WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

コーヒー&ミュージック

2012年10月21日 | 今日の一枚(G-H)

☆今日の一枚 339☆

畠山美由紀 & 小池龍平

Coffee & Music  ~Drip For Smile~

Scan10010

 疲れた。忙しい。そういえば、しばらく温泉にもいっていない。ああ、温泉に行って温まりたい。のんびりしたい。とまあ、不平不満をいい、愚痴をこぼしたくなる今日この頃である。仕方がないから、というか、いつものことなのだが、日常の細切れの時間にコーヒーを飲み、あるいは酒を飲んで、緩やかな時間を作り、何とかしのいでいる。まあ、世の中の大多数の人間はそうやって生きているわけだろうから、そういった時間を少しでもつくれる私は幸せということなのだろうか。

 私の住む街の出身の「実力派シンガーソングライター」畠山美由紀と「日本屈指のリズムギタリスト」小池龍平の2012年作品、『コーヒー & ミュージック~ドリップ・フォー・スマイル~』。畠山美由紀の最新作である。コーヒー界のカリスマ、堀内隆志氏の選曲・企画によるシリーズの第二弾というふれこみだ。私は堀内隆志という方は存じ上げなかったのだが、「カフェ・ブームを先導する鎌倉の大人気カフェ、“カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュ”のカリスマ・マスター兼オーナー」で、「美味しいコーヒー を飲んで頂く、というだけでなく、大好きなブラジル音楽や文化を伝えるべく」文筆活動や音楽プロデュースをしている人らしい。なんかちょっといかがわしい感じがするが、知らない人なので即断はよそう。

 畠山美由紀については、ずっと以前、恐らくはデビュー直後に、生で聴いたことがあるのだが、私の中での評価はあまり高いものではなかった。というか、はっきりいって低かった。その後、ここ数年、オーディオ雑誌等がしきりに取り上げるので、ちょっと聴いてみると、なかなか頑張っているじゃないか。いい感じになってきていると、アルバムをいくつか購入し、注目・期待していたのだった。震災後、私の住む街でも、知名度が上がってきたようだ(?)。はっきりいって、市民の多くは震災前まで、畠山美由紀の名前など知らなかったと思うが、快作『わが美しき故郷よ』の故だろうか、急速に知名度が上がってきたようだ。『わが美しき故郷よ』のタイトル曲は、地元ケーブルテレビでも地域ニュースのBGMとしてながされいる程だ。ただ、『わが美しき故郷よ』については、私は世の評価とは異なり、快作であることを認めつつも、どこか高い評価を下すことに躊躇する。まあ、ひねくれ者の、私個人の感想に過ぎないわけだが、簡潔にいえば、あの冗長な詩の朗読が理解できないのだ。どうしても、それにお金を払う気になれない。気持ちはすごくわかるが、いくら震災という特殊な状況であったにせよ、あんなふうに自意識を垂れ流してはいけない。作品としての「昇華」というものがなされていないと考えるのだ。実際、同じ故郷をもちながら、聴いていて共感できない。聴衆を置き去りにした、空転する自意識を陳列されているような気がするのだ。

 その点、このアルバムはいい。抑制がきいている。人生を根底からひっくり返すような、デーモニッシュな、「呪われた部分」に属するような音楽ではない。けれども、確実に日々の生活に潤いをもたらし、人の心を癒す音楽だ。凡庸といえば、凡庸なのかもしれないが、穏やかにやさしく包んでくれるような温かさに満ちており、生活のクオリティーを上げるのに役立つ音楽である。人生にはそういう音楽が絶対に必要だ。たまたま石巻のCDショップで見つけて買ったこのアルバムに、ここ数週間、私はかなり助けられている。


Togethering

2012年10月08日 | 今日の一枚(G-H)

