんの口から出るなんて思わなくて
少しびっくりしたけどいいですよって言ったら
翔くんは自分で言ったくせにすごくびっくりしてたね。




ねぇ、翔くん。
いつもあなたの何気ない会話に救われている。
同情や哀れみでもないその優しい視線にほっとしている。


いつもぶつからないようにと緊張しながらも
一緒に寝てくれる翔くんが好き。
いつも一緒にベッドに入ってお互い触れないように寝ているけど
今日はその手をギュッと掴んだ。


翔くんはびっくりして目をまん丸にして見つめている。


「好き」


そう言って手を繋いだままちゅっと触れるだけのキスをしたら
翔くんの顔が真っ赤になった。
そのままぎゅっとその身体に抱きつくと翔くんは少し戸惑いながらも
腕を伸ばしてきて包み込むようにぎゅっと抱きしめ返してくれる。


しばらくそのままでいて腕の力を弱める。
そして顔を上げると翔くんが困りきった顔で見ていた。


「ごめん」


あまりにも翔くんが困りきった顔をしていたから思わず謝る。












「……何か」


「……?」


「なんか智くんのこと好きになりすぎて困る」


翔くんがすごく困った顔をしながらそう言ったから


「俺も」


そう言ってまたその身体にぎゅっと抱きつくと


翔くんも力いっぱいギュッと抱きしめてくれた。



山 短編8 後 (シェアハウス)

2014-07-08 16:55:14 | 短編




そこは


智くんと二人だけのシェアハウス








「なんで言ってくれなかったのぉ?
最近付き合い悪いし、デートも飲み会もすぐ帰っちゃうし
変だと思ってたんだよね~」

「……」


なぜか実家を出た事を知った彼女が
今日はしつこく聞いてくる。
まぁ、当たり前っちゃ当たり前か。








「でも、その家、私も行ってみたい。
お父さんもお母さんもいないならゆっくりできるし
なんなら泊まってもいいしね」

「……」


そう言ってご機嫌な彼女はフフッと笑う。
男としては普通は喜ぶべきところなんだろうな。
イヤ、以前の自分だったら確実に喜んでたろうな。


でも


今は


彼女には申し訳ないけど


全然嬉しくない。


あの家は智くんと二人だけの大切な家で
他の誰にも邪魔されたくない。
それがたとえ彼女であったとしても。


そんな風に思ってしまう自分はちょっと変なのかな。










最初


このシェアハウス生活の話があった時
こんなに長く続くなんて夢にも思っていなかった。
だから、彼女にも、友達にも誰にも話さなかった。


でも、智くんと出会って
二人でのシェアハウス生活が始まって
何となく暮らし始めたら何だか妙に居心地がよくて
このシェアハウス生活を楽しんでいる自分がいる。


だけど


この空間が


自分達以外の他の誰かが入ってきたら
何だか壊れてしまいそうな
そんな気がして誰にも言わなかった。










家に来たがっている彼女に
一人暮らしではなくシェアハウスで相手があること。
そしてその相手には特別な事情があり
今はそっとしておいてあげたいことを
簡単に説明し家に来ることは遠慮して欲しいとお願いした。


でも実家暮らしでない、ということに妙に
テンションが上がってしまった彼女には
全く通じなかったらしい。


「遊びに来ちゃった。ね、入ってもいいでしょ?」


インターホンがなり玄関に出ると
そこには彼女が立っていた。


家に行きたいと頼んでも全然連れてってくれないと
痺れを切らした彼女がどこをどう調べたのか
突撃訪問してきた。


「あ、俺、自分の部屋にいますから、どうぞごゆっくり」


リビングにいた智くんはすぐに状況を察したらしく
そう言ってニッコリと笑うと自分の部屋にいった。


「ほらぁ、いいって」


彼女は興奮しながらそう言って家の中に入ってくる。
そして、うわぁ、吹き抜けで素敵な家だねなんて言っている。
そんな彼女をただ冷めた目で見ているだけの自分がいた。


それからも彼女は何度も突撃訪問をしてきた。
この家は自分ひとりの家ではないから止めてほしいと
何度も頼んでも彼女にはどうにも通じないらしい。


色々食事の材料を買ってきて料理を始めたり
イチャイチャしてきたり。
その度に智くんは気を遣って外に出たり
遠慮して自分の部屋に閉じこもったりしていた。













「何度も言ってるけど、もう家には来ないで欲しい」

「何で?」

「家に来てくれたり食事を作ってくれようとしてくれる気持ちは嬉しい」

「だったら何で?」


彼女は納得がいかないって顔をする。


「何度も説明しているけど俺一人の家だったらいいけど
相手もあることだからやめて欲しんだ」

「でも、智くん全然気にしてなかったじゃない?
いつもごゆっくりって言って笑ってくれてたよ?」

「それはそうだけど」

「だったらいいじゃない?」

「その智くんに凄く気を遣わせてしまっているのがわからない?」

「でも、それはお互い様なんじゃない?」

「……」


彼女には何を言っても通じないらしい。
多分、お互い実家暮らしだったから
自由にできるこの状況が嬉しくてたまらないのだろう。
それはわからなくもない。





でも


波がひくように


潮がひくように


彼女に対して気持ちが冷めていくのを感じた。












「智くん、ごめんね。嫌な思いさせてしまって」

「……?」

「もう彼女とは別れたから。もうこういうことはないから」

「そうなの? 別に俺はよかったのに。
元はといえばここは翔くんの家なんだし」

「二人の家でしょ。それに俺が嫌だったの。
もっと早く決断してればよかった。本当にごめんね」

「そうなんだ」


智くんは、そうなんだと
そう言ってそれっきり何も言わなかった。


そう


多分


自分自身が嫌なのだ。
だからここに住むと決めた時も
彼女にも親しい友人にも決して誰にも言わなかったし
知られないようにしていた。













そして


彼女と別れてから


智くんは


また一緒のベッドに


入ってくるようになった。




ベッドの中に一緒に潜り込んできて目が合うと
えへへっと可愛らしい顔で笑う。
この顔がまたかわいいんだよね。


何だか


ここしばらく智くんが遠慮していてこなかったから
一人で寝てて寂しかった。
最初は自分以外の人と一緒に
ましてや男の人と寝るなんてとても考えられなかったはずなのに
いつの間にか一緒に寝るのが当たり前になっていた。


だから智くんがベッドに入ってこないと
ポッカリと穴があいたみたいに寂しくて
物足りなく感じていた自分がいた。


最初は蹴ったりしないようにと緊張していたせいか
身体がカチコチになって痛かったはずなのに。


本当に慣れというものは


恐ろしい。


身体が自然に慣れて


そして


智くんのすぅすぅという寝息に


身も心も安心し


自分自身の眠りを誘う。



これって一体何だろうね?












「来月姉ちゃん帰ってくるんだ」

「そうなの?」


一緒にベッドに入ると智くんが思いだしたみたいにそう言った。


「うん、何か日本に転勤願い出してたみたいで
それが通ったみたい」

「そうなんだ」


そう言えば父がそんなような事を言っていた気がする。


「で、姉ちゃんには実家で一緒に暮らさないかって
言われているんだけど…」

「……うん」

「もう少しここに住んでていい?
姉ちゃんには同じ都内だから簡単に会えるし。
それに家族水入らずのところ邪魔したくないんだよね」

「いいにきまってるじゃん」

「ありがと」


そう言うと智くんは嬉しそうに笑った。


「それにおやじに感謝されてるんだよ
これで恩返しができるって。
自分じゃ何もしてねーのにな」

「ふふっでも俺も翔くんのお父さんに感謝してる」

「……?」


そう言って智くんは、んふふって笑った。













今日も智くんは


ベッドに


一緒に入ってくる。


その顔を見つめるとえへへっと可愛らしい顔で笑う。


そして朝、目覚めると智くんが隣にいる。


おはようというとおはようって言って可愛らしい顔で笑う。



ね、何だかすごく幸せなんだけど。




「……」

「……?」

「キスしていいですか?」

「ふふっいいですよ」


冗談で言ったら智くんが布団から顔だけだけ出した状態で
いいですよって可愛らしい顔で答える。


「ええぇ? マジで?」

「んふふっマジですよ」


信じられなくてそう聞くと智くんは綺麗な顔で
そう言って笑った。


ね、何だろうね?


朝目覚めて隣に智くんがいることが幸せで


ずっとこんな日が続けばいいなって思って


そしてその綺麗な顔を見ていたら


キスしたくなった。


思わずキスしていいですかって聞いたら


思いがけない智くんからの返事。









突然降ってわいたシェアハウスの話に
こんな風になるなんて思わなかった。
智くんの顔を見ると智くんはなあに?って
不思議そうな顔を浮かべている。


上半身を起こし上から智くんの顔を見つめる。
智くんもまっすぐな視線で見つめてくる。
その綺麗な顔
最初見た時から綺麗な人だと思っていた。


長い睫毛
小さな形の良い唇
その顔をじっと見つめた。


智くんはあまりにも見つめすぎたせいか
少し目を伏せた。
その目を伏せた顔がまた儚くてとても綺麗だ。


そしてそのままゆっくりゆっくりと顔を近づけていって
その唇にそっと唇を一瞬だけ重ねた。
そして上からまた智くんを見つめる。
智くんが頬をうっすらと赤く染め
まっすぐな視線で見つめてくる。











「好きだよ」


そう


この目の前にいる人が


好きだ。


「ふふっ俺もだよ」


智くんはそう言って、んふふっと笑う。


「何でだろうね?」


「ふふっわかんない」


男の人なのにね?


でも最初に会った時から特別な存在だった。


「ね、今度一緒にお墓参りに行こう?」


「うん」


そう言うと智くんはちょっと意外そうな顔をして


そして、うんと言って嬉しそうに笑った。


これから先の事はわからない。


でももう少し


この二人だけのシェアハウス生活を


楽しみたい。


ああ、智くんの言ってた父に感謝って


この意味だったのかな?


だとしたら自分の方が父に


凄く凄く感謝しなくちゃいけないな。



そんな事を思いながらもう一度角度を変えて
顔を近づけていくと唇を重ね合わせる。
そしてそのまま深いキスをした。