旅と酒とバッグに文庫本

人生3分の2が過ぎた。気持ちだけは若い...

地獄温泉「すずめの湯」から火の山温泉「どんどこ湯」へ

2013年08月30日 | 



日奈久温泉街をでてから、一路阿蘇へ。
何ゆえに阿蘇かと言えば、地獄温泉に尽きる。
以前から、ここの「すずめの湯」に浸かりたい願望は有ったのだが
なかなかその機会に恵まれず、今回は是が非でも、と思っていた。

途中、北九州までの帰りの距離を考えて、心配なく走れるように
ガソリンを補充する。
これで、今回の旅は、燃料の心配をすることなく、のんびりと走ることが出来る。

しかし、熊本市内から57号線に出るまでがかなり混んでおり
この分では、地獄温泉に到着するのは、5時半を過ぎるかもしれなかった。
57号線に出ると、見慣れた風景が展開し、あまり渋滞も無く快適に走る。
57号線から南阿蘇方面への右折交差点が」かなり混んで
いつものことだが、この交差点だけはどうにかならないものかと思う。

地獄温泉への道のりは長かった。
山道へ左折してからが大変。
これでもかというばかりに延々と細い道を登る。
後ろから大きな4輪駆動車が来ていたが
こういった道では、ボクのビストロ君のほうが小回りが利いて早い。

かなり登ったころ、やっとのことでまず「垂玉温泉」が見える。
山奥なのにずいぶんと立派な建屋の旅館。山口旅館である。
なんだか嫌な予感。
阿蘇は、一大観光地となってからは、昔のような鄙びた宿は少なく
やたら料理や風呂に凝った、近代的で洒落た感じの宿が急速に増えていて
また、そういった宿は大変な人気で、関東方面からの客も多い。
そして例外なく宿賃が高い。
リニューアルブームなのである。
垂玉温泉からわずかに登ると、地獄温泉の建屋が見える。
やはり思った通りに到着は5時半だった。

早速、帳場にて今晩の部屋があるかどうか聞いてみる。
部屋はあるが、一人泊だと朝食付きで6450円だという。
まあそんなものかと、申し込もうと思ったが
夕食のことを尋ねると2食付だと一番安くて9000円ほどだという。
1泊2食付で9000円なら、まあいいかとも思ったが
念のため、食堂で簡単な夕食は無いか聞いてみると
すべて囲炉裏焼きコースで、安いのが2500円くらいから様々だという。
炉辺焼きというか囲炉裏焼きのほかには無いかと尋ねるも
是しかないというので、しばし思案の上、部屋は後でも確保できそうだし
とにかく「すずめの湯」に入ることにする。
ボクはバーベキューのように焼いた料理と言うものはあまり好みではない。
地獄蒸しのような蒸し料理の方がずっと美味いと思う。
それにしてもこんなに暑いのに囲炉裏焼きのみとは…。
夏の真っ盛りだぜ今は。

「すずめの湯」は一言で言えば素晴らしかった。
何が素晴らしいかといえば、その泉質である。
硫黄泉が風呂の底からボコボコと沸いている。
浴槽が何槽かに分かれており、それぞれ湯温が違う。
泥湯のように濁っていて、水面下はなにも見えない。
ここは混浴であり、女性のために時間を区切って女性専用時間も設けられている。
露天風呂には若すぎるレディーが二人、父親と一緒に入っていたが
その母親の姿は無かった。
それでも5,6年生くらいの女の子は恥ずかしそうに前をタオルで隠していた。
決して邪気が無い年齢ではないはずだが、彼女の勇気に拍手を送ろう。
別府の明礬温泉の泥湯なんかは、たまに外国人の若い女性が入ってくるが
実に開けっぴろげで、大らかなんだけど、日本の女性はいくら世の中が進んでも
なかなか、そこまでは踏み切れないね。
好奇の目ばかり気にしてる感じがする。
温泉なんてそんなものじゃないのに、まあそういったことを期待して
混浴温泉に来る輩もいるので、仕方の無いことではあるけれど。
あとで入ってきた夫婦連れの奥様も50はとうに過ぎているであろうと見えるが
グレーの長いワンピースを纏ったまま浸かっておられた。

ただ残念なことが少し。
ここは湯は大変素晴らしいのだが、更衣室が汚い。
野趣あふれるといえば、上手い事言うなあ、とも思えるが
床がビチャビチャで、敷いてあるタオルの足拭きも大変不衛生。
管理が行き届いているとは決して言いがたい。
となると浴槽の清掃は?ということにもなる。
濁り湯の場合、汚れがわかりずらいので、清掃が手抜きになりやすいのだ。
明礬温泉も泥湯に結構なゴミが混じっていることも多い。