☆今日の一枚 338☆

Kenny Burrell & Grover Washington jr

Togethering

Kenny_burrell_with_grover_washingto

 カセットデッキを書斎に移して以来、古いカセットテープを聴くことが”マイブーム”になってしまったようだ。カセットテープに録音されている作品を聴いた頃は経済的な事情もあり、一つのアルバムを何度も繰り返し聴きこんでいたようで、ほとんどの演奏が頭にこびりついている。

 また長らく忘れていたアルバムを発見した。ケニー・バレル & グローヴァー・ワシントン・ジュニアの『トゥゲザリング』、1985年の作品だ。MaxellのXLⅠというテープに録音されている。レコードからの録音のようだ。いくつかのwebの記事によると、CDの音質はあまりよくないもののようだが、私のテープについては特にそうは感じない。

kenny Burrell(g)

Grover Washington Jr(s)

Ron Caarter(b)

Jack De Johnette(ds)

Ralph Macdonald(per)

 良盤である。純正ジャズ盤だ。参加ミュージシャンも有名どころが並び、実際聴きごたえがある。ジャック・ディジョネットのドラムがカラフルすぎてやや小うるさい気もしないではないが、基本的にはいい演奏だと思う。ケニー・バレルのギターはいつもながらナイスな演奏だ。どちらかというと、ケニー・バレル主導の作品といっていいだろうが、フュージョン畑のグローヴァーの演奏がかなりいい効果を出していると思う。生真面目に純正ジャズ路線をいく骨太のケニー・バレルに対して、グローヴァーのソロも決して負けていない。しかし、特筆すべきはグローヴァーのサックスの音色だ。やさしく、繊細な音色だ。センチメンタルで、ノスタルジックな音がいい。ケニー・バレルのジャズの王道をゆくような演奏と、グローヴァーの美しく寂しげな音のコントラストがとてもいい”味”をだしていると思う。

 ずっと忘れていた作品なのに、今でも一音一音を覚えている。不思議だ。


”僕らの時代のBGM”、

2012年10月06日 | 今日の一枚(G-H)

☆今日の一枚 337☆

Grover Washington Jr.

Skylarkin'

7429099_4

 今日もカセットテープでグローヴァー・ワシントン・ジュニアを聴いている。カセットテープはTDKのAD。アルバムは1980年作品の『スカイラーキン』だ。 ちょっと、ちょっと、このアルバム、現在は廃盤扱いらしいが、私見では≪名盤≫といっていいのではないだろうか。本当にしばらくぶりに聴いてそう思った。演奏のデリケートさという点では、大ヒット作『ワインライト』や、その後の『カム・モーニン』に一歩譲る気もするが、心にまっすぐに届いてくるような、ストレイト・アヘッドな演奏という点ではそれらを凌駕するものではなかろうか。コンテンポラリーなサウンド、躍動するリズム感、うねるようなグルーヴ感が好ましい。グローヴァー・ワシントン・ジュニアのサックスも表情豊かに、しかも情感たっぷりに鳴っている。心はウキウキ、ドキドキ、身体はノリノリである。よほどよく聴いていたのであろう。頭にこびりついているメロディーばかりだ。

 このアルバムが発表された1980年という年には、大ヒット作『ワインライト』のリリースやエリック・ゲイルの『タッチ・オブ・シルク』への参加など、グローヴァー・ワシントン・ジュニアにとって飛躍の年だったといえそうだ。私は高校三年生。まだこういったお洒落な音楽は知らなかった。翌年、上京して大学生となったわけだが、田舎者が都会にでて、ちょつと背伸びをしたい心情に、ラジオから流れてくるグローヴァー・ワシントン・ジュニアのサウンドはピッタリだったのかも知れない。

 晩年は純正ジャズにも取り組んだグローヴァー・ワシントン・ジュニアは、1999年12月17日、心臓発作のため亡くなった。56歳、早すぎる死だ。私も、あと数年でその年齢になる。

 ”僕らの時代のBGM”、グローヴァー・ワシントン・ジュニア。