旅と酒とバッグに文庫本

人生3分の2が過ぎた。気持ちだけは若い...

羊群原の小道をマウンテンバイクが登って行く

2010年05月16日 | 

15日の土曜日から1泊で平尾台キャンプをした。
本来なら、無職の不良中年さんとやる予定だったのだが
彼の都合で、一人キャンプとなった。
勿論「平尾台自然の郷」などのお子様ファミリー向け似非自然キャンプ場ではなく
目白洞キャンプ場である。

まさかこんなに素晴らしい天気に恵まれるとは思いもしなかったので
彼には、5月の月末あたりでどうかと打診したばかりであったが
天気予報は見事にはずれ、素晴らしい五月晴れとなったので
急遽一人で実行に移した次第である。

暑くも無く寒くも無く、爽やかな風に吹かれて
木陰では少しひんやりするくらいで、最高のキャンプ日和である。
おまけに他のキャンパーは誰も居なくて、独り占め状態である。
管理人は5時過ぎには事務所を閉めて帰ってしまうので
水だけは確保しておく必要がある。
この水が地下水の汲上でまた美味い。

「ひとりでキャンプ?」
「ええ」
「ここはものを考えるには最高だよ。いろんなことをよく考えるとええ」

あまり愛想のよくはない管理人だが面白いことを言う男である。
私のことを、この歳で独り身になった冴えない男だとでも思ったのだろうか?

昼間からビールとウィスキーを飲み、木陰で椅子に腰掛けて読書する。
しかしこの度は持ってくる本を間違えた。
最近、1Q84のBOOK3を読み終えたばかりなもので、
つい村上春樹の短編集など持ってきてしまったのだ。
読んでいると居眠りをするほど退屈な本で
よくもまあ、ちまちまとひねり出したものだと感心するくらい
性懲りもない春樹節の連続で、いささかうんざりしたが
本はこれ1冊しか持ってきてないし、他にすることもないので
仕方なく日暮れまで延々と読み続けるが、飽きてしまった。
キャンプにはやはり冒険小説か推理小説に限る。
観念や想念やメタファーなんかが連続する作品は部屋読みのほうが良い。
しかも短編集などはもってのほかである。教訓。

陽が落ちると一気に寒くなった。
厚手のフリースを持ってきて良かった。
夕食を食べ、ウィスキーを飲み、少し酔っ払ったので
8時には早々にテントに入る。
焚き火でもしようかと思ったが、周囲には焚き火にするような枯れ木も無く
焚き火台も持ってなかったので、テント内で浅川マキを聞きながらまた本を読み
はや眠りについたころ不良中年さんから電話。
また今度一緒にやりましょうということで、再度眠る。
物音ひとつしない静けさで、不気味なくらいである。
10時頃目が覚めて外に出てみる。
星は思ったほど綺麗ではなかったが、あたりは漆黒の闇である。
寒いので、再々度眠る。

真夜中に若い男女の話し声で目が覚める。
こんな時間に、こんな山の上まで何をしにきたのか、しばし嬌声をあげたのち
20分ほどでいなくなる。
あまり五月蝿いようだと出ていって注意しようと思ったが
こういう阿呆には関わらない方がよかろうと思ったりしているうちに居なくなった。
朝までぐっすり眠る。

山の朝は早い。
4時半過ぎくらいから、ウグイスやカッコウが鳴き始める。
外は少しずつ明るくなってくる様子だ。
テント内がぼんやり見えるくらいなので、たぶん外はもっと明るいのだろう。
5時半過ぎに「ええいっ!」と気合を入れて起きる。
久しぶりのテントなので、身体の節々が痛い。
トイレに行き、汲み置きの水で顔を洗い、珈琲を沸かす。
昨日妻が作ってくれたホットサンドをプリムスのトースターで温めて食す。
またこれが美味い。珈琲とピーナッツも美味い。
9時前にオーナーがやって来てしばらく話す。
品の良いおじいさんである。
平尾台のことをいろいろと尋ねる。
ここは猪がよくやってくるらしいが、昨夜の若い男女の話をすると
人間が一番怖いという話になる。猪は、なにもしない。

朝10時にはテントを撤収し、道具をすべて車に積み込む。
すると目の前の小道を4,5台のマウンテンバイクが走り去る。
皆10代か20代の初めの歳頃の連中である。
元気がいい。いちばん軽いギアで、えっちらほっちらと急な坂道を登って行く。
彼らは下から登ってきたのだろうか?そしてこのままどこまで行くのだろうか?
貫山をトレールして下ってゆくのだろうか?
凄まじいパワーである。

私はと言えば、昼まで2時間、のんびりと辺りの山を散策し帰途についた。