ボクはここで暗くなる前には湯からあがって、宿決めをしようと思っていたのだが
隣に浸かっていた同年輩の男性とすっかり意気投合して話し込んでしまった。
お腹も減ったし、宿を決めていないので、ちょっと不安でもあったが
まあ、いざとなればここからなら夜中に自宅に帰ることも可能であるし
ということで、暗くなるまで話し込んだ。
熊本市内から来ていた方で、聞けば同じ歳。
サラリーマンだったが、何年か前に大病を患って退職し
わずかな年金を貰いながらの暮らしだということ。
ここの湯が身体に大変良いので、市内から通っているらしかった。
彼も旅好きで、若い頃の北海道旅行の話などで盛り上がり
ユースホステルの写真入会員証など昔話に花が咲いた。
ボクらの貧乏旅行の原点のような体験を彼も持っていた。
これからの人生の過ごし方や希望、夫婦の関係のことなど
飾らずに話し合える人も珍しい。
周りに浸かっている人たちにも話が筒抜けなので
少々気恥ずかしくもあったが、恥の掻き捨てである。
またこの素朴な温泉の魅力のなせる業というか、魔力でもある。
すっかり星空が見える頃になって、ボクは空腹と宿決めのため
このへんで辞退することを彼に告げ、名残惜しく湯をあとにした。
彼の名前も住所も聞かなかったが、聞いてもメモするものがなくては
すぐに忘れてしまうので、意味を成さなかったし
この出会いは、一期一会でよろしいと思った。
彼もこんなに長湯したのは初めてだと言っていた。

地獄温泉の画像が無いので、リンクしておく。
勝手だが、清風荘のホームページより画像も拝借しておく。

http://jigoku-onsen.co.jp/





さて風呂からあがると、もうすっかりこの清風荘に泊まる気は失せてしまった。
いい出会いがあったので、このまま自宅に帰ってもいいかなと思いながら
真っ暗な山道をそろそろと下って行き
とりあえずコンビニでささやかな夕食を購入する。
コンビニ食は久しぶりである。
最近は添加物や化学調味料を敬遠して
コンビニでは食品を購入しないように心がけている。
ざる蕎麦、サンドイッチ、おにぎりといった妙な取り合わせだが
腹が膨れれば良いというだけの食品であり、
なるべく変なものが混じってないものを選んだ。

さて家に帰るにしても、今からでは到着は夜中になるだろうし
明るい時ならまだしも、暗く不慣れな道は走り辛いので
途中で宿があれば訪ねてみようと思いながらそろそろと走ったのだが
後ろから煽られるので、あまりスピードを落とすのも憚られた。
通いなれた夜道は皆さん結構飛ばすのである。
こんなときカブ太郎なら、と思いを馳せた。
端っこをトボトボ走っても迷惑がかからないのだけどね。

57号線沿いを赤水あたりまで走ると、木立に囲まれて解かりにくいが
朝食付き6000円の看板を発見。
しばらく走ってからUターンし、ホテルに入ってみる。
「アーデンホテル阿蘇」。
カウンターで尋ねると、今からでは夕食は間に合わないので
朝食のみとなり、6450円だという。部屋もあるらしい。
看板には6000円と出ていたではないかと食い下がるのも億劫で
和室にしてくれと頼み、車を駐車場に停め直し、すべての荷物を担いで部屋に入る。
いつもより1000円高いと部屋も立派である。



三和土があり、部屋は広くきれいで、暗いので良く見えないが
窓の外には立派な庭園があり、そして何よりも冷凍庫付きの冷蔵庫もある。
トイレも風呂も付いている。
外の渡り廊下を100メートルくらい行くとホテル付属の施設「どんどこ湯」という
大きなお風呂施設があるというので、しかし営業時間は10時までだというので
とりあえずコンビニおにぎりを一つ頬張って、湯へ行く。すでに9時が近い。
その前に、ざる蕎麦やビールその他果物などを冷蔵庫に叩き込み
ほとんど溶けた氷の入っていたビニール袋を冷凍庫に入れる。

なんだか「すずめの湯」の成分を洗い流すのがもったいなかったが
「どんどこ湯」も泉質がいい感じである。
露天は暗くてよく見えないが、とにかく広い。
しかもすべて源泉かけ流しで、硫化塩泉のにごり湯である。
内風呂も広く、洗い場もきれいで、サウナもある。
時間が遅いせいか、人も疎らで浸かりたい放題である。
ボクはつくづくこういった温泉が近くにあるところに住みたいと思う。
家のローンは終わったので、売り払って小さな家を買えばよいのだが
難敵が一人居る。こいつが問題の原点なのだ。

時間目一杯「どんどこ湯」を楽しんで部屋に戻る。
ホテルの大浴場も立派らしいので明朝入るつもりである。
今夜はもう湯疲れしたみたいである。
空調のよく効いた部屋で冷蔵庫から取り出した
よく冷えたビールを飲み、遅い夕食を食べ
食後の果物など食いながら、明日はもう自宅に戻らなければならないことを思うと
なんだか、ちょっと気が滅入ってしまう。
こんな暮らしが永遠に続けばいいのに。


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