WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

ホワイト・アルバム

2007年01月29日 | 今日の一枚(A-B)

●今日の一枚 121●

The Beatles767

 いわずと知れたザ・ビートルズの1968年作品、通称『ホワイト・アルバム』……。このアルバムを好きになり、すごいアルバムだと思ったのはもう30年以上も前の14歳の頃だった。けれども、そんなことはとうに忘れていた。考えてみれば、もう何年もこのアルバムを聴いていなかったのだった。

 数日前、ちょっと飲みすぎて酔っ払い、本当にしばらくぶりにギターに触れた。たまたま手元にあったアコースティック・ギターだ。何気なく爪弾いた曲は、ビートルズの「ブラック・バード」だった。かなり酔っ払っていたが、指が覚えているのだ。酔った勢いで、ビートルズと競演したくなり、押入れからレコードを探し出してかけてみた。しばらくぶりに会うビートルズは、若々しく元気だった。酔っ払っていたせいか、ギターは僕の方がちょっとうまかったかもしれない。

 置き去りにされたLPを今聴いている。なかなかいいアルバムだ。大人が聴く音楽としてBGMとしても聴くに値する作品だ。多くの批評家が語るとおり、このアルバムはビートルズの内部分裂を結果的に表現してしまったいわばバラバラのアルバムである。例えば、渋谷陽一は「結局今考えてみればビートルズの解散はこのアルバムを作り、発表したことによって決定づけられたのだ」と記す程だ(渋谷陽一ロック ベスト・アルバム・セレクション』新潮文庫)。そうした評価に異存はない。にもかかわらず、やはりいいアルバムではないか。内容はバラバラだが、それでもやはり全体としてビートルズの存在を感じさせるのはやはりすごい。バラバラだが、一人一人はやる気がないわけではないのだ。むしろ、独自の世界を作り出すのに懸命であるといってもよい程だ。一曲一曲の完成度が高く、今聴いても非常に新鮮である。仕事をしながらでも、BGMとして気分良く聴ける。もうひとつのAORといってもいい程だ。そして何より、個人的な感想に過ぎないが、最後の曲がリンゴ・スターをフュチャーした「グッド・ナイト」だというところが何ともいえずいい。

 『ホワイト・アルバム』は大人のアルバムである。これがしばらくぶりにこのアルバムを聴いた感想である